長編官能小説 『クロス・ラヴ』 第36話 Shyrock作
二種類の座位
盛り上がってきたところで声を掛けられた俊介はいささか水を差された面持ちだった。
俊介「はぁはぁはぁ・・・な、なに?今いいところなのに」
球は悪戯っぽく微笑みながら尋ねた。
球「そんなに気持ちいいの?」
俊介「はぁはぁはぁ・・・もちろんいいけど・・・どうして?」
球「じゃあ、ありさと比べてどっちがいいの?」
俊介「そんなこと・・・」
球「ねえ、どっちなの?」
俊介「どうしてそんな意地悪な質問をするの?ふたりともいいよ」
球「うふ、『ありさ』だっていわないのね?」
俊介「もちろんありさはすごくいいよ。でも球だって負けないぐらいいいってこと」
球「にゃっ、そうなの?嬉しいな~」
俊介「おしゃべりしてないで、せっかくの機会なんだからもっと楽しもうよ」
球「あ、そうね。ごめんね」
『座位』は向かい合せで行為に至るため、お互いが真正面で顔を合わせることになる。
そのため会話も容易にできるのだが、行為中のおしゃべりは必要最小限にとどめるのがマナーというものだ。
第一おしゃべりが過ぎると気が削がれてしまうこともある。
甘い言葉を交し合うのは性感アップに繋がるが、相応しくない会話だと男は萎え、女は乾いてしまう場合があるので、余計なおしゃべりは控えるべきであろう。
第26話“京都南インターから” Shyrock作

惠が一人身なら、何のためらいもなく誘っていたでしょう。
しかし、惠は人妻、夫のある身です。
彼女を愛せば、きっと彼女を苦しめることになるでしょう。
私も当時すでに35歳とそれなりの分別を持ち合わせる年齢になっていました。
お互いに恋愛ではなく遊びと割り切って付き合う、それならばできたかも知れません。
でも惠とはそんなことはしたくない、いや、できないと思いました。
その後も、ふたりの会話は弾むことなく途切れたままでした。
惠は時折、私の方へちらちらと視線を送ってきました。
私は何だか息苦しくなって、テーブルの水を飲みました。
今どんな言葉が相応しいのだろうか…私は言葉を探しました。
でも適切な言葉は見つかりませんでした。
沈黙を破ったのは惠の方でした。
「裕太はん、ほな、ぼちぼち京都へ帰りまひょか」
「あ…はい……」
その言葉はごく当たり前の言葉なのですが、どこか寂しい響きのある一言でした。
「ここのお茶ぐらいは僕におごらせて」
「そんな気ぃ遣わんでも、よろしおすぅ」
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