知佳の美貌録「夜逃げ そして転校」

だから学校の環境もまるっきり違った。 転校先の学校がもし、今まで教わってきた授業より遅れていたらボーッとして過ごせるが、進んでいたりしたらそこいらはまだ教わっていませんなどと口にしようもない。 隠れ忍んで引っ越して来たからには誰に聞きようもない。
疎外感を肌で感じながらもそうと悟られぬよう独学で教科書を読み学ぶしかなかった。 それはそれで辛かった。 久美は学業の傍ら弟のために家事をこなさなければならなかったからだ。 が、それにも増し そもこの時代はまだ広く社会などというものは習っていないし親も教えはしないから転校生であるがゆえによそ者として扱われ学校に行くとよそ者が紛れ込んだとしていじめられた。 いじめが治まるまで、諦めてくれるまでジッと耐えなければならなかった。
ただでさえ食うや食わずの生活を強いられ、やっと将来の見通しが見え始めた矢先に得体のしれない宿なし風の輩がいずこからともなく小集団に紛れ込んで徘徊しまくる。
表向き笑みをたたえながらその裏で某国で繰り返されてきた密告の類に似た排他的思想を親がさも憎らし気に語る。
テーマ : 女衒の家に生まれ・・・ 高原ホテル
ジャンル : アダルト