掘割の畔に棲む女 ~心の闇を溶かしてくれた驟雨~
藤乃湯旅館の離れではそれでも司が何かと食べ物にしても千里さんや美月ちゃんの躰を想って工夫を凝らし買い求め目の前に並べてくれてましたので義務と思って食べればよかったんです。 ところが廃屋に来てからというもの賄いは全て千里さんが考えて出さねばなりません。
男たちが適当に持ち寄ったものの中から彼らが飽きないよう出す日にちや工夫を凝らし目の前に並べなければなりません。 期限切れや廃品に近いものを持ち込んでこられても、そううまくお膳立てができるはずもなく、従って少ないお給金の中からなにがしかの買い物をして添えなきゃならないんです。
たとえこのように気を使って添えたとしても出されたものは遠慮なく胃の腑に納めるというのが男の本来の姿ですので肝心の千里さんが体力を保つため食べようとしても何も残っていないんです。
結局彼らの欲望のはけ口として藤乃湯旅館の離れを新たに作らされ雇女のごとくこき使われるため引っ越したようなものだったのです。
掘割の畔に棲む女 ~生きる知恵 阿り (おもねり) ~
だからと言って生き延びる為誰かれ無しに過去の秘密を暴露しまくることなどできません。 それこそ余計に重荷を背負わせることになるからです。
ともあれ今は恐らく次回公判が結審になるでしょうから無事出廷できるよう頑張りぬくしかなかったんです。 房内で知りえた情報によると初犯で、しかも過去の判例は全てと言っていいほど執行猶予がついていましたから逃げないで出廷さえすればそれで十分なんです。
仮釈には何処かの誰かが裁判費用を納めてくれてますので野宿しながらでも働いて返さなければならないんです。 そのためにも過去は過去としてこれから先頑張るしかないんだと覚悟を決め翌日から働き口を探しました。
弁護士にだけは居場所を知らせ、手間賃仕事を求め しかしながらできうる限り身分を隠し生きる為方々流れていきました。

tag : 働き口手間賃仕事清掃外回りの掃除給料が安い履歴書が無くても雇ってもらえた零細月の半分も出勤させてもらえなくなり
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