官能小説『筒抜け』 第5話 (最終話)

美佳がすねてみせた。
「ごめんなさい、私が誘ったの。弘信さんのこと嫌いじゃなかったから。」
晴美が俊樹の方を見た。俊樹も面白くなさそうな顔をしている。
「今すぐどうこうって話じゃないけど、俊樹とはいずれけじめを付ける日が来るでしょ。」
「無理に付ける必要あるの。」
美佳が口を挟んだ。
「いずれの話だけどね。」
「嘘。晴美さんとパパ、違うシナリオを考えてたんじゃないの。」
「え、どう言うこと。」
「俊樹くんが久しぶりなんて言わなければ、パパが私のところに来る手筈だったんじゃないかしら。でも、昨日まで俊樹くんが留守だったことがバレちゃった。だからパパが慌てて帰って来たんでしょ。それに、パパが帰ってきた時、私素っ裸だったけど、パパ、不思議そうな顔一つしなかったじゃない。」
「白旗上げましょ。」
晴美がそう言って両手を上げた。
「降参だわ。美佳ちゃんがパパと思い通りになれば万事上手く行くと思ってたのよ。」
「それって、もしかして、私と俊樹くんをくっつけようって魂胆。」
「弘信さん、何か言ってよ。私じゃ美佳ちゃんには太刀打ちできないわ。」
官能小説『筒抜け』 第1話

突然頭の上から若い男の声が聞こえてきた。それは蚊の鳴くような微かな響きだったが、静かに湯船に浸かっていた弘信は十分聞き取ることが出来た。慌てて見上げると、その声は換気ダクトからのようだった。
「駄目、出ちゃう。」
もう一度、弘信が耳を澄ませていたので、今度は更にハッキリと聞こえて来た。切羽詰まった声だった。
弘信がこのアパートの造りを頭の中に思い描いた。メゾネットタイプの二階建て3DKが左右二世帯振り分けに幾つか繋がった構造である。見てくれはそれなりだが、地主が相続税対策に急遽建てたものだから実態はプレハブアパートと大差無い。恐らく風呂場の換気ダクトが隣とつながっており、そのダクトを伝って秘めやかな会話が漏れて来たことに間違い無さそうだった。
隣には三十代半ば位の女が中 学 生の息子と一緒に住んでいる。表札には田中とだけ書かれていた。入り口が道路に面しているので女所帯と知られたくないからだろう。玄関先でこの女と顔を合わせれば会釈くらいはするが、言葉を交わしたことは一度も無かった。この近所では一番と言える位の美人で、毎日夕方になると出掛けて行く。帰りは深夜だった。多分水商売だろう。
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