子作り話しが思わぬ方向に進展… ~二股不倫~

何故なら猛さん、優子さんが実家に帰ってからというものおぼこかと思える若妻の肢体を拝めないどころか乾草の香りがする汚れた下着 (使用済み) にすらありつけなく恋路の持って行き場を失っていたからです。
拝み奉るほどの働き者で威厳に満ちた男性像を目に妬き付けせしめんものと踏ん張って来たのに、肝心の女性が手元に帰って来ないとなると不安で不安でたまらなくなりました。 長期間に渡って頑張ってきた実績が泡と消え失せたような気分にさせられたのです。
新妻に逃げられた家というのは本人ではなく外野が騒ぎ立て元に戻そうとするのが普通ですが、その外野であるはずの猛さんこそ本丸、歳を喰ってまるで我が子のような嫁に逃げられ… の婿殿のつもりになっておられたんです。 そう、いつかはナマでハメて孕ませてやろうとさえ思い詰めておられたんです。
こういった折の女性の扱いとは実に厄介千万です。 息子が出会い系を使って勝手に探してきた嫁。 結婚を許した覚えなど無く、ましてや親御さんに頭を下げ貰い受けてきたわけではないんです。
凡そ実家は何処か知ってはいますが顔見知りでもない以上帰って来てほしい旨親爺が自分勝手に訪問しようがありません。
官能小説『筒抜け』 第1話

突然頭の上から若い男の声が聞こえてきた。それは蚊の鳴くような微かな響きだったが、静かに湯船に浸かっていた弘信は十分聞き取ることが出来た。慌てて見上げると、その声は換気ダクトからのようだった。
「駄目、出ちゃう。」
もう一度、弘信が耳を澄ませていたので、今度は更にハッキリと聞こえて来た。切羽詰まった声だった。
弘信がこのアパートの造りを頭の中に思い描いた。メゾネットタイプの二階建て3DKが左右二世帯振り分けに幾つか繋がった構造である。見てくれはそれなりだが、地主が相続税対策に急遽建てたものだから実態はプレハブアパートと大差無い。恐らく風呂場の換気ダクトが隣とつながっており、そのダクトを伝って秘めやかな会話が漏れて来たことに間違い無さそうだった。
隣には三十代半ば位の女が中 学 生の息子と一緒に住んでいる。表札には田中とだけ書かれていた。入り口が道路に面しているので女所帯と知られたくないからだろう。玄関先でこの女と顔を合わせれば会釈くらいはするが、言葉を交わしたことは一度も無かった。この近所では一番と言える位の美人で、毎日夕方になると出掛けて行く。帰りは深夜だった。多分水商売だろう。
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