掘割の畔に棲む女 ~夜泣き~
貧困と差別の元心密かに泣き暮らす真の被害者は司が当初不憫に思って庇った母親の千里さんではなく元気溌溂としていた娘の美月ちゃんの方が深刻だったのです。
まずひとつに司が口を挟まなかったら美月ちゃんは生涯に渡って生きていくことで精一杯の最低限の生活しか送れなかったからです。 栄養価の低いものを、それもお腹がすいているのに腹いっぱい食べれないものだから下腹だけがポコンと飛び出たような格好になる粗末なものをそれと知らず与えられ続けていたんです。 消化吸収が悪いから四六時中膨満感に悩まされトイレが近くて寝るに寝られないんです。
しかし美月ちゃんにとって最も耐えがたかったのはこういった状態の中心細くてどうしようもない夜に母親が何処ともなしに家を空けることでした。 その理由が大方見当ついてるだけに体調が悪くても多少熱が出ても黙って寝たふりするしかなかったのです。
しかもそんな体と心理状態で、ともすれば崩れ落ちそうになる母親を必死で励まし続けなければならなかったのです。 一方で親と同等かそれ以上の考え方をせねばならず、しかしもう一方で幼い子供が持ち合わせているであろう様々な欲望を、もう抑えきれないようになっていたんです。
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