掘割の畔に棲む女 ~それぞれの後追い~
大塚家の所在地は千里さんが元居た掘割地区と違い勝手気ままに出入りして良いような廃屋はありません。 何処に行っても知りあいばかりですので大塚家から追い出された女としては薹が立ち過ぎたものにわざわざ手を差し伸べてくれるものなどいるはずもありません。
無一文に近い状態の上着の身着のまま長年棲み暮らした村を後にしました。 生きてゆくために今できることと言えば女でありさえすれば囲ってくれる都合の良い男を探すしかなかったのです。 それともうひとつ、雨露凌ぐ場所をなんとしても早く確保せねばならなかったのです。
皮肉なことに蘭子さん、乞食同然と蔑んだ千里さんが歩いて来た道を今度は自分が歩くことになったのです。 それもこれも若いころ美し過ぎたことを殊更鼻にかけ威張り散らしていたからでした。
第十一章 最後の愛 Shyrock作
「俊介はん、ちょっと待って。この薬を飲む前に、もういっぺんだけうちを愛しておくれやすな・・・」
「・・・・・」
「水の中で抱合うて、ほんで、薬をいっしょに飲みまひょ・・・」
「うん・・・わかった・・・」
二人は手を繋ぎ、浜辺をゆっくりと沖合いに向って歩き始めた。
季節はもう夏だと言うのに、打ち寄せる波が氷のように冷たく感じられた。
「あ、痛・・・」
ありさは小石を踏んだのか、少しよろけて俊介にもたれ掛かった。
「だいじょうぶ?」
ありさをしっかりと受け止める俊介。
足首が水に浸かる。
一瞬立ち止まった二人だったが、また歩き始めた。
深い海に向かって。
膝まで浸かる深さで二人は立ち止まり、抱き合いくちづけを交した。
「ありさ、君を幸せにしてあげられなくてごめんね・・・」
「なに、ゆ~たはりますんや。うちは、俊介はんに巡り会うて幸せどすぇ・・・」
ふたりは頬を寄せ硬く抱き合う。
息も詰まるほどの濃密なくちづけ。
俊介は目を閉じて、ありさのふくよかな胸の膨らみをてのひらで味わった。
そしてその感触を永遠の記憶の中に刻み込んだ。
死出の旅・・・いや、そうではない、あの世でともに暮らすのだ。
ありさは心にそう誓った。
テーマ : 官能小説(レイプ・凌辱系・SM)
ジャンル : アダルト
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Shyrock様からの投稿を読んでつくづく思います。
官能小説は様々あれどほぼほぼ現実にそう文体であり感心させられます。
流れが良いんですよ。 目をつむっていても情景が浮かんでくるような気がするんです。
知佳のブログの中で「美貌録」だけアクセスが伸びず対策にブロ友をと探し回りましたが現実の世界とはまるでそぐわない文章の羅列、あれを見る限りこのような文を愛読する人たちって余程世の中に対し不平不満を抱いてると思えて仕方がありません。
しかもその手の小説の方が圧倒的に人気を博している当たり書く方としても考えさせられます。 一般小説を読む人と官能小説とでは計り知れないほど隔たりがあるんですね。
探す方面と探す手法を考え直します。