掘割の畔に棲む女 ~何処からか流れて来た通いの女中~
この堀川は流れは清らかなんですが、如何にも水嵩が少なく母の千里さんが言うように鯉が泳いでいたとしても浅いところでは背鰭が出てしまう為酸素不足になるせいか、或いは天敵に狙われやすいせいかほとんどの鯉が川沿いの道と対岸の家屋とをつなぐ広いところで幅一間ほどしかない橋の下に人の目から逃れるよう棲み暮らしているんです。
母の千里さんは美月ちゃんが滅多に人の目に触れないその鯉が餌を求めて橋の下から出て来たのを見つけ騒ぎ立てているとでも思い込んだのか近寄って行ったものの別の何かを見て驚いたように見えたのです。
たまたま竹細工の水差しを求めて津和野からはるばるこの地を訪れていた旅好きの風来坊宮内司はこの川が何処か津和野に似ていることから鯉でも放したら子供らも喜ぶのにと浮かれて考えていた矢先の母子の会話に、一瞬にして現実に引き戻されてしまっていました。
掘割の畔に棲む女 ~二階の喫茶ルームにて~
堀端を歩く人々は道の脇に立ち並ぶお土産屋さんに入り物珍しそうに見て回っては店員とやり取りしていましたが、宮内司がここを訪れた真の目的は竹細工職人の技をこの目で見ることであり、良い品を買い求めんとすることであって民芸品には興味ないので素通りしました。 今はただこの堀川で出逢った千里さんという女性とその娘さんに少しでも近づけたならと、観光はひとまず置いといてその機会を探ることにしたんです。
掘割沿いに白壁の蔵が立ち並んで賑わっていたのはほんのわずかな距離で一区画過ぎるとまるで景観が変わってしまうんです。 こうなると並んで話しながら歩こうにも話題が見つかりません。 流石に並んで歩くのももう此処までかと諦めかけふと見ると千里さんが立ち止まってウインドウの中を覗き込みつつこちらが誘いかけてくれるのを待つべく間を持たせてくれているように思えたんです。
掘割の畔に棲む女 ~コーヒーカップを前にし戸惑う千里~
店側はと言えば脇に立ち微笑ましそうに見守ってはくれているものの、一向に進めてくれる気配がないんです。
「わかりました。 確かに僕が悪うございました」 こんなところでこんなことを言い張ってる自分が自分に癪に障ったので頭を下げ、しかし美月ちゃんやお店との約束もあるものですから頼んでおいたものだけを出して頂くことにしたんです。
「うわあ~来た来た、お団子だ~ お母さんも食べよ」 美月ちゃん、目を輝かせ最初のひと串しに手を差し伸べました。 「これ美月、ちゃんとお礼を言いなさい」 チラリとコーヒーセットを目にし、その目を瞬時に脇に反らしてしまわれるに至ってお手上げ状態になってしまったんですが、
「お連れ様、器はこれと違いましたでしょうか? お気に召さないようでしたら別の物にお淹れしましょうか?」 この時になってコーヒーを運んできてくれた店員が千里さんにコーヒーを薦めてくれたんです。
掘割の畔に棲む女 ~女中という名の雇女~
しかし別れ際になって思い返すように連絡先を問うて来たので電話番号をメモ書きにして渡し、千里さんからの連絡が入るのを待つことにしました。
別れた場所が喫茶のすぐそばでしたので、ご迷惑をかけたついでに何処か泊まるところはないか聞いてみようとこっそり店内に引き返し声を掛けました。 すると 「そうですねえ~、お客様のような方なら」 近くの旅館ではなくホテルがいいんじゃないでしょうかと、こう言われたんです。 「それはどの辺りでしょう」 と聞き返すと 「お客様がもし列車でお越しになられたんなら、その駅前通りにあります」 と親切に街の観光用地図を添え教えてくれました。
「タクシーをお使いになれば基本料金にほんの少し足すだけです」 とも 「そこの朝食はバイキング方式になっています」 とも教えてくれたんです。 不可解なのは、つい今しがた女性との仲を取り持ってくれたはずなのに、もう彼女と距離を置けとでも言わんばかりに堀川から追いやられたんです。

掘割の畔に棲む女 ~夜伽の代償~
