知佳の美貌録「子守が出来ることの嬉しさ」

労務者は手厚い保護のもとにおかれたが、余計な予算を計上しない(女性蔑視、扶養手当・家族手当など義務化無し)など子供たちにとって決して住み心地の良い環境とは言えなかった。
世間から隔絶された世界で追手を欺き住もうと思ったら、もうこういった場所しか無いと考えた末の飯場(はんば)生活であった。
現場責任者のような役目に据えられた学のある幸吉ならいざ知らず、女衒に育てられ労務者の端っくれに加わった好子である。
今掘られているトンネルがダムと農業・生活用水路をつなぐただの水路なのか、それとも高速道路や鉄道のトンネル坑道なのかもわからない。
それほど奥深い山の中で端っくれにとって意味もわからない工事が行われつつある大規模(精神をも圧倒され、訳が分からないほどの規模の)現場である。
今住んでいるところが何処で人々が行きかう街がどの方角にあるかさえも、さっぱり見当がつかないほどの山中の飯場(はんば)で幼稚園や保育園などというものが、この社会にあることさえ知らず久美たち兄弟と母の好子は隠れ過ごした。
ただ隠れなければならないことだけは親を見れば子供心にもわかったという。
テーマ : 女衒の家に生まれ・・・ 高原ホテル
ジャンル : アダルト
知佳の美貌録「生涯一度だけの幸せな日々」

高原ホテルの主人公 久美がまだ幼かった頃、女衒は随分没落し女衒の持ち家は本家と散髪屋 (髪結いではない) の二軒だけになっていたようだが、夜逃げの末ここを訪れた久美にはそれでも近所の一般の家庭に比べたら随分と広い屋敷に住んでいたような記憶がある。
女衒家が最盛期だったころ3軒の家を持っていたと書きましたが、上の説明での散髪屋はどう見ても、構造上からも商売に使うだけのため建てられた家であり、3軒のうちの1軒に入っていない筈なので、一般的な民家風の家2軒はこの時点では既に人手に渡っていたものと見てよいとおもいます。
つまり好子が生まれ育った家は久美の記憶にある大きな屋敷よりさらに大きく、好子の話しと統合するとまず当時住むことを許された地区(部落と忌み嫌われ棲み分けされた地区)と位置や雰囲気が多少異なるからです。
今風に言えば産後の肥立ちが良くなるまで実家に里帰りしたことになりますが、その実ちゃっかり居候を決め込んで帰ってきており、元気になっても元いた場所に帰ろうとしなかったのです。
テーマ : 女衒の家に生まれ・・・ 高原ホテル
ジャンル : アダルト