官能小説『蛇の毒』 第1章 蛇に噛まれて

に入り、昨日から信州の山の家に姉の靖子と二人で来ているのである。山の家と言っ
ても別荘などとは程遠い、たった六坪の小さなもので、屋根裏が寝室として使われて
いた。トイレは外の別棟、風呂はドラム缶を利用した五右衛門風呂で、家から少し離
れた庭先に置かれている。
敷地だけは広かった。値段に釣られて栄治の父親が千二百坪の山林を坪五千円で購
入したのである。千二百坪と言っても平らな部分はせいぜい二百坪。残りはやっと降
りられるかどうかの急斜面が谷底の小川まで続いている。おまけに北斜面なので値段
が安かったのだろう。二百坪が六百万で残りの斜面はおまけ、そんなところだ。そう
は言っても、斜面の坪数は平地に換算するので実際の地表はかなりな広さである。土
地を衝動買いして建物を自力で建てるまでは熱心だった父親も最近は殆ど来ない。一
番よく利用しているのが栄治と姉の靖子だった。
裏の斜面は栄治には格好の遊び場だった。ひとたび斜面を降り始めればそこは周り
から完全に隔離された別世界になる。斜面には一抱えもある楢やクヌギ、山桜等が生
い茂っていた。
官能小説『蛇の毒』 第2章 仲直り

る。恥ずかしいところを弟に見られ、毒を吸い出すためとは言え、散々しゃぶられて
しまったのである。この歳になっても男を知らない靖子には天と地がひっくり返る程
ショックな出来事だった。だから、ついきつい言い方をしてしまったが、頼んだのは
自分の方なのである。
時間だけがどんどん過ぎていった。一人で暗くなった家にいると不安な気持ちに押
し潰されそうになった。どうやら毒蛇ではなかったらしく、噛まれたところも殆ど痛
まないのだが、このまま栄治が帰ってこないと思うと居ても立ってもいられなかった。
靖子は下着を新しいものに替えて外に出た。森の中は殆ど真っ暗で何も見えない。靖
子は荷物の中から懐中電灯を取り出して裏の斜面を降りていった。
「栄治。」
梯子の下まで来た靖子が声を掛けた。返事はない。
「栄治、さっきはごめん。」
「何だよ、今頃。」
ようやく不機嫌な声が返って来た。
「ねえ、降りてきて。ご飯にしよう。お腹、空いたでしょう。」
「空いたけど。」
「とにかく謝る。ごめんなさい。気が動転してたの。」
「もう変な言い方しない。」
「しない。約束する。」
「分かったよ。行くよ。」
官能小説『蛇の毒』 第3章 雷雨の中

鹿にして見にも来なかったので栄治が驚いた。
「ねえ、あんたの小屋に登ってみたい。」
「いいよ。」
栄治が梯子の下まで靖子を案内した。靖子は梯子になかなか上れなかった。仕方な
いので栄治が下から尻を押し上げる。その手がお尻の間に入り靖子がキャーキャー騒
いだ。
「エッチー。」
「上がれないんだから、仕方ないだろう。」
「嘘。わざと触ったんでしょう。」
まるで 中 学 生 か高校生だな、と栄治は思った。これまで男を知らず、こう言う戯れ
すら経験したことのない姉。兄弟でのこうした戯れは二人きりだからこそ出来ること。
親は勿論、世界中の誰にも知られてはいけない二人だけの秘密。その秘密を共有した
ことが靖子を必要以上にはしゃがせているようだった。
「ねえ、ここ渡るの。」
上に登っては見たものの、横に掛けられた丸太の高さに靖子が後込みした。一応手
摺り代わりの細い丸太が横に一本添えられているのだが、先に行くほど細くなってい
るので怖さが先に立って足が進まないらしい。
「今行くから待って。」
栄治が梯子を登って横木に辿り着いた。
「押さえてて上げるから、さ、行ってごらん。」
官能小説『蛇の毒』 第4章 とんでもない初体験

してから行くようなことでもないので、いつものように裏木戸から入る。玄関には鍵
が掛かっていることが多かったのである。裏から入ると便所の脇を抜け、その先は風
呂場だった。その風呂場からヒソヒソ話す声が聞こえた。
「そこ、そこ。」
それは啓輔の姉、弘子の声だった。
「もっと強く。ああ、いい。」
弘子の声しか聞こえてこないが、誰かもう一人が一緒にいることは間違いない。風
呂に二人で入っている。それは何かドキッとするようなことを栄治に想像させた。
「ああ、啓輔。」
栄治が思わず声を上げそうになった。風呂場に啓輔と弘子がいる。当然二人は裸だ
ろう。しかも声の様子からすると入浴しているだけとは到底思えない。栄治が足音を
忍ばせて窓に近寄った。窓は網入りの模様ガラスだが端の方が少しだけ開いていた。
息を飲んで覗き込むと弘子がこちらを向いて壁に寄りかかり、足元に啓輔が蹲ってい
る。顔が弘子の腰の辺りに覆い被さっていた。
(あそこを舐めてる)
陰になって見えないが、栄治はそう思った。啓輔の頭を押さえていた弘子が目を開
けた。
「誰。」
弘子が凄い目で栄治を睨み付けた。
官能小説『蛇の毒』 第5章 キャンプの夜(1)

