知佳の美貌録「墓参りの楽しみ」

ひとつだけというからには日頃食べたくて仕方がなかったお菓子を急いで選び店を出てくるかと思いきやそうではない。
買ってもらえることがうれしかったと解釈しそうだがこれまたそうでもなかった。 数多くのお菓子の中から好きなものをじっくり時間をかけてひとつだけ選べるというのが、途轍もなくうれしかったらしい。
防空壕のできそこないみたいな穴倉は立って歩くこともできないほど低かったし、奥行きも入り口から一番奥が見渡せるほど短かった。
そんな穴倉に周辺からかき集めた草などを布団がわりに敷きつめ寝泊まりした。
中で火を焚いたりすればむせて息もできなくなるほど狭く、もちろん抜け穴もないから煙突の役目も穴自体が果たしてくれない。
誰も通らなくなった深夜などを利用して外で煮炊きせざるを得なかった。
風呂はおろか水道もトイレも、もちろんない。
必要になると雨だろうがどこかに出かけ用を済ますしかなかった。 周囲から見れば野良犬かと思えただだろうが、ここにこそ幸吉は来ない。

テーマ : 女衒の家に生まれ・・・ 高原ホテル
ジャンル : アダルト
知佳の美貌録「覚えてますか?あの日のことを。」

産むだけ産んでおいて育てもらえなかった子供たちはただ生きる為このようなことをやった。 にもかかわらず世の中は大人のエゴで動いた。 ゴミ漁りもそうで、何かを見つけると大人が先にとってしまう。 弱いものの上前を力に証し撥ねる。 暴力は常に付きまとった。
幼くして夜逃げや路上生活を強いられた末に飯場(はんば)で暮らすことになった久美は弟の面倒を看るため、大人のやることは何でも懸命になって覚えた。
少しでも多く大人の役に立ちご褒美のお菓子をもらうとそれを自分はほとんど食べず弟に分け与えた。
その弟と今度は貧困屈でたったふたりっきりで暮らすことを強要される。
久美は保育園・幼稚園こそ通えなかったものの、園で教えているようなことはお菓子を手にいれたく、大人のやることを見様見真似し働いて何かを得てきたものだから必要上ある程度のことはできるようになっていた。 生きる為の基礎ができていた。
未開の地から都会の小 学 校に通うことになった。 無学の地から学校のある地に無理やり引っ越しさせられた久美だが、教えたことを覚えるのが保育園・幼稚園こ通っていたはずのどの子より聡かった。
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