官能小説『危ない画像』 第8話

久仁子が父親に聞いた。
「行っておいで。」
雅彦は父親が呆気なく許したので面食らった。若い男と女が二人だけで入浴するの
である。しかも、泊まり客は他に一組の中年夫婦だけ。二人っきりの可能性が大きい
のに父親は全然気にしていないようだった。
「行ってらっしゃい。私たちはもう少しお話してるから。」
麻美もそう言って雅彦にタオルを投げてよこした。麻美たちも部屋で二人っきりに
なる。二人ともそれを望んでいるように見えた。
「行こう。」
久仁子が雅彦の手を引いた。部屋に残して行く二人のことも気になったが、久仁子
と二人きりで風呂に入れるこのチャンスを逃す気は全然無かった。
雅彦と久仁子が裸になって露天風呂に行くと先程の中年夫婦が入っていた。湯の中
で女が男に跨っていたが、二人が来るのを見て慌てて離れた。雅彦は男のものがしっ
かり上を向いてるのを見逃さなかった。軽く挨拶を交わして雅彦と麻美が湯に入ると
二人がそそくさと出て行った。
「ねえ、あの二人、エッチしてたみたい。」
久仁子が笑った。
「そうみたい。」
雅彦が照れながら答えた。
「雅彦くんはエッチしたことある。」
久仁子が聞いた。
「ううん、まだ。」
官能小説『危ない画像』 第2話

雅彦がからかい半分に言った。リビングから出掛かっていた麻美が振り返って赤ん
べえをした。
「だーめ。そんなことしたら襲っちゃうぞ。」
「あ、言えてる。」
「こら。」
麻美が吹き出した。つられて雅彦も笑い出す。
「ったく、飛んでもない息子だわ。」
「どっちが。」
「兎に角、温泉のガイドブック探して来るわね。お茶飲みながら待ってて。」
雅彦は友人や知り合いから、お前の母親は美人だと言われる。当の雅彦本人は毎日
見慣れた顔なので特別感じたことはなかった。ただ、自分の母親が普通だと言う感覚
はしっかり身に付いているようで、彼女にしたいと思う相手は学校でも飛び切りの可
愛い子ばかりだった。そのせいか、まだ恋人と言える段階まで付き合いが進展した相
手は一人もいなかった。
「ねえ、こんなのがあったわ。」
麻美が持って来たのは露天風呂ばかりを集めたガイドブックだった。
「ふうん、パパにもそんな趣味があったんだ。でも、一度も連れてってくれなかっ
たね。」
「そう言えばそうね。彼女でもこっそり連れて行ったのかな。」
雅彦が一瞬ヒヤリとした。あのメールの圭子となら有り得る話しである。