官能小説『筒抜け』 第5話 (最終話)

美佳がすねてみせた。
「ごめんなさい、私が誘ったの。弘信さんのこと嫌いじゃなかったから。」
晴美が俊樹の方を見た。俊樹も面白くなさそうな顔をしている。
「今すぐどうこうって話じゃないけど、俊樹とはいずれけじめを付ける日が来るでしょ。」
「無理に付ける必要あるの。」
美佳が口を挟んだ。
「いずれの話だけどね。」
「嘘。晴美さんとパパ、違うシナリオを考えてたんじゃないの。」
「え、どう言うこと。」
「俊樹くんが久しぶりなんて言わなければ、パパが私のところに来る手筈だったんじゃないかしら。でも、昨日まで俊樹くんが留守だったことがバレちゃった。だからパパが慌てて帰って来たんでしょ。それに、パパが帰ってきた時、私素っ裸だったけど、パパ、不思議そうな顔一つしなかったじゃない。」
「白旗上げましょ。」
晴美がそう言って両手を上げた。
「降参だわ。美佳ちゃんがパパと思い通りになれば万事上手く行くと思ってたのよ。」
「それって、もしかして、私と俊樹くんをくっつけようって魂胆。」
「弘信さん、何か言ってよ。私じゃ美佳ちゃんには太刀打ちできないわ。」
官能小説『危ない画像』 第15話

「後ろめたい。こんなことしちゃいけないって思ってる。」
「それが、全然。僕がママのこと好きになってたのは分かってるでしょ。」
「私の写真見たからね。若い頃の。」
久仁子がニヤニヤしながら雅彦の脇腹を突っついた。
「ねえ、先に話しといた方がいいんじゃない。」
「え、何を。」
麻美がいぶかしそうに久仁子の目を見た。
「実はさあ、マーちゃん、圭子さんと会ってるんだって。」
「何で。そう言えば、どうして雅彦が圭子さんのこと知ってるの。」
「本人から説明した方がいいわね。」
久仁子がニヤニヤしながら雅彦の背中を叩いた。
「ねえ、もしかして、雅彦と圭子さん、何かあったんじゃないの。」
「鋭い。」
久仁子が大声で笑った。
「女の勘って馬鹿に出来ないわね。」
「ちょっと、本当にしちゃったの。」
麻美がきつい目で雅彦を睨んだ。雅彦が素直に頷いた。
「何てこと。雅彦があの人とだなんて。」
麻美が進の肩を揺すった。
「あなたも何か言って頂戴。」
進が苦笑いした。
「まあ、圭子は形の上じゃまだ俺の女房だけど、もう何年も会ってないからな。」
「でも、雅彦が圭子さんと、なのよ。」
麻美は夫の不倫相手と自分の息子が逢い、セックスまでしてしまったことが我慢出
来ないようだった。