知佳の美貌録「雑魚寝の木賃宿」

共同企業体(ジョイント・ベンチャー、JV)が来る季節になると、男の来訪を待ちわび、自宅近くの物陰にひっそりと立つ人妻がいる。 彼女の目的は派遣されてくる、ある男との逢引きだ。 人妻を泣かせるほどだから大男かというと違う。 160センチにも満たない小男である。 彼の出身は南方系で体幹がしっかりし体毛が濃くて持ち物も不似合いなほど立派だった。 労務にしても180センチを超えるような男と肩を並べ立ち働く。 生来鍛え方が違うのだ。 その男が月に1度外出をする。 話し言葉が日本語のニュアンスと違うため仕事仲間でも滅多に口を利くものなどいない。 その寂しさを紛らすためひたすら散歩するのだという。 彼が件の妻と出逢ったのは初めてこの地に仕事に来て、物珍しさも手伝って売春街とは知らず路をどんどん突き進み、引き返せなくなって困っていた時だった。 疲れるとところかまわず座り込む癖がある男は、路地裏で座り込んでいるところを彼女に声をかけられ、甘酸っぱい香りに誘われ、根が精力に満ちていたため助け起こされた折力ずくで抱きしめてしまい介護を受ける側が介護するがごとく口説き堕とす羽目(ハメ)になったという。 そうはいっても終始人妻の希望に沿ってコトを進めたという。 微熱は愛を伝える武器として役に立つ。 純真な彼に夢中になってくれた人妻。 彼曰く逢瀬が、互いの味が忘れられず年に1度逢うんだといった。 男はこの日の為に宿に置かれていたエロ本を見てマグマを溜め、勃つと色艶をよくするため磨き上げ、ヌカずその日に備え瞑目する。 待ち合わせの日にちや時刻は阿吽の呼吸、決まっている。 企業の年度計画は半年近く前に発表される。 共同企業体(ジョイント・ベンチャー、JV)はそれに合わせ人集めをする。 彼女は企業の常勤下請けの人たちから情報を得て例の場所で待つ。 企業体が雇い人に給料を支払うその日の夕刻、コツコツと貯めたお金を懐にまっしぐらに人妻の待つ場所に男はイキリ勃つモノをなだめすかしつつ向かう。 待ち合わせの場所は毎年少し違うがおおむね決めていた。 誰にも知られることなく逢瀬を楽しむためである。 手を引かれその日部屋となるオンナが探してきた場所に通される 下手な所作はいらない、いきなり溜まりきったアソコを魅せ合い興奮に任せ貪り合う。 男にしてみればお相手の彼女は不貞を働くけしからぬ輩、家に残してきた妻とダブり淫売に思え寝取りを想わせてくれる。 オンナにしてみれば1年ぶりに味わえる牝への飢えでマグマが溜まり地団太を踏む可哀想な牡、焦がれて待ち続けた夫以外の先太で左曲がりの充血し黒光りするモノへの熟妻のサカリ 我を忘れ身を焦がした。 不貞ゆえ野良のような場所で満足のその先までも突っ込み突っ込まれ、時間の限り奥を掻き回しハリを掴み味わう。 夫には無いオンナをいたわるやさしさは人妻をして夢中にさせた。 男は家にいるとき始終妻を抱きたがり、子宝が増え、食うに困るからと出稼ぎに追いやられたようだった。 捨てる神あれば拾う神あり、逢瀬を繰り返す人妻は彼の絶倫ぶりこそが危険と隣り合わせ故かことのほかよかったようである。 彼にしても同じことがいえた。 彼女の奥は浅く狭く、彼程度の大きさで十分圧を感じられ先っぽが危険地帯に悠々届いたからで、根元まで挿し込んだまま奥の何かを掻き出す動きまで、かつて水で買った女狐の時と違い楽にできた。 恋心を他人の妻に伝えることが出来たのである。 婚外恋愛ゆえに双方とも織姫と彦星、次逢えるという保証はないゆえ燃え尽きるまで求め合い、男は懐に入れてきたお金のすべてを渡し、翌年の決して違わぬ約束をさせて立ち去る。 このようなことが毎年繰り返されていた。 だからその男は、ひところの勢いは失せつつあったものの今年も来ていた。
流れ職人からのプロポーズ
業者専門 雑魚寝の木賃宿というのがある。
旅館業が成り立たなくなると部屋ごと賄い付きで業者に貸し出す。