わけても藤乃湯は秘かに添い寝する女がいると語り継がれていて、今でも千里さんのような女を目当てに遠方からわざわざ出向いてくる客もいたりするんです。 藤乃湯旅館のやり方は流行っていた頃から姑息でした。 本来なら旅館業を営むには調理師免許を持つ板前が居ないことには営業できないんですが、それらをすべて出前と言いましょうか業者が出来合いを持ち込んできたものを皿に盛りつけ客に供し、その分人件費を減らしていたのです。
しかも〇〇と思える客には特別室にご案内と称し料金をふんだくって一般客に比べ一層奥の間をあてがい、そこに雇女を差し向け酒席のとりもちや時には夜伽までさせ有り金を巻き上げていたのです。
掘割の畔に棲む女 ~通い妻~
千里さんとの仲を取り持ってくれた人すべてが口をそろえ、身なりさえ整えればあの女将は女を買うために来た客だと勘違いするはずと教えてくれたからでした。
泊まってみて分かったのは母娘の扱いの粗末さでした。 敷地内の片隅に物置小屋のような建物が建っていたんですが、千里さん母娘はそこに押し込められ棲み暮らしていたんです。
ここに住まわせた理由のひとつにはその忌まわし気な役目があるからでしょう。 他の客人が寝静まった深夜、男の元に忍び足で夜伽に伺うには便利なことこの上ないのかもしれません。 しかし夏もあれば冬もあり、晴れる日もあれば雨の日や雪の日だってあるんです。 飛び石を伝って忍んでいくことのいかに大変なことか。
司があそこで出逢わなかったら生涯、千里さんはこの境遇を誰にも知られることなく、やがて年老いて朽ち果てていたでしょう。
tag : 物置小屋押し込め忌まわし気な役目飛び石を伝って忍んでいく観光街の人々雇女を買う盛りきりの食事薪で風呂と焚いてる布団は枕元に丸めて置いとく今宵の漢
掘割の畔に棲む女 ~足手まといな雑用係~
投宿するやいなや不平不満を言い立てたシーツの洗濯・交換から風呂、それに飯場を思わせる食堂と食事等々、それらすべてを千里さん独りで用意から片付けまでこなしていることに気づいたんです。 自分は確かに男でしかも旅館にとっては客です。 その男児がなんだか気力・体力が削げ落ちるような気がするほど粗末な食事を供されていた、ということは千里さん母娘の食事は如何ばかりかと思わずにいられなかったんです。 恋する女を想うあまりとうとう千里さんの足手まといになるとも知らず、しかも女将に許しをも得ず勝手に旅館の中をごそごそいじり始めてしまっていたんです。
司が最初に手掛けたのが造園の方でした。 荒れ果てた庭の小草を引き抜き、散歩中に親しくなった方々から譲り受けたヤブランを植えたり池の畔にアヤメを持ってきたりと、それが泊り客のすることかという風なことから始めたんです。
tag : 一日二食懐石風見た目だけの食材下働き飯場を思わせる食堂独りで用意から片付けまでこなし足手まとい造園風呂焚き美月ちゃんの遊び相手
掘割の畔に棲む女 ~栄養失調との闘い~
司もまた労務と栄養不足で躰が悲鳴を上げていました。 口内炎に悩まされ酷い下痢が続いていたんですが、千里さんの唇の荒れようからして母娘とも同じ症状に悩まされてると思われたのです。
体調が思わしくないなどの理由で司が旅館を立ち去れば、それ以降どんなに頑張っても、投宿を申し込んでも恐らく二度と泊まらせてはもらえないことを知っていました。 かと言って廓の女郎同様千里さんを受け出そうにも女将との関係がぎくしゃくしている今、どんな金額を吹っ掛けてくるか見当もつかないのです。
今できることと言えばひたすら母娘の健康と安全を願い、ふたりの労苦を陰で支えるしかなかったのです。 これまでコツコツ貯めてきたお金と両親から借り受けてお金。 それらが尽きた時救い出せていなかったら何もかもが水の泡となるのです。
近くにいさえすれば何か手掛かりがつかめるはずと下働きに入りました。 こうして藤乃湯にとって珍妙な宿六が誕生したのです。
掘割の畔に棲む女 ~夜泣き~
貧困と差別の元心密かに泣き暮らす真の被害者は司が当初不憫に思って庇った母親の千里さんではなく元気溌溂としていた娘の美月ちゃんの方が深刻だったのです。
