掘割の畔に棲む女 ~コーヒーカップを前にし戸惑う千里~
店側はと言えば脇に立ち微笑ましそうに見守ってはくれているものの、一向に進めてくれる気配がないんです。
「わかりました。 確かに僕が悪うございました」 こんなところでこんなことを言い張ってる自分が自分に癪に障ったので頭を下げ、しかし美月ちゃんやお店との約束もあるものですから頼んでおいたものだけを出して頂くことにしたんです。
「うわあ~来た来た、お団子だ~ お母さんも食べよ」 美月ちゃん、目を輝かせ最初のひと串しに手を差し伸べました。 「これ美月、ちゃんとお礼を言いなさい」 チラリとコーヒーセットを目にし、その目を瞬時に脇に反らしてしまわれるに至ってお手上げ状態になってしまったんですが、
「お連れ様、器はこれと違いましたでしょうか? お気に召さないようでしたら別の物にお淹れしましょうか?」 この時になってコーヒーを運んできてくれた店員が千里さんにコーヒーを薦めてくれたんです。
掘割の畔に棲む女 ~二階の喫茶ルームにて~
堀端を歩く人々は道の脇に立ち並ぶお土産屋さんに入り物珍しそうに見て回っては店員とやり取りしていましたが、宮内司がここを訪れた真の目的は竹細工職人の技をこの目で見ることであり、良い品を買い求めんとすることであって民芸品には興味ないので素通りしました。 今はただこの堀川で出逢った千里さんという女性とその娘さんに少しでも近づけたならと、観光はひとまず置いといてその機会を探ることにしたんです。
掘割沿いに白壁の蔵が立ち並んで賑わっていたのはほんのわずかな距離で一区画過ぎるとまるで景観が変わってしまうんです。 こうなると並んで話しながら歩こうにも話題が見つかりません。 流石に並んで歩くのももう此処までかと諦めかけふと見ると千里さんが立ち止まってウインドウの中を覗き込みつつこちらが誘いかけてくれるのを待つべく間を持たせてくれているように思えたんです。
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