知佳の美貌録「女将に仕込まれ」
食品の小売業に勤める内縁の夫というのは女将がかつて、客だったこの男を自室に連れ込みチンコ扱きしたことで、おまけに地元に勤め始めたばかりの流れの営業マンだったこともあって居座るようにいなったもので、男にしても女将のこの性癖はよく心得ていて良いほうだけ利用した。 内縁関係になった時にはすでにふたりのDNA主がわからない子供を抱えており、見た目にも話しにも男好きが顔に現れており、据え膳喰わぬはなんとやら誠心誠意勤めあげ気に入られ、その毎度複数の男を相手にしないと治まりがつかなくなる弱みに付け込んでの同棲だった。 商売下手な女将に代わってオンナを買うことを目的とした宴会を呼び込む、いわゆる置き屋の大女将(女将の実の母)と結託し枕芸者を送り込む宣伝を打つのも内縁の夫の大切な業務だったのだ。 小売業とは喫茶店やレストランにスナック・クラブなどを回り、品物の在庫管理、つまり補給をする仕事で、売り上げはあるものの どこもかしこも支払いが悪く経営は苦しかった。 それを補填し、あまつさえ何不自由なく小遣いまでくれるのが癒し温泉のエロ女将とあって不貞はさておき夫にとって不倫妻は重宝した。 件の朝も仲居がうまく立ち回り、客を女将の部屋に通してくれたところで女将が乗り込み、次の宴会もよろしくの如くお礼とお願いを込め帯を梳かせ・・・であった。 だからその様子を盗み見た内縁の夫は堂々とレジを開け、現金を鷲掴みにし仕事に出かけたのである。
淫液の片づけを頼まれるようになった久美
この女将に真っ先に仕込まれた風になってしまったこと。
それがマルサ用裏帳簿をつけることだった。
正当な商業科卒の久美ならでは、裏帳簿のつけ方など知るはずがない。
だが、旅館自体の経営は杜撰(ずさん)極まっていた。
例えば昨夜帰る時まで、その日の計算はぴたりと合っていた風に見えた。(実は違うのだが・・・)
ところが一夜明けて、その後の計算をそろばんで弾いてみると10万近く合わない。
女将に、例えば急な顧客につけウリをしなかったか聞いてみるが、所詮酔っていて「見当もつかない」という。
「10万も違うんです。警察呼んだ方が・・・」半分も言い終わらないうちに・・・
「うちの人がレジでごそごそしてたから持っていったんじゃない?それでいいのよ」簡単に言ってのけた。
「だからあんたが上手くやればいいと言ってるでしょう」
収支決算が合うように細工しなさいという。「そんなこと習っていません」口答えすると
「目と耳と口があれば・・・」これで終わりだった。細部のやり方はどこかで聞いて来いという。
こういわれて辞めますとは言えなかった。
それから毎日、旅館の中のあらゆる仕事を手伝いながらお金の流れを追った。
そうこうするうちに、旅館とは大雑把に計算し、多くの場合領収を発行しないやり方をしていることを知る。
皮算用で収支決算があってるように見せかけ・・・というのが主だった旅館業の古来のやり方だった。
客の払う金額に水増し料金を、久美が指示しつけさせた。
かつての旅館では宴が始まって最初のころだけ酒は一級剣菱や大関など灘の清酒を使うが、宴もたけなわになると地元の合成酒を「どうせ味なんかわかりゃしないんだから」と使う。 ケース(10本入り)買いするとサービスで5本付けてくれるような造り酒屋もあって〇〇の水より安い値段で入る。 双方ウインウインなのだ。 仲居や枕芸者は隙を伺い未だ手つかずの徳利を肴の空き皿などと共にコッソリ引き上げる。 これが後になって処理に困る、アルコール依存症の幸吉の好物燗冷ましになるのだが・・・そうやっておいて次々に酒の注文をかけ売り上げを上げるのだ。 いかにも正当な水増し料金で、久美は暗に仲居に向かいこれを指示した。 ツケが貯まった酒の小売店に向かってもよい顔ができるからだ。
女将がチンコ扱きをやる理由
宴会の幹事の中には隠し金を得たがる者もいる。 そのような輩は好色でもある。 女将は宴もたけなわになると密かに幹事を呼び寄せ空領収を切ってもよいかと問う。 金額は互い好きに後程入れればよいと念を押す。 その領収を手渡す際、自室を利用した。 チンコを扱かれ はなっから領収はいらないと言い出す輩もいるからだ。
領収がいらないといわれると、あとでこっそり領収を切り帳簿に載せた。
10万ごとき、なんでもなかった。
それでも聞くことは山ほどあった。朝のお見送りの準備でそれどころじゃないわよと言われ、送迎の様子を見ていると、なぜか女将は出てこない。
古参の仲居が怪しげに笑う「お客さんと女将の部屋で懇談中じゃない?」と
懇談中とは、気に入った客が泊まると翌朝、他の客を送り出した後自室に呼び込んで情事にふけるのが趣味という意味だった。
「終わったらあんたが片付けといてよね。あたしゃ汚くて嫌だから」仲居に言われた。
客が泊まらない日は仲居が掃除するという。その仲居曰く、汚れた下着と、洗濯済みのものがいっしょくたに山にしてあるという。
仕方なく客を送り出した後部屋に入ってみると、そこはゴミ屋敷だった。使用済みの情事の痕跡も放置されていた。こんなことがしょっちゅう続いた。
情事の客を送り出した後、てっきり収支決算が合わなかった10万を客から頂いたのかと思って、いつ手渡してくれるのか待ったが、なしのつぶてだった。仲居が言ったように本音で男目当て、互いの溜まりきったモノを吐き出し合うため、女将にとってむしろご利益、だからロハだったのだ。
レジからお金を持ち逃げする旦那も正式には結婚したわけじゃなく、今回の客のように宴会が引けてからねんごろになった客が居ついただけだと知った。内縁の夫だったが、女癖が悪く外で女を作ってレジからお金を引きだしては遊び歩いていた。
こんなことを続ける限り、旅館は傾く。
帳簿上は黒字で、実際は大赤字。
先代の女将が事業に精出す反面、我が子の教育はしてこなかった。仲居に任せた。そのやり方が今の女将を育てたと悔やんでいたが、誰から見てもそう見えた。エロに渾身傾けるともう身も心も上の空になり、到底酔い客相手の算盤が弾けなかったのである。
夕刻、客がそろそろ入るころなのに帳場は料理を仕込んでなどいなかった。
「板さん、もうそろそろお客さん来るころだと思うんだけど、どうするの?」
「業者が来たら始める。心配するな」
「遅くなってすみません」その業者が来た。
「おーい久美、手伝え」
「手伝えったって、調理師免許なんか持ってないよ」
「あほかお前は、俺がやったように皿に、それらしく業者が持ってきた食材を並べるだけだ」
こんな給料の安い旅館でまともに仕込みなんかする奴がいるかというのが帳場の考え、やり方だった。
金銭出納帳のつけ方から業者との取引の仕方など、裏の仕組みを女将に徹底的に仕込まれたが、男と女のやり取りも、実はこの頃から女将に仕込まれたといってよかった。
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