まずひとつに司が口を挟まなかったら美月ちゃんは生涯に渡って生きていくことで精一杯の最低限の生活しか送れなかったからです。 栄養価の低いものを、それもお腹がすいているのに腹いっぱい食べれないものだから下腹だけがポコンと飛び出たような格好になる粗末なものをそれと知らず与えられ続けていたんです。 消化吸収が悪いから四六時中膨満感に悩まされトイレが近くて寝るに寝られないんです。
しかし美月ちゃんにとって最も耐えがたかったのはこういった状態の中心細くてどうしようもない夜に母親が何処ともなしに家を空けることでした。 その理由が大方見当ついてるだけに体調が悪くても多少熱が出ても黙って寝たふりするしかなかったのです。
しかもそんな体と心理状態で、ともすれば崩れ落ちそうになる母親を必死で励まし続けなければならなかったのです。 一方で親と同等かそれ以上の考え方をせねばならず、しかしもう一方で幼い子供が持ち合わせているであろう様々な欲望を、もう抑えきれないようになっていたんです。
掘割の畔に棲む女 ~嫉み妬み~
同じことが家族の中でも起こりえます。 上の子ばかり可愛がると下の子が拗ねるという風にです。 そしてまた子供を溺愛してしまうと奥さんに拗ねられるというのもあります。
仮に離れの小屋に棲む母娘の名字を有本としましょう。 その有本家に他人である宮内司が入るということ、しかも少なからず母娘の世話を焼くとしましょう。 こうなるとこれまで愛に飢えていたふたりですので司の愛情が今どちらに注がれているのか気になって仕方なくなるんでしょう。 ペットほどではないにしろ睨み合いが始まるんです。
悪いことにその愛情がただ単に仕事だから仕方なしに行っているのではなく、心底将来を気にかけて親身になって行っているとすれば受ける側だって次第次第に自ずと愛されたいという気持ちも生まれます。 美月ちゃんにとってみれば喫茶で必死になって司が母にプレゼントを手渡そうとしたぐらいですので母を好いてくれていると分かってはいますがふたり揃って部屋にいるときに母に愛情を向けたりすると拗ねるんです。
掘割の畔に棲む女 ~振り子のように揺れる心~
口で言うのは簡単でしょうが、それが如何に大変なことか司は身をもって感じてしまったようでした。 美月ちゃんなら簡単ではなかろうかと近寄り、添い寝させてあげる仲にまで発展したんですが流石に有本家を出て学校に向かってから帰るまでの間に実際何が彼女の身に起こったのか聞き出すなんてことが実際問題できないんです。
母親にさえ隠し通している、いま彼女が置かれている位置を知るというのは生半可なことではできそうになかったんです。
これからすると千里さんの場合もっと根っこが深いはずで、この頃では司が心から知りたいと思った 『一体彼女の身に何が』 は永遠の謎のように思えてくるのです。
これまで一緒に暮らしてきて分かったことと言えばこちらが頑張り通して何かが達成でき、或いは母娘共々明るい兆しが見えてきたように思え、次の瞬間過去にあった何かを思い出すのであろう、瞬く間に水泡に帰す。 そう言ったことを幾度となく繰り返して切ったんです。
一般世間で言うところの表面面ではなく自分が根底から変わり、しかも下僕で有り得ることが出来たなら心の動きも読み取れるようになるかもしれないとの結論に至ったんです。
tag : 心の動き瞬く間に水泡に帰す正義感に満ちた発言投げやりな言葉の羅列最初は煙たがられ終いには諦め面倒見の良いだけの男誘ってくれた今宵の男
掘割の畔に棲む女 ~鉈を持ち出してきた男~
司はこれまで彼女と接して得た経験からできる限りその部分には触れないよう、話題を変え明るくふるまってきたつもりでした。 美月ちゃんは確かにこういったやり方で徐々に心も生活も安定してくれましたが千里さんは一方方向に振れたまま元に戻りそうにないのです。
そうこうするうちに藤乃湯とは元来女将の方針からして雇女、つまり女中を使って望むお客様には夜伽をさせていましたので苦心惨憺やっとそういうことから少しは脱却できたと思った矢先、今度は自分で止める方向に舵を切った筈の千里さん自らが進んで誘われるまま男の部屋に忍び込み夜伽を再開させてしまったんです。
女がそういった状態になると彼女を取り囲んでいた連中もそれに呼応するように蠢きます。
