官能小説『危ない画像』 第12話

和美が眉根に皺を寄せた。
「こんなの、初めて。」
夜が明けた頃、いつの間にか眠ってしまった和美の唇に邦宏がそっと口付けした。
和美がそっと目を開いた。
「これからも、ずっと可愛がってくれる。」
「勿論だ。そうでなければ抱いたりしないさ。」
「嬉しい。私、別れてよかった。」
次の晩、会社から戻った邦宏が二人だけの新婚旅行に行こうと和美を誘った。一週
間の長期休暇を取ったのである。その旅行で選んだのがこの温泉だった。
「私はもう五十近いし、こいつも四十過ぎてます。お互い張り合いのない余生を送
る位なら、一緒に地獄に堕ちて、目一杯最後の人生を楽しもうじゃないか、ってこと
なんですよ。」
和宏がもう一度和美を抱き寄せた。
「しかし、とんでも無いところを見られてしまいました。」
「大丈夫です。心配しないで下さい。」
進がそう言って久仁子を自分の方に引き寄せた。麻美も負けじと雅彦の手を引き寄
せる。
「お互いに似たもの同士の二人組と言う訳けですね。」
和宏が安心したように笑った。
「そろそろ寝ようか。」
風呂から上がったところで進が自分たちの部屋に戻ろうとした。
「そうね、私も。」
久仁子が後から付いて行く。
官能小説『危ない画像』 第11話

まり返っている。脱衣所には脱ぎ捨てられた浴衣があった。
大浴場から最初に出た久仁子が振り返ってウィンクした。
「またエッチしてるわ、あの二人。」
久仁子の言葉通り、浴槽の縁に座った男の上から女が跨っていた。四人に気付いた
男が慌てて女を離そうとしたが嫌々をして離れない。四人がそばまで来ても女は腰を
振り続けていた。
「どうぞ、ご遠慮なく。」
麻美が声を掛けてから湯に入った。男は困ったような顔をしたが、女はしがみつい
たまま離れなかった。
四人が湯に入ったところでようやく女がハッと振り向いた。
「やだ、ごめんなさい。」
今更離れても遅いと思ったのか、女は男の胸に顔を埋めてしまった。
「失礼ですが、不倫ですか。」
進が笑いながら話し掛けた。
「いえ、そう言う訳じゃないんです。」
男が照れながら答えた。
「ちょっと人には言えない関係なんです。」
ピンと来た麻美が微笑んだ。
「もしかして、ご兄妹。」
二人の顔付きがよく似ていたからである。男が麻美をきつい目で睨んだ。
「大丈夫。心配なさらないで。私達だって親子同士でこうしてるんですから。」