泊まる人たちは万年床で起きると枕元に布団を敷いた状態のまま折り曲げ畳んだ風にする、いわば雑魚寝をきめていて、洗濯は数台の2層式洗濯機が半ば屋外に置いてあり、パンツだろうが作業服だろうが、時には地下足袋まで一緒くたに洗濯機にぶち込み自前で洗い、外に干すというのが決まりで、雨が降ってきたとき、気を利かせて取り込んでくれる場合もあるが、下手すると・・・であった。
好子が下宿生相手にやっていた宿よりややサービスでは劣るが、その分飯はよく宿代も安かった。
大工事に入る共同企業体(ジョイント・ベンチャー、JV)は本雇の従業員の代わりに流れの職人を使った。 労働三法(医療保険・労働災害・厚生年金)の掛け金が必要ないからだ。 労務者側から言わせればそれだけ給金が本雇より高いからだ。
彼らの寝起きに、この賄い付き木賃宿を 下請け会社の個々の事由によりけりだが 使った。
久美が務める旅館も、規模が小さく経営状態も悪かったことから一部の部屋を木賃宿にした。
女将と役人が真昼間からおりなす情交のように用意や後片付けなどの人出が不要だったからだ。 おまけにほおっておいても常時お金を生んでくれる。 悪い点と言えば、以下のような人が泊まるため、彼らが来なくても恐れをなし一般客の足が遠のくことにあった。
職人の中には立派な資格を持つものから、その日暮らしとかムショあがりまで混じっていて、風呂上りなど平気で紋々を晒したまま部屋中を歩き周る。 現場が現場だけに仕事が終わり部屋に引き上げてくると四六時中荒くれ声がこだまする。 そうして工事が終わる2~3ヶ月後には全国に次の仕事を求めて散っていく。
メットに入れた1本線・2本線が彼らの現場での階級、大層なお金を払って御大臣様といわしめる、宴会と女将やコンパニオンの身体目的の男達より久美は流れ職人と気が合った。
普通なら部屋の掃除や洗濯は自前で行わなければならないところを、久美は気の合う職人の部屋の掃除や布団干しを余った時間を利用して友達としてやってあげていた。
そのかわりに空いた時間はおしゃべりに付き合わせた。
外の世界を知らない久美にとって、職人の話す珍しい話が大好きだった。
生まれは確かに地元だが、育った地がほぼ京阪神の久美は地元の人と話しが合わない。 それを埋めてほしくてだった。
共同企業体(ジョイント・ベンチャー、JV)が利用する賄い付きとは朝食と夕食の一日2食だけ旅館が出す。(中には簡易な弁当を用意してくれる宿もあるが)
写真のようにテーブルに最初から食事が並べられていて、各々勝手にご飯をよそおって食べるという方式だが、久美は彼らのお茶のサービスからご飯のお変わりまでやってあげた。
旅館からは煙たがられたが職人は喜び、自然とアイドルになっていった。
久美が賄うと気をよくした職人たちは、本来外で飲むビールやお酒を久美に注文し、注いでもらって飲んだ。
その分だけ売り上げが上がったが、旅館側は渋い顔をする。 これが当たり前と思われたくなかったからだ。 だがお金を払わなければならない客が喜んだ。
そんな客の中に久美より一回り年上の上級技術屋さんがいた。
その人とは特に気が合った。 話題が豊富なのは彼が大学の理工学部卒だからだと、夢中になって話してる間に気づかされた。
明日は帰るという日、久美はその上級技術屋さんに旅館の裏に呼び出された。
超有名大学理工学部卒の技術職さんからのプロポーズ、ただただあっけにとられた。
久美も密かに心を寄せていた。
だが、明日帰るという日まで彼はひとことも久美に対する気持ちを言葉にしてくれなかった。
帰るとき、一緒に来てくれないかと言われた。
「わたし、子供がいるんです」
「えっ、若く見えたからてっきり独身かと・・・ そうか」
そのあと、一言も言葉を交わすことなく男は帰って行った。
彼はその後、どんなに待ってもこの旅館に泊まりに来てくれなかった。
子供さえいなかったら夫を捨て、一緒に行きたかったと後に久美は語ったほど気の合う人だったという。
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