官能小説『危ない画像』 第2話

雅彦がからかい半分に言った。リビングから出掛かっていた麻美が振り返って赤ん
べえをした。
「だーめ。そんなことしたら襲っちゃうぞ。」
「あ、言えてる。」
「こら。」
麻美が吹き出した。つられて雅彦も笑い出す。
「ったく、飛んでもない息子だわ。」
「どっちが。」
「兎に角、温泉のガイドブック探して来るわね。お茶飲みながら待ってて。」
雅彦は友人や知り合いから、お前の母親は美人だと言われる。当の雅彦本人は毎日
見慣れた顔なので特別感じたことはなかった。ただ、自分の母親が普通だと言う感覚
はしっかり身に付いているようで、彼女にしたいと思う相手は学校でも飛び切りの可
愛い子ばかりだった。そのせいか、まだ恋人と言える段階まで付き合いが進展した相
手は一人もいなかった。
「ねえ、こんなのがあったわ。」
麻美が持って来たのは露天風呂ばかりを集めたガイドブックだった。
「ふうん、パパにもそんな趣味があったんだ。でも、一度も連れてってくれなかっ
たね。」
「そう言えばそうね。彼女でもこっそり連れて行ったのかな。」
雅彦が一瞬ヒヤリとした。あのメールの圭子となら有り得る話しである。