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知佳の美貌録「いつも仲良し3人組」

大人になり袂を分かちあうことになる3人と、高校時代久美はいつも一緒に行動した

家まで迎えに来てくれる仲良しの3人はいつも一緒に通学してた
 その人がどのような環境のもと生まれ育ち、どんな問題を抱えているのかすら知ろうともせず、3人は高校の3年間を通じ いつも一緒に行動しようとした。 相手の内情を詮索しない。 むやみに人の批判をしないなど、気の合う面があったからいつしか友達として付き合うことになった。 対抗するグループが現れたりしたことで一層3人の絆は深くなっていった。

男が引き裂いた女の友情
 所詮就職目的に入学した学校。 卒業と同時にまず生活圏を分かち合った。 各々就職したがひとりだけではあるが場所が遠く離れていたため3人で会う機会がなくなった。 何故だか3人揃わないと意見が折り合わなかったのである。 久美は後にも書くが自動車会社の事務員に、地元で就職したもうひとりは保険関係に、更に遠方に就職したひとりは準公務員になった。 お互いに朝から晩まで仕事づくめで疲れ果て、休みともなればバタンキュー。 そのうちのひとり保険関係に就職したはずの彼女は、実は高校在学中にひとつ歳下で同じ学校出の男に言い寄られ、卒業時親の目を逃れたく一度は振っていたものの、就職とほぼ同時に再び熱烈なファンクラブの一員だったことをほのめかし言い寄られ、なだめすかすうちに立場を逆転させられ孕み、お腹が目立たないうちにと急ぎ郡部に嫁入りしてしまい疎遠に一時期なった。 その次が久美で、同じくナンパされた男とデートしなきゃならなくなり疎遠に。 そして遠方に就職した彼女は同じ公務員同士意気投合し嫁いでしまい、子供ができ益々疎遠になった。 それでも手紙やはがき、メールに電話などでやり取りしていたころまで友情はなんとか保てた。 その友情が保てなくなったのは相談事がきれいごとではなくなったからであった。 遠方に嫁いだ彼女はファンクラブ云々で孕んだ友達を非難し、ファンクラブの彼女は見合いみたいな方式で結婚した遠方の友達を非難し始めた。 そんなやり方で幸せかと問いたいらしい。 ファンクラブの友達は結局、男の方から赤ん坊を育てる自信がないと泣きついてこられ、母親を間に挟み離婚を迫るようになり 「私が悪かったから・・・」 と、あたかも男を庇い癒すがごとく言動をし慰謝料も請求せず別れてしまうことになる。 そしてその喪も明けぬうちに今度は妻子ある男性と寂しいときに言い寄られたからと関係をもってしまい、別会社を設立し退社し、その社員ふたりだけの社屋で昼となく夜となく関係を持つようになってしまう。 引き裂かれた友情、それは男たちがそれぞれの女を翻弄し始めたからだった。

いつも仲良し3人組
 暑い日も寒い日も、いつも仲良し3人組は一緒だった。 学校が休みの日には、この3人組は弁当持参で付近の公園と言わず海岸と言わず自転車で走り回りおしゃべりして過ごした。 思えばこの頃が、学生時代の中で一番幸せだったような気がすると久美は後に語ったものだ。
 
