冬子への虐待に次ぐ虐待
短期間とはいえ都会の水で洗われこれまでとまるで違う人間に生まれ変わった。 都会では三歩隔たれば他人と決まっている。 目の前の人間が何をやろうが我関せず。 冬子はまずそれを覚えた。
覚えるまでは淋しく悲しく、なんでこんな都会に追いやられねばならなかったのかと両親を恨んだ。 だが慣れるに従って都会こそ隠れ忍ぶのに最適な世界と知ることになる。
田舎では何をやらかしてもみっともないだの世間体がだのと言われひたすら我慢させられた。 あそこが痛いだの苦しいだのと口にしても周囲も似たり寄ったりの生活を強いられてるものだからまず不平不満などということを口にしない。
都会でもその点では大差なかったがウソに関しては田舎では大層騒がれるのに比べ都会では親身になって心配してくれないもののそれが嘘であっても口幅ったく非難などしない。 冬子はだから見栄えの良い嘘をつくようになっていったし弱いものを見つけては上手にいびるようになっていった。