知佳の美貌録「水を得た魚のように」
風景に溶け込むかの如く街角に立つ妙齢のご婦人に声を掛けられ、何事か詳しく話しを聞くうちに身内の話しとなり「助けると思って・・・」などと言われその気になって後をついていったところまでは良かったが、路地奥の部屋で待ち構えていたのは全くの別人、期待とは裏腹にとうにオンナを卒業したような高齢女性 或いは見ただけで萎えそうな化け物。 ”しまった・・・やられた!”と気づいたが裏にいる輩が怖く断るに断り切れず布団に引っ張り込まれ童貞を捧げてしまったなどという話しはよく聞く。 未だ未開に近い島 淡路で欲望を吐き出そうとしても、せいぜいその程度の女にしか行き当たらなかった。 一般家庭の人妻が遣り手(やりて)として街角に立ち あわやの客を引いていたのである。
祖母が仕込んでくれた京風料理
持って生まれた素質と言おうか性格と言おうか、せいぜい人夫相手に春をひさぐ程度の女と高を括っていた周囲の飲み屋も料亭も好子の男あしらいの才能に舌を巻いた。 おおよそ人夫などというものは日銭が入れば酒に博打と相場は決まっているが、それを止めてでも金を貯め好子を抱こうとさせるにはそれなりの誘い方と女に魅力がなければ連日順番待ちで大切なお宝を吐き出させるなどというわけにはいかない。 確かに荷揚げはきつい仕事で、日雇いなどに比べに給金は良い、それでも手にした金はそんじょそこいらの口実では吐き出してはくれない。 それをごっそり巻き上げ、それで感謝されるのだから相当商売上手と言わざるを得ない。 その分周囲の一杯飲み屋は客の入りが減る。 タチキュウであっても出し惜しみする。 常連客が好子目当てに通うには訳がある、楚々とした人妻が京風料理を肴に出してくれ、隣に腰掛け盃に良い酒を満たしてくれ、詮無い言葉をつぶやいてくれる。 それが亭主の不満に聞こえ、頼りたそうな泣き言に聞こえ、襟元から匂い立つ芳香も手伝ってか男心をくすぐった。 それほどに男のあしらいがうまかった。 それはそうだろう、年端もいかないころから遊郭のような場所に出入りさせられ、遊女を友達に持たされ その旦那衆と文のやり取りばかりかシモの話しに付き合わされ、置屋や遊女との閨の交渉事もこなす。 本格な夜の商売の何たるかを骨の髄まで叩き込まれ、心得ている。 しかも好子は料理の腕も板場職人並みだった。 お姫様の意に沿う料理を幼くして仕込まれ育っている。 まさか島送りにされたような淡路の地で京風料理が芸者が出てくるなどと、誰も思わなかった。 こうなると好子をほおっておいては料亭であっても客を取られかねない。 いつしか好子は一杯飲み屋から引き抜くがごとく、料亭の酒席に呼び出されるようになっていった。 もちろん酒宴がはけて後も翌朝客を送り出すまで客に寝添ってくれるよう頼まれ、朝帰りするようになっていった。 こうなると大きな宴席でなくとも好子目当てに客は昼日中から料亭に繰り出す。 その都度好子は呼ばれ酒席にはべり金持ち相手に床を共にした。 生まれて初めての女が好子で手取り足取り教わってなんとか夫婦生活を営むことができるようになった夫に比べ、こうした客は女を心得ていたし、好子はそれ以上に男を心得ていて、その嬌態は下働きをする女中連中が目を背けるほどであったが、とかく旦那衆には好まれた。 身体が熟れはじめた好子にとってもこれは好都合だったし、第一 相手がその都度変わる。 溜まりきった男をなだめすかし耐えさせ待たせるのは好子にして性を頂点に誘ってくれるものだったのだ。
妻の背徳を知った夫はその怒りの矛先を娘に向けた
こうなってくるといくら酒肴を十分に与えられ遊ぶ金も持たせてくれる妻であっても心穏やかにおられないのが夫の幸吉。 花街にいる妻を探し出し、床を共にしている奴らを現場を押さえ叩きのめしてやろうと思ったが、相手はセメント2俵をいとも軽々と担ぎ桟橋をまるで鼻歌を歌うかの如く渡る豪傑のもの、或いは業界が肩入れする土地の有力者。 現場に乗り込んでみたところで所詮歯が立つわけもない。 酔った幸吉の目に、母の不貞を知りつつ、懸命に立ち働く娘の姿が妻のソレとダブった。 怒りの矛先は同じ女である子供の久美に向けられた。 寒風吹きすさぶある日の夜、席に呼ばれて好子が家を空けそろそろ客相手の閨入りかと思われる時間に、久美は幸吉から得体のしれない折檻を受け、着ているものすべてをはぎ取られ外に放り出された。 どんなに泣き叫んでも家には入れてもらえない。 その、泣き叫ぶ声を聴きつけた近所の住人が久美を見つけ自宅に引き入れてくれた。 普段でもろくすっぽ食べさせてももらえない環境下で久美は、アバラの浮き出るほど痩せこけ弱り切っていた。 餓死寸前ともとれる身体にとって寒中の風は堪えたのか、それとも恐怖からなのか夫婦がどんなに手を尽くしなだめても震えが止まらない。 この日から久美は高熱を発し、引き入れてくれた家で寝込むことになる。
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