知佳の美貌録「近距離自転車通学」
久美が中学に通い始めて3年生の1学期も終わるころ突然、母親の好子は娘の久美とともに教員室に呼び出された。 呼び出された原因は定かじゃないが連日の遅刻ではないかと好子ならではの直感が働いた。 好子は以前にもまして夜遊びにうつつをぬかし、周囲も噂を立てるが自身でも男なしではいられなくなってきていて、噂を聞き付け親がすっ飛んできて下宿生がすべて引き上げたこともあってか、更にそのことで益々ひねくれてからか、とにかく目覚めが遅かった。 だらしなさが板についてきていた。 久美は懸命に弟の弁当や朝食の用意をし学校に向かおうと頑張るのだが父親の幸吉が起きて来てなんだかんだと茶々を入れるものだからその対応に追われ登校時間に間に合わず連日遅刻した。 遅刻ギリギリなら、校門に当日担当の教員がいて いちいち注意し遅刻とならないように配慮めいたことをしたが、久美の場合その教員たちが立ち去ってのち、暫らくしないと姿を現さない。 一時間目が始まって、授業に熱を帯び始めたころになって教室の後ろの戸が静かに開き久美が、隠れるようにしながらではなく堂々と入ってくるような日々が続いた。 本人曰く、テストさえ良ければと思っていたようで、欠席でないにしても内申書にかかわる重大事例だから成績優秀な久美を担任としては放置できるわけがないと、いくら言って聞かせても無駄だったのだ。 せめても進学校に優秀の旨推薦状を書くためには、この遅刻を何とかしたかった。 それで無駄とはわかっていたが あえて説明しても解らないだろう母とともに呼び出しをかけてみた。
この親にしてこの子あり
担任が、これこれこういった状況でと 説明も終わらないうちに案の定 母親の口答えが始まった。 「久美にはよく言って聞かせますから。 用事はそれだけですか? 忙しいんですからこんなことぐらいで呼び出さないでいただけませんか?」 睨みつけるように言い放つと、もう その先の説明も聞かずにさっさと引き上げてしまった。 「先生、母には言っても無駄だよ」 恥の上塗りさせないでよという言葉を飲み込んだ。 「でもなぁ お前の進学が掛かってるんだぞ。 成績からすりゃー進学校なぞ一発で通るものを、お前それでもええんか?」 聞くや否や 「無理無理ぃ~、第一うちの為に出してくれるお金なんか一銭もない」 大学進学なんて考えてない 「卒業したら働きたい」 こう切り返してきたから尚のこと困惑する担任。
母娘それぞれの世界観
広いようで狭いのが教育関係者の世界、温泉街を拠点にある学校の校長が好子と如何わしい関係を繰り返しており好子たち家族の生活費の一部がそこから出ていることを、久美の学校では職員のほぼ全員が知っている。 公の場で公表されでもすれば怖気づくものを、多少のことなら自身も覚えがあり隣席の同僚や父兄と仲の良い教師が瀬戸際まで進んだこともあるから、ここは自己防衛のため滅多やたらと口にできない。 知っているだけに、あの母親に意見など言っても無駄なことは最初からわかっていた。 淫行甚だしい母と優秀な生徒を一緒くたにするなどという浅はかな自分が果たして悪かっただろうか、それともこれが久美という生徒の運命か、可愛そうだが別の何かを探してやるしかないと、このように考えた担任だったが、数日後状況が一変するような事件が発生する。
颯爽と風を切ってママチャリを漕ぎ登校してきた久美