tag : 女の心小さな諍い雇女夜伽彼女目的の野郎ども周囲に群がる熾烈な争い順番に組み入れてもらえない男鉈を奮って襲い掛かって薬を打たれつつ行為に及んで
掘割の畔に棲む女 ~女囚~
不幸にもこの段階で千里さんは事件のことで男が取り調べ中に一体何をしゃべったか知りえません。 しかし警察としては調査がどこまで進んでいるかを知られないためにある程度可能性のありそうな事例を持ち出しと言いましょうかでっち上げ揺さぶりをかけてきます。 千里さんは事件の関係者からではなく房で知り得た感触のみ頼りに回答しなくちゃなりません。 恐怖感にさいなまされ、早く解き放って欲しいものだから必要ないことまで正直にしゃべっちゃうことだってあるんです。
被害者として任意の取り調べに協力したはずなのに、いつの間にか加害者側 (別件逮捕) になってしまってたんです。 任意同行の要請が男が現行犯逮捕されてしばらく経って行われたのは調べていくうちに署として別件逮捕が妥当ではないかとの上層部の判断で召致を経て逮捕したからでした。
掘割の畔に棲む女 ~生きる知恵 阿り (おもねり) ~
だからと言って生き延びる為誰かれ無しに過去の秘密を暴露しまくることなどできません。 それこそ余計に重荷を背負わせることになるからです。
ともあれ今は恐らく次回公判が結審になるでしょうから無事出廷できるよう頑張りぬくしかなかったんです。 房内で知りえた情報によると初犯で、しかも過去の判例は全てと言っていいほど執行猶予がついていましたから逃げないで出廷さえすればそれで十分なんです。
仮釈には何処かの誰かが裁判費用を納めてくれてますので野宿しながらでも働いて返さなければならないんです。 そのためにも過去は過去としてこれから先頑張るしかないんだと覚悟を決め翌日から働き口を探しました。
弁護士にだけは居場所を知らせ、手間賃仕事を求め しかしながらできうる限り身分を隠し生きる為方々流れていきました。

tag : 働き口手間賃仕事清掃外回りの掃除給料が安い履歴書が無くても雇ってもらえた零細月の半分も出勤させてもらえなくなり
掘割の畔に棲む女 ~法律のはざまで~
たとえそれが生活に困るからとか食べるものがないとかの理由で逸脱したにしても仮釈は取り消され仮釈の折に誰かが支払ってくれたであろう保釈金は没収され次の裁判に向け新たな費用が発生します。
最初の仕事、清掃業は問題なかったにしても飲食店関係は気を付けなければなりません。 場合によっては起訴内容に抵触するからです。 飲食店の大分別は 『宿泊業』 と 「飲食サービス業』 になりますが、千里さんの場合宿泊業は限りなくイエロー・カードなんです。 もちろん稼ぎが良いからと飲食業でもピンサロやキャバレーに職業として出入りしたりすれば一発アウトです。
ここいらが難しくて、例えばオーナーとか店舗系列にそれらが少しでも混じっていたりすれば結審に影響が出るのは必須です。 紹介してくれた社長が組との繋がりがあったり飲食店がみかじめ料を払っていたりし、しかもそれを知っていて務めたりすればアウトだからです。 千里さんは賄い飯を頂く折とかを利用しまさかの情報を得ようとしました。
掘割の畔に棲む女 ~知識不足ゆえの行き違い~
その影響は例えば千里さんの場合、千里さんの拘留中司は無駄と分かっていても連日のように署に押しかけ面会を申し込まなきゃ状況把握は出来ないんです。
しかし不幸なことに事件発生後 司は美月ちゃんを連れ遠く離れた津和野に帰ってしまっています。 拘留されている署まで連日出て来いというのは酷です。 千里さんは状況が一変し仮釈されてしまっていましたが、そのことを遠く離れて暮らす司は知らなかったんです。
また、たとえ翌日でも良いので署に出向いたとして、果たして彼女の仮釈を署員が教えてくれるかと言うと、これがそうでもないんです。
面接を申し込んだとしても拘留中なら 「該当しない」 と言われ仮釈なら 「認められません」 とでも言われるのが関の山なんですが、司はこの差を依然と同様 『門前払い』 と受け止めてしまったのです。
時として若い正義感に満ちた刑務官が窓口にいて 「何時とは言えませんがここにはいらっしゃいません」 とでも言ってくれたなら初めて仮釈なのか拘置所に送致されたかを知ることが出来るのです。
