病的性欲亢進 ~良かれと思って招いた~

話術のうまさと言おうか… 和江のとりとめのないおしゃべに付き合い驚くほど心豊かな返事を返してくれる。 その言葉を素直に受け止め尾崎を自宅に良かれと思って招いた和江。 だが尾崎にとってそれは逆効果だった。
自分では考えてもみなかっただろうが連れ立って来た尾崎の会社の同僚が目を丸くするほど田村邸は当初尾崎が想定していたものと比べ立派で、もうそれだけで彼女は打ちひしがれ言葉を失ってしまった。
ともすれば鬱になりそうな自分を奮い立たせ和江の気持ちを明るい方へ持って行くために話術を駆使し和江を惹き付けたのだろうが尾崎と違って和江は本当の意味において有閑だったのだ。
母親に揖保乃糸を出したら怒られたと和江に語ると和江は自分ん家の冷蔵庫には卵とパンしか入っていないと述べた。 尾崎はそれをこうやって浪費するから物を買うお金が無いんだと告られたような気がしたのだ。
しかし実は自分で食事を作るのが面倒で総菜を買って食べるか、或いは外食してるから冷蔵庫に物が無かったと知ったのだ。 確かに幼いころは貧民窟に棲んでいた。 が、今や豪邸に住んでいたのだ。
淋しさを一時でも忘れるための求めあい
その史帆さんとて今はもう親は亡く、伴侶であったご主人も亡くし天涯孤独の身、年齢こそ違えど淋しいには違いなかったのです。
しかも史帆さん、ひとりっ子に生まれさぞかしちやほやされたと思いきや親は本家という名に負け世間体を重んずるばかりで子育てには関心を寄せなかったのです。
生まれて初めて地元の人に本気で打擲され妙な気持が湧いてきたのは確かでした。 親が本気になって叱ってくれたとか褒めて教えてくれたことなかったからです。
末は良い婿を取って家を守ってくれたらそれでいい、農家の仕事なんか覚えなくていいと言われてきたからです。 生まれてこの方山間の孤立した集落に住み暮らしいながら自分のことを門外漢って感じてたからです。
こういった心境の変化はたとえプロとはいえ街でしか暮らしたことのないケアマネや介護士では推し量れないところがありました。