教室の生徒たちが窓辺に集まって外を見ている。 出欠をとろうと教室に来て担任が目にしたもの、それは久美が自転車通学して来る姿だった。 悪びれることなく颯爽と風を切り、手まで振ってアピールしつつ自転車小屋の方に向かっている。 遅刻ギリギリにセーフで久美の家がある場所を知らない校門当番の先生が喜んだのは言うまでもない。 が、しかし 担任は頭を抱えてしまった。 自転車通学は学校までの距離が相当あり 徒歩での通学が著しく困難な場合に限り許可と校則に銘打ってあった。 相当な距離を2キロ程度ではなかろうかと考えており、校区内に該当する地区はほぼなく、親の転勤などで遠方に転居したが、転校を嫌がって自転車通学する数人にだけ許可を与えていたからだ。 久美の場合500メートルにも満たない。 校則を知ってて自転車通学してきたのだ。 校長・教頭から厳重注意を受け、担任は久美に自転車通学を禁じた。 これに、久美は真っ向から反対し、体育館に生徒を集めこう言い切った。 「そもそも自転車通学とは・・遅刻しないよう来る手段」 「学校が禁止している自転車を、自宅で乗れるのはなぜ?」 「同じ生徒でありながら、これは差別と言わずなんと言おうか!!」 遠距離通学の生徒に対し、同じ生徒の中からいじめが行われていることも教員側は知っていて(自転車云々とは別の理由でのいじめであったが)知らぬ存ぜぬで通していた。 学校側が反論しようもなかった。 見なかったことにすれば久美の内申書に妙なことを書かなくてよくなる。 ただでさえ受験シーズンで生徒も教師もピリピリしてる。 久美の言うように近距離にある家庭での自転車使用まで、この期間だけは制限しようもなかった。 それに加え、生徒の相当数が自転車通学に憧れており、正当性のある、というより生徒に対し説得力のある久美の発言に、今更禁止とは言えなくなってしまった。 他の生徒は校則を以降も守ってくれたが結局久美は、以降自転車通学をすることになる。 他の生徒、殊に下級生は相変わらず誰一人自転車では通わず徒歩だのに久美だけ自慢げに自転車で通った。 ただし、遅刻しなかったのは最初の数週間で それ以降は相変わらず遅刻した。
生活保護家庭ならではの、夫婦仲が疎遠になった理由
好子は・・・というより教員連中は淫交のようないかがわしい行動を、なぜだか急に自粛し始めた。 淫行のみならず、教職員の宴会はもちろんのこと、父兄の忘年会なども一時的に旅館を使うのを避けるようになる。 上からのキツイお達しがあったからのようだった。 旅館がなぜにケチな校長に向かって昼間、空き部屋をロハで貸していたかというと、こういった教職員や父兄の忘年会や新年会などに大いに使ってほしかったからだ。 お陰で好子の仕事がひとつもふたつも減った。 好子が見つけてきた昼日中の空き部屋が使える温泉街で恋愛感情に任せ春を鬻ぐというようなお金には、もちろん所得税はかからない。 旅館にとってもラブホを使われるより後々儲けにつながるから歓迎された。 仲居がこっそり渡してくれるお金はそっくりそのまま懐に入り、亭主に見つからないよう躰の手入れ、化粧品の類も買うことができたし生活の足しにもできた。 万事が万事、双方とも持ちつ持たれつの極秘商売であった。 だから2ヶ月ごとに支給される生活保護費に変化はなかった。 世間から見ればつつましやかに暮らす風であったが、実のところ遊び暮らせた。 これからも納税はおろか保護費に減額など無いはずであった。 ところが夫の幸吉は好子を疑うあまり、いやおさまりがつかないあまり、近ごろ盛んに真昼間の情交と噂が立つ温泉街に出掛けてしまっていた。 噂の主と好子が睦逢ってる証拠をつかみ、今度こそとっちめてやろうとした。 温泉街をうろついた挙句、ある一軒の秘めやかに見える高級ホテルではなく旅館を見つける。 好子がかつて幸吉を睦言に連れ込んでくれたのも温泉宿。 女衒が関わっていたのも表面上置き屋であったが、究極関わったのはこのような旅館。 そこで幸吉は従業員しか出入りが許されていない専用口から忍び込み植込みのある通路をうろついてしまっていた。 