聞き終わった靖子が眉をしかめた。
「何か、凄く汚らしいって感じ。」
「うん。僕もそう思った。セックスって、もっとムードがあってきれいなものだっ
て想像してたんだけど、あのことがあってから、ちょっと女見る目が変わっちゃった
なあ。」
「馬鹿、一緒にしないでよ。私は栄治とこうしてるの楽しいし、きれいだと思って
るわよ。」
「僕も。そうそう、初めての時、弘子さんの顔見てると元気が出なかったじゃない。
その時目をつぶったらなぜか姉さんの顔が浮かんで来たんだ。」
「やだ、私のこと思い出したの。」
「うん、そうしたらすぐに気持ちよくなってきた。」
「怒っていいんだか喜んでいいんだか。ところで、栄治の経験って、それ一度きり
なの。」
「ううん。弘子さんとはそれっきりだったけど。」
「全部聞かせてよ。」
「え、ま、いっか。ここまで話したんだもんね。」
高校生になった栄治には暫くガールフレンドが出来なかった。弘子との初体験以来、
簡単に付き合うような気持ちになれなかったからである。変に勿体付ける女は好きに
なれない。かと言って、弘子のように、まるで雌豚のように貪欲に求められても閉口
してしまう。
官能小説『蛇の毒』 第6章 キャンプの夜(2)

自分をワンゲル部に誘ったのは麻紀子。今回の山行も麻紀子が言い出したこと。それ
も最初から二人切りと分かっていたらしい。そして今、同じ寝袋で寝ようとしている。
自分は誘われているのだろうか。今までの状況からすれば、そうとしか考えられない。
寝袋に入ったら弘子のように襲って来るのだろうか。だとしたら、ちょっと幻滅だっ
た。淡い気持ちを抱いているだけに、そんな麻紀子の姿は見たくない。栄治は時々麻
紀子の顔を盗み見たが、そんな素振りは全然感じられず、ただ二人だけのキャンプを
楽しんでいる女の子の姿がそこにあるだけだった。
食事が終わると麻紀子が寝る準備に取り掛かった。着ているものを次々に脱ぎ捨て
て下着姿になるとさっさと寝袋に入ってしまった。自分一人起きているのも変なので
栄治もトレーナーに着替えてテントに入った。テントと言っても高さは一メートルも
ない。寝袋の上に掛かった覆いと言う感じである。
「入っていい。」
「どうぞ。」
麻紀子が寝袋を開いた。体になるべく触れぬように気を使いながら栄治が麻紀子の
隣に潜り込む。よけていた麻紀子が姿勢を戻したので体が密着した。
tag : 姉弟相姦最初の人クンニ反射的に脚を閉じ無防備な状態押し付けられた唇奥を探った強い匂いが沸き上がって襞の中をくまなくバージン
官能小説『蛇の毒』 第7章 一つに

「うん。僕もそれが初めてだって思うようにしてる。啓輔の姉さんとのことは自分
でした訳じゃないし。」
「その後、麻紀子さんとはどうなったの。」
「一週間くらいしてからもう一度二人で山に行ったんだ。」
「その時もしたの。」
「うん。まだ少し痛いって言ってた。」
「今は。」
「麻紀子さん、随分悩んだみたい。僕とは一年近く付き合ったんだけど、最終的に
親の言うとおりに結婚しちゃった。卒業式の日に二人で泣きながら抱き合ったのが最
後で、それからは一度も会ってない。」
「その麻紀子さんって子、可哀想な気もするけど、よっぽどいい家のお嬢さんなの
ね。」
「そうみたい。相手の人も大会社の社長の息子だって。どこの会社だかは教えてく
れなかったけど。」
「行く行くは社長夫人って訳ね。でも、話し聞いてたら、栄治は初めてでも上手に
やったみたいね。」
「うん。自分でもそう思う。だから姉貴だって大丈夫。」
「そう言う訳にも行かないわよ。」
「どうして。口でするのも、入れるのも一緒じゃない。」
「違うわよ。口で舐めても何もないけど、入れちゃったら子供が出来るかも知れな
いし。」
官能小説『蛇の毒』 第8章 (最終章) 三人の夜、三人の明日

守の間に栄治は風呂の水汲みを済ませて火を点ける。昨日の風呂はお湯の中で栄治が
出してしまったのでそのままにしておけなかったのである。
改札口で出迎えた靖子を見て母親の久美がおやっと言う顔をした。
「何、ママ。変な顔して。」
「ううん、何でもない。」
車の中でも久美は殆ど喋らなかった。靖子はそれが気になって仕方がない。
「ねえ、ママ。パパと喧嘩でもしたの。」
「何でそんなこと言うの。」
「だって、凄い不機嫌な顔してるんだもの。」
「そんなことはありません。それより、栄治は元気。」
「ああ、いつもの通りよ。毎日飽きもせず隠れ家とやらに登ってるわ。」
「そう。」
靖子は出掛けまで栄治と抱き合ってたのがまずかったかな、と思い始めていた。風
呂に入る暇が無かったので、何となく栄治の匂いがしてるような気もするのである。
「栄治、来たわよ。」
車から降りた久美が風呂の薪をくべている栄治に声を掛けた。
「あ、ママ。もう少しでお風呂入れるよ。ところで、何かお土産ある。」
「お土産って、食べるもの。」
「うん。」
「車じゃないから大して持って来れなかったわよ。ハヤシと肉まんと。そうだ、カ
ツサンドがあるわ。」