やたらと娘の担任の先生に逢いたがる人妻
さりとて逢いたさは募るばかり、が、薬草を担いで出かけようにも集落で算出する量には限界があるんです。
真紀さんは峠の頂上で娘の公子ちゃんの担任の先生を振り切って家路に向かったとはいえそこは女、毎日のように娘を見送ってあの峠のところまで来てくれていると知っておればこそ逢いたくて、せめてお礼の一言も言いたくて心が千々に乱れました。
何度か手ぶらで下校する娘を迎えに峠までノコノコ出かけて行ったことがあります。 しかし夜道の峠で唇を交わし、その彼を振り切ってひとり峠を下って行っており真紀さんの気配を感じると先生の方から後戻りされてしまってたんです。
「なんとかしないと・・・なんとかして里に向かわなくちゃ」
この頃ではもうそれが口癖になってしまってたんです。
そうやって思いついたのが栽培ではなく、さりとて残り少ない領内の野生の薬種でもないよそ様の土地のものを採取する方法でした。
彼の好意に後ろ髪を引かれつつひとりで峠を下ったことを思えば悪いことであってもこの方法も別段苦にならなかったのです。