栄養失調の公子ちゃんに食べさせたくて大川の畔でウナギを釣る
「あの子をそんな目にあわしたらただでさえ栄養が偏りがちなのに死んでしまうわよ」
阿部先生にこのように焚きつけられ見様見真似でも良いから大川で公ちゃんに食べさせるためのウナギ釣りでもやってみろと言われましたが、堤先生はウナギ釣りどころか魚釣りもろくにしたことなかったんです。
「女将、ウナギって海から20キロも上流に当たるこんなところにホントにいるの?」
そこからして知らなかったのです。 ところが・・・
「その程度ならよく知ってる爺様に頼んであげる」
この時代上手 (かんて) の源三さんじゃありませんが仕事もろくにしないくせに太公望ぶってる人は多かったのです。
薬種問屋の女将の口利きもあって夕まずめ川に入り目星をつけた岩の穴に仕掛け針を置いておき、早朝に引き上げるというやり方でウナギを狙いました。
これまで幾度となく躰を合わせておきながら真紀母子が重篤な栄養失調に陥ってるなどと考えても見なかったのです。
「僕はただただ真紀さんの躰から精気を搾り取ってただけだったのか」