知佳の美貌録「わたしは泣かない」

母が囲われている旦那の娘と頑張って仲良くなれたと思った翌日、学校から帰ろうとすると下駄箱に入っているはずの靴が片方なくなっていた。 朝はちゃんと下駄箱に収めておいたはずの靴であり、なくなるはずなど無い。 それでもせっかく買ってもらった大事な靴、久美は懸命に探したが見つからなかった。 原因はおおよそ見当がついていた。 今朝、登校すると教室での久美を見るみんなの目つきや態度が微妙に違っていて、あの娘の元に数人のガキ大将多集まりひそひそと何か相談をしていた。 久美の靴を隠したのはおそらくその連中だろうと思った。 終業のチャイムが鳴ると久美は探すのを諦め残った片方だけ靴を履き、もう一方は素足のまま帰途に就いた。 両方素足という方法もあるのだが、久美の中では絶対盗まれたと確信があって、それならこれ見よがしに片方素足で帰れば隠した相手も動揺すると踏んでのことだった。 ちょうど田植えが終わったばかりの田んぼのあぜ道付近に差し掛かった時、突然物陰からあの娘とガキ大将連中が飛び出してきて片方素足で歩く久美を囃し立てた。 逃げ惑う久美に向かってとおうせんぼされた。 持ってたカバンが無理やり剥ぎ取られ、たんぼに投げ込まれた。 それを拾おうとすると後ろから娘に突き落とされた。 全身田んぼの泥にまみれ教科書も濡れた。 それでも久美は泣かなかった。
学ぶことが生き甲斐
弟とふたりっきりで暮らした八尾時代、久美はコロッケ屋のおやじにしたたかにぶたれたことがある。 泣き叫べば泣き叫ぶほど打つ力は増していった。 この時思った。 泣いたら余計に暴力は増すと。 だから歯を食いしばって耐えた。 ずぶ濡れになって帰りつき、汚れたものを盥(たらい)で洗濯し、濡れた本をお日様の下一枚一枚広げ乾かす久美を見て好子は怒鳴ったが、久美は頑として事情を話さなかった。 下手なことを言えば好子は激高し、学校に因縁をつけるに違いない。 そうすれば事はもっと大きくなる。 学校に通うことすらできなくなる。 久美はどんなことがあっても勉強だけはしたかった。 帰ってきた父親からひどく打たれたが、それでも口を開かなかった。
飽きもせず帰り道で待ち伏せるガキ大将
校内でもそうだが帰り道でも相変わらず待ち伏せは続いた。 理由は汚いだの臭いだの貧乏人。 言葉尻が険しくなり石を投げつけたり棒っ切れで交代々叩きまわすが始まる。 挙句手に持っているものを奪って遠くとか汚れた場所に放り投げが始まる、そして究極は通せんぼだ。 家路に着けないよう道路をガキどもが折り重なるようにし封鎖する。 動じないとみるやそれらは次第にエスカレートする。 地面にうずくまって身動きしないようにするしかなかった。 ことが解決したのはガキ大将連中のうちの一人が事の重大さに耐えかねて親に相談したことから、いじめが発覚、隠していた靴を返してくれ、久美は再び何事もなかったかのように通学できた。
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