レスのしわ寄せ
 家の用事 とは言っても所詮食う・寝る・風呂程度だが・・・が済めば知らぬ間に、右へ左へと各々勝手気ままに姿を消してしまう両親。 夕食時などでたまたま夫婦が顔を合わせれば、元々どちらからとは言えないがレスなもんだから、つい好子など煙たそうな表情が顔に出る、それだけで嵐が吹き荒れた。 男などというものは昨晩閨事が上手くいかなかったにしてもシナをつくり媚びを売る女房こそ可愛く映る。 それが好子には出来ないばかりか、いかにも外に男が出来ましたとばかりに家を空けるものだから、仲居の意のままに布団上げや風呂掃除をかけ持たされ済ませクタクタの幸吉は荒れた。 久美をして、男との閨が女に与える影響を、図らずも母の好子が手取り足取り教え込むがごとくだった。 これを嫌いひたすら二階の部屋に閉じこもって勉強に励む弟。 大学を出て家と縁を切りたいからであった。 我が家を顧みようとしない家族に囲まれ、必然 しばらくの間だけだが 毎日の家事は久美が受け持つことになる。 久美に言わせれば何もない中での食事つくり、酒を呑めば荒れ 家の中に嵐が過ぎ去ったような状態(ちゃぶ台返し)をやりまくる父の寝静まった後の片づけから掃除は、当てつけの当人が妻の好子だものだからすべて久美の仕事として回ってきた。 疲れ切っても 勉強する場所と言えば、いびきをかいて寝込む父の脇でちゃぶ台に向かって裸電球の下(当時の生保は定額電力 つまり20Wふたつ灯すまでしか許されなかった)、睡魔と闘いながら宿題をこなす程度が精一杯で、それ以上は神経が持たなかった。

通学が勉強の時間
 早朝から朝食の用意と弟とふたり分の弁当作りを終えて学校に向かうときには家の玄関先で友達ふたりがいつも待っていてくれ、その友達の背中を借りてわずか数分の通学時間だけが久美の安心しきって勉強に励める時間だった。 友達のうちのひとりの背中を借り、本を開いて読みふける久美。 一心不乱に本を読み記憶する久美。 前方に障害物がありはしないかと目を見張ってくれるひとりのめの友達、後方を守ってくれるもうひとりの友達に挟まれるようにしながら勉強した。 こんな方法で勉強しているにもかかわらず久美は常に主席に近かった。 先行するガリ勉のふたりと違い、久美の閃きに似た冴えは別格で、それが友達ふたりにとっては自慢だった。 そう、このふたりは他のグループに迎え入れてもらえない深い事情があり、久美はその程度のことでは頓着しなかったから友達になれたのだ。 そんな久美が休みの日になると母に頼むことがあった。 友達ふたり分の弁当がそれで、中にはたっぷり卵焼きを入れてくれと頼んだ。 毎日家事を担当する久美だが、卵焼きだけは味もさることながら、その形も母にはかなわなかったし、友達も久美の母の焼いてくれた卵焼きが楽しみで、弁当は久美が持ってきてくれるものと暗黙の了解があった。 好子は元来褒められると舞い上がるたち喜んで作ってくれたという。 だが、不思議なことに娘の久美個人のことになると冷たかった。 久美の分の卵焼きは作らなかったのである。 身内の女におべっかなど必要ないと考えていると、久美にもようやく漠然とだがわかり始めていた。 弟には何処からか手に入れてきた食べ物を与えても、久美に対してはそれは一切なかったばかりか、この2歳違いの弟が、あの好子が問題を起こした高校に合格した時には手放しで喜んで、授業参観にも出かけ世間に 「うちの子が・・・」 と吹聴して回っても久美が合格した時にはむしろ伏せる風にし、学業のためのお金はびた一文余分に出さず、卒業まで一度も授業参観・個人面談になぞ顔を出したこともなかった。

