知佳の美貌録「死にゆくものに鞭打つ父」

鉄道郵便が主だったこの時代、列車が走行中に手作業で地区別 (市内) ・区域別 (市郡及び都道府県) に仕分けられ市内は郵便配達員が配って歩いた。 現金書き止めであっても例外ではなかった。
今の時代からいえば信じられないことだが、飯場(はんば)で暮らしていたときもそうであったように久美たち姉・弟は義務教育という概念に縛られていなかった。 幸吉は大学への進学校を出たというのに親の責任感はまるでなかった。
政府・教育機関がやいのやいのというから従ったまでだった。 父親が村議ということもあって御上の声には弱かったのである。
せっかく女衒が呼び寄せてくれたというのに学校関係者からの呼び出しで大阪に、もといた学校に帰らなければならくなった。
教育委員会の言いつけでは残すところわずかではあっても学業を中途で投げ出すわけにはいかなかったからである。
当然女衒やご隠居さんは案じた。
たとえ我が孫の好子を釈放に導くことができたとしても、法律上元のような仕事 (パンパン) につかすわけにはいかない。

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知佳の美貌録「逃避行再び 収監された母」

有無を言わさず身ぐるみ剥ぎ取り、体内に何か隠し持っていないかまでも数人の取調官を前にし徹底的に調べ上げられる。 心身ともに外の世界と縁切らせるためだがその後諦め素直になった捕縛犯の合意を得て指紋を採取されモンタージュ写真が撮影されるなどし犯罪人登録書類が作られる。
本当の理由はいまだにわからないがある日の深夜 あれほど平穏に過ごせると思えた淡路を再び抜け、今度こそ大阪の八尾よりもっと粗悪な場所に一家は逃夜行した。
それから数日、外出を避けることはあっても親が気づかぬ間に姿を消すなどということはなく、久美にとって何事もないある種平穏な日々が過ぎていった。
何故か表に出たがらない母に言い出しにくく、淡路に移り住んだ時のように新しい学校への転入手続きを久美は今度も自分で行った。
相変わらず他校の制服らしきチグハグな服を身に着けて登校し、目の前に現れた学校の職員らしき男性に声をかけ職員室の場所を聞きだし、勝手に職員室に乗り込んで手続きを済ませた。
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知佳の美貌録「夜逃げ そして転校」

だから学校の環境もまるっきり違った。 転校先の学校がもし、今まで教わってきた授業より遅れていたらボーッとして過ごせるが、進んでいたりしたらそこいらはまだ教わっていませんなどと口にしようもない。 隠れ忍んで引っ越して来たからには誰に聞きようもない。
疎外感を肌で感じながらもそうと悟られぬよう独学で教科書を読み学ぶしかなかった。 それはそれで辛かった。 久美は学業の傍ら弟のために家事をこなさなければならなかったからだ。 が、それにも増し そもこの時代はまだ広く社会などというものは習っていないし親も教えはしないから転校生であるがゆえによそ者として扱われ学校に行くとよそ者が紛れ込んだとしていじめられた。 いじめが治まるまで、諦めてくれるまでジッと耐えなければならなかった。
ただでさえ食うや食わずの生活を強いられ、やっと将来の見通しが見え始めた矢先に得体のしれない宿なし風の輩がいずこからともなく小集団に紛れ込んで徘徊しまくる。
表向き笑みをたたえながらその裏で某国で繰り返されてきた密告の類に似た排他的思想を親がさも憎らし気に語る。
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