「ありさ できごころ」 第5話 Shyrock作


「もちろんだよ。こんな時に冗談を言うとでも思っているの?」
「分かりました……」
ありさは一度深呼吸をすると、タンポンの中程を親指と中指で持って、先端を自分の方に向けた。
もう片方の手で割れ目を開き、先端を膣口にあてがった。
その様子を車野山が固唾を飲んで見守っている。
タンポンの先端が少し埋没するとありさは手を止めてしまった。
誰にも見られたくない秘密の場面を見知らぬ男に観察されながら実行していることに、思わず耐えられなくなったのだろう。
ありさは涙ぐみながら哀願した。
「お願いです……もう許してください……」
「ダメだ。そもそもこんな取り調べの原因を作ったのは君じゃないか。盗んだ商品を使用目的に応じて使いながら心を込めて謝ってくれないと」
「……」
「さあ、続けてもらおうか」
ありさはタンポンのアプリケーターを基準の位置まで押すと一旦指を止めた。
さらに息を整えながらもう片方の手でゆっくりと押し込むと吸収体が膣内に収まった。
タンポン挿入の証とも言える白い紐が膣口からちょっぴり顔を覗かせている光景は、男性の目線からはいささか奇異であり一風変わったエロティシズムを醸し出していた。
「ありさ できごころ」 第3話 Shyrock作


テーブルの上にはシャンプー、リンス、タンポンが無造作に並べられている。
後悔をしても今となってはもう後の祭りだ。
盗んだ物の金額が例えわずかであっても、万引きは歴とした窃盗罪だ。
車野山の指示に従い、ありさはやむなくバッグの中身を取り出しテーブルの上にゆっくりと並べた。
ピンク色の財布、定期入れ、エドエンバリーの手帳、化粧ポーチ、アナスイの手鏡、ブラシ、携帯電話、ipod、ハンカチ、ティッシュ、そして飲みかけのミネラルウォーター。
若い女性としてはごく一般的なバッグの中身だが、たとえ彼氏であっても見せることのない中身を人前で晒すことには抵抗があった。
しかし自分が蒔いた種だから自分で刈り取るより仕方がない。
車野山は並べられた物を窺っていたが、表情を変えることはなかった。
バッグ内に万引きの品物が無いことは確認できたであろう。
「うん、バッグの中は無さそうだな。でもバッグ以外にも隠せる場所があるじゃないか」
車野山はそう言いながらありさが着用しているチューブトップの胸元に視線を移した。
一瞬たじろいだありさだったが懸命に抗弁する。
「洋服の中になんかに隠してません。信じてください!お願いです!」
「ありさ できごころ」 第2話 Shyrock作


「ごめんなさい……私がやりました……」
ありさは打ちひしがれた表情で目を落としたままぽつりとつぶやいた。
「万引は今回が初めて?」
警備員はずばりと尋ねる。
ありさは俯いたまま小さくうなづいた。
「本当に初めてなの?いつもやってるんじゃないの?」
「いいえ、本当に初めてなんです……」
「で、何を盗んだの?」
「えっ……?あのぅ……シャンプーとリンスです……」
「ふ~ん……本当だね?」
「は、はい……それだけです……」
「じゃあシャンプーとリンスを出してください」
問い詰める警備員の眼光は獲物を狙う鷹のように鋭い。
彼の名前は『車野山大輔』といい33才で独身。
外見は痩せていて精悍な印象の男である。
仕事は真面目でギャンブルもしないが、人一倍好色家で周囲や状況を省みず猪突猛進で突っ走ってしまうところがあった。
前の職場でもそれを裏付ける逸話がある。
当時車野山は営業をしていたが得意先の会社に類まれな美貌の女性がいた。あいにく彼女は既婚者であったが車野山は気に留めることなく手練手管で彼女を口説き落とし深い仲となってしまった。
「ありさ できごころ」 第1話 Shyrock作


まもなく月に1度の憂鬱な訪問者がやって来るのだが、タンポンの予備を切らしていた。
やってくる前に準備しておかないと少し厄介なことになる。
いつも行くドラッグストアに寄ってみたがあいにく定休日だった。
近辺にドラッグストアはないが、少し足を伸ばすと中堅のスーパーがある。
一、二度行ったことがあるが、確か1階に食料品、2階に日用品があったように思う。
少し遠回りになるが比較的明るい国道沿いを行けば7、8分で着くはずだ。
まもなく目的のスーパーが見えて来た。
「あった、あった。あそこだわ」
2階へ上がるには奥にあるエスカレーターを利用すればよいのだが、ありさは入口近くの階段から上がることにした。
今日のありさは白のチューブトップにデニムのミニスカートという身なりであった。
すらりと伸びた脚に白いサンダルがよく似合っている。
スカートはかなり短めなので階段を登るとき後ろが気になった。
何気に視線を感じたので振り返ってみたが特に人影はなかった。
(気にするぐらいならミニスカートを穿くなって。あはははは)
ありさは2階の入口で買い物かごを手にし店内へと入っていった。