官能小説『蛇の毒』 第5章 キャンプの夜(1)

聞き終わった靖子が眉をしかめた。
「何か、凄く汚らしいって感じ。」
「うん。僕もそう思った。セックスって、もっとムードがあってきれいなものだっ
て想像してたんだけど、あのことがあってから、ちょっと女見る目が変わっちゃった
なあ。」
「馬鹿、一緒にしないでよ。私は栄治とこうしてるの楽しいし、きれいだと思って
るわよ。」
「僕も。そうそう、初めての時、弘子さんの顔見てると元気が出なかったじゃない。
その時目をつぶったらなぜか姉さんの顔が浮かんで来たんだ。」
「やだ、私のこと思い出したの。」
「うん、そうしたらすぐに気持ちよくなってきた。」
「怒っていいんだか喜んでいいんだか。ところで、栄治の経験って、それ一度きり
なの。」
「ううん。弘子さんとはそれっきりだったけど。」
「全部聞かせてよ。」
「え、ま、いっか。ここまで話したんだもんね。」
高校生になった栄治には暫くガールフレンドが出来なかった。弘子との初体験以来、
簡単に付き合うような気持ちになれなかったからである。変に勿体付ける女は好きに
なれない。かと言って、弘子のように、まるで雌豚のように貪欲に求められても閉口
してしまう。