掘割の畔に棲む女 ~天空に星が瞬く頃に 廃屋からの出発~
千里さんがこういったところに棲まなきゃならなくなって良かったのは彼女に目星をつけていた男どもが気軽に出入りしやすくなった、自宅から何かを持ち出し貢ぎやすくなった点じゃないでしょうか。 布団から何から一切合切無くなったわけですから、しかも無一文に近いわけですからお恵みが無ければとても生きてはいけません。
その反面都合が悪いのはどうしても躰を求められる点ではなかったでしょうか。 親切心で持ってきてくれたとは言うものの心変わりされたりすれば売買と取られても仕方ありません。
千里さんはだから誰かとふたりっきりになることを極力避けました。 どうしてもというときには昼間に表の戸を開け放した状態で話しをしました。
掘割の畔に棲む女 ~心の闇を溶かしてくれた驟雨~
藤乃湯旅館の離れではそれでも司が何かと食べ物にしても千里さんや美月ちゃんの躰を想って工夫を凝らし買い求め目の前に並べてくれてましたので義務と思って食べればよかったんです。 ところが廃屋に来てからというもの賄いは全て千里さんが考えて出さねばなりません。
男たちが適当に持ち寄ったものの中から彼らが飽きないよう出す日にちや工夫を凝らし目の前に並べなければなりません。 期限切れや廃品に近いものを持ち込んでこられても、そううまくお膳立てができるはずもなく、従って少ないお給金の中からなにがしかの買い物をして添えなきゃならないんです。
たとえこのように気を使って添えたとしても出されたものは遠慮なく胃の腑に納めるというのが男の本来の姿ですので肝心の千里さんが体力を保つため食べようとしても何も残っていないんです。
結局彼らの欲望のはけ口として藤乃湯旅館の離れを新たに作らされ雇女のごとくこき使われるため引っ越したようなものだったのです。
掘割の畔に棲む女 ~見習い農婦~
人から見ればな~んだという程度の野菜を分けてもらえたことであれほど喜ばれたのは農家にとって至上の喜びだったのでしょう。 その家のおばあさんが千里さんを殊の外気に入り手伝いに来いと言われたんです。
期待してもらっても給金をそれほど出してはあげれないが技術だけは教えてやると言われたんです。 腹が減ったらウチの飯を腹いっぱい食えばいいとまで言われたんです。
翌日から千里さん、片道10キロをゆうに超える距離を自転車に乗ってその農家に通いました。 どんな天候になろうが休みなく通い詰めました。
掘割の畔に棲む女 ~鍛え上げた肉体のみが持つ魔力~
旅館が如何に忙しくても体力的には農婦の方が数倍キツイ肉体労働。 しかも掘割に住むと決めた以上自転車通勤せねばならず更に一層躰は逞しくなっていきました。 太股などなまじっかの競輪選手張りになっていったんです。 男との睦言のために躰を鍛え上げたわけではありませんが鍛えるということは肉体が若返るということらしく一時は潮が引くが如く男日照りになっていった廃屋も、それを知った男どもがぼちぼち帰ってきて以前にやや近い状態になってきたんです。
本当なら仕事で汗をかいた時など、大塚家の浴室に入ってシャワーを浴び着替えてから帰って来ていたものを、そんなことして時間潰したら男どもと繰り返している睦言に間に合わないのでこの頃ではコンロでお湯を沸かし、それを廃屋の浴室に持ち込んで行水するようになったんです。

その他連絡事項
Shyrock様からの投稿を読んでつくづく思います。
官能小説は様々あれどほぼほぼ現実にそう文体であり感心させられます。
流れが良いんですよ。 目をつむっていても情景が浮かんでくるような気がするんです。
知佳のブログの中で「美貌録」だけアクセスが伸びず対策にブロ友をと探し回りましたが現実の世界とはまるでそぐわない文章の羅列、あれを見る限りこのような文を愛読する人たちって余程世の中に対し不平不満を抱いてると思えて仕方がありません。
しかもその手の小説の方が圧倒的に人気を博している当たり書く方としても考えさせられます。 一般小説を読む人と官能小説とでは計り知れないほど隔たりがあるんですね。
探す方面と探す手法を考え直します。