官能小説『筒抜け』 第3話

「こっちから誘わないと駄目かも。」
晴美がそう言いながら風呂に湯を入れ始めた。湯の栓を止めると隣からも水音が聞こえていた。美佳も風呂の準備をしているらしい。
「じゃ、お風呂に入りましょうか。」
弘信の耳元でそう囁いた晴美が服を脱ぎ始めた。
「え、入ってる振りするだけじゃ駄目ですか。」
驚いた弘信が目を丸くして晴美を見た。
「無理よ。私、そんな演技できないし。貴方は俊樹になりきって。」
確かにお湯の中での戯れを演出するには実際に入るしか無さそうだった。二人で湯船に浸かると晴美が戯れて来た。前を握られ当惑する弘信だったが、声を出したり抵抗すれば隣の美佳に気付かれてしまう。晴美が無言でウィンクした。ね、今みたいな状況だったのよ、と言ってるようだった。
湯船の外で晴美が弘信に尻を向けた。晴美の気持ちに確信が持てぬまま弘信が宛った。入れた瞬間、ダクトから美佳の声が響いてきた。パパ、と呼ばれて弘信の動きが止まった。
「凄い、パパ、凄い。」
確かに美佳のあられもない声だった。