息子を溺愛する母
 幼少の頃、こんなことがあった。 例の、最初に夜逃げ同然大阪に逃げ込んだ家に後日呼ばれ、泊りがけで出かけ、ちょいとした用事で弟を連れ電車で数駅乗り継いで知り合いの男の家に向かって行き、ついでにデパートに立ち寄ろうとした折に それに気が付いた弟は、途中で勝手に引き返し一時期行方不明になってしまい警察を巻き込んで大騒ぎになった。 あの役所や学校で難癖発言もできなかった好子が血相を変えデパートの案内係に詰め寄り 「このろくでなしデパートは!」 と息巻き、挙句迷子の呼び出しをも頼んだのである。 デパート中にながれる 「迷子様のお呼び出しを致します・・・」 が響き渡る中、警察官を動員し、必死に探し回る母の好子。 結局見つからず帰りの電車内で憔悴しきった顔をする好子。 賢い弟は母親の行き先すべてがイヤで、途中から勝手に電車に乗って帰ってしまっていた。 目を離した自分の責任じゃないかと心配して単独、大阪中を探しまわり迷子になりかけた久美については 弟が親戚の家に帰りつき一件落着しても母の好子はまるで心配もせず、翌日になって疲れ果てて帰ってきた久美を逆に 「私が繋いでいた手を勝手に離し・・・」 と久美の得手勝手を叱ったという。 実際には家を出てしばらくは弟の手こそ母の好子はしっかり握りしめ歩いていたが、男の家が近づくと気が逸れてしまったのか放してしまい、それでも懸命に後を追おうとする弟だったがデパートの人ごみの中でとうとう迷子になり、馬鹿らしくなって帰ったしまっている。 つまり好子は女の久美と手を繋ごうなどとこの日も過去にも一度だってしたことはないのである。 デパートの込み合う中で迷子になるまいと必死になって手を握ろうとする久美を好子は無下に払いのけている。 この時は知り合いの手前体裁を保っただけであった。 弟3歳の頃の話であるから、久美は未だ5歳 十分心配に値すると思うのだが、母 好子はこの年の ましてや女の子に対して必要以上に冷たくあしらっている。 後年、この件に対し嘘かまことか問いただすと 「ほんまに賢い子やわ、最初に乗った駅から下車した駅、道順も 弟は覚えていたんやて」 と逆に 「一生懸命探してんのに、勝手にどこへやら行ってしもうてな」 と久美へこそ小言を言う始末だった。

サウンドが開いてくれたそれぞれの未通(おぼこ)
 昼休憩の弁当の時間、久美はオカズのない弁当を同級生の目の前で食べるのが恥ずかしく、自ら進んで放送部に入り、部室に鍵を掛け好きな音楽を流しながらそこで過ごした。 浅丘ルリ子が宣伝するサンスイやパイオニアがもてはやされたあの時代に久美は音楽に浸かって昼の時間を過ごした。 口が重かった久美も放送部に籍を置いたことで少しづつ人と話せるようになる。 その第一歩が仲良し3人組のひとりに舞い込んだ下級生からの激白の天使役である。 快い返事を代役として返す代わりに彼女のファンクラブを立ち上げることを提案するなど男が女を口説き堕とそうとするとき、どの程度真剣かを咄嗟ながら推し量ろうとする。 加えて暗に彼女はなよ腰である風を伝えてやっている。 躰を狙われてしかるべしというほどに友達のひとりは母と同様隙があったからだ。 そしてくれがひとつに自信につながるのである。 このころから久美はこの学校でも、その性格をいかんなく発揮した。 年一回の学芸会などがそれで、本格的な仮装行列のために何ヶ月も前から主役を決め練習させ、当時では敬遠されていた教師を悪役に巻き込む交渉までやってのけていて次第に主役争いまで巻き起こす伝統行事にまで発展させていった。 その教師だが久美は男が女を口説こうとしたとき・・・を利用、たまさか男性教師たるもの女子生徒に興味を抱かないものなどありえないだろうことに目を付け、無理やりオカマちゃんに仕立て上げている。 他の学級に比べイケイケ風な女の子が揃っていたから露骨な格好をさせられた教師に興味を抱き我も我もとなった。 脇役・主役はあっという間に埋まった。 それに加えファンクラブである。 目的の女の子が正面切ってこの日ばかりは男性に向かいアピールできるとあって押すな押すなの大盛況。 学芸会は前代未聞の盛り上がりを見せた。

魅せパンに大盛り上がり
 体育祭では女子が行うのは危険だと言われ廃止になっていた組体操も、他校から多数の応援団が見に来てくれるのだからと強引に復活させるなどした。 事実この時とばかりに男子生徒がわんさと押しかけてくることになる。 カメラでお気に入りのポーズを自由に撮らせてもらえたからだ。 それほどの活躍を見せた久美だが、唯一欠落した部分がある。 それが母好子の存在、女性の性のなんたるかで、この頃既に好子は家でその姿を見ることはほとんどなくなっていたのである。
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