それを、あの遣りて仲居に見つかり問い詰められ 「家内がここでお世話になっていはすまいかと尋ねてきたがおらんだろうか?」 と口走ってしまった。 酒臭い息を吐く風体の怪しい男。 最初こそ中井は 「知りませんよ、そんな人!」 とつっけんどんに跳ねつけたものの、よくよく考えてみれば思いつくものがあった。 オトコ好きの女将が仕組んだ教師相手の淫行のお相手を努めるオンナである。 ”まさかこの薄汚い小男が” あの人妻にしておくのはもったいないほどの器量よしの女の亭主であるはずがないと、一度は思ったものの、スケベ心といおうか興が乗り、ついついほどよい返事を返してしまった。 「それほどお疑いならどうです? そのままお通ししたとなれば女将に私が叱られます。 ですが、下働きのふりして、奥様のご様子を覗いてみられては? その程度なら口をきいてさしあげないでもないんですが」 と持ち掛けたのである。 女将に、いつの日だか忘れたが好子という女には働きもせず将棋にうつつを抜かし、酒におぼれる亭主がいると聞かされていた。 「あんた朝早くは苦手なんでしょ? わかったわ、それなら布団上げと浴室の掃除なんかいかが?」 相手の意見も聞かず独断で決めてしまった。 大女将に娘は男遊びが酷く、経営に疎いから万事につけよろしくと釘を刺されており、こういった半端仕事なら仲居の頭である彼女が決めるのが習わしになっていた。 双方とも様子を覗くのにぴったりの仕事で、普段は私たちが覗いて、「お客様が終わられたのを見て次のおもてなし・仕事にかかるんです」 と、あたかも情事・淫行を覗き見しつつ、それに合わせおもてなし・仕事をこなしてるように説明されたものだから男としておさまりがつかない。 聞いただけで興奮する幸吉 「儂にもできるんか?」 すかさず問うてきたので 「女の私には少し荷が重すぎ・・・」 でもご立派な体格の貴方なら十分できるはずとおだてもまじえ説明してやった。 その日から幸吉はせっせと旅館の下働きを、妻の情事を見つけんがためすることになる。 アル中と知って面白がった台所方は幸吉に昨夜の燗冷ましをこっそり分けてくれる。 2級酒の燗冷ましなどアルコールが抜け、甘ったるくて旨くもなんともないが、所詮アルコール中毒の幸吉にとり、安い焼酎より格段にうまいと感じた。 そんなこんなで幸吉は旅館に通い詰めていた。 好子の姿が家から消えると益々鼻息荒く通った。 休まず出ても下働き故微々たる給金、生活保護費にはほど多い。 そんなこととはつゆ知らない好子。 年度が替わって最初の生活保護費が振り込まれてきたが平年に比べ心なしか減っている。 他のことなら気の短い好子のこと、血相変えて市役所に怒鳴り込むところであるが、根が公務員という身分に弱い、受付で用を告げても毎度言いくるめられる、泣き寝入りするしかなかった。 反面、幸吉はというと、有名進学校に神童と言われ進学し、学士様を目指し頑張った経歴がある。 教師など召使程度にしか思っていなかった。 だから見つけたら堂々と問い詰められるだけの度胸も持てた。 だが悲しことに覗き見ても覗き見ても好子は情交をおこなっていないし、生活費云々という点については好子以上に疎かった。 かくして、普通に生活費を受け取っておればもう少しましな額になっていようものを、下手に幸吉が旅館の下働きなんぞというものに手を出すから、市役所にあの家には働き手がいると見透かされ、収入が減額されてしまう。 ある日そのことについてつい、久美に愚痴ったものだから生活保護費について、その仕組みを知ることとなり、「俺は働いてきたんだ」 と亭主が威張り散らすさまが一気に疎ましくなり、以前にもまして夫婦性活を避けるようになっていった。
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