知佳の美貌録「生保外交員」
♪ 日生のおばちゃん自転車で・・・ ♪ 来て、しつこく言い寄られ高額の保険に加入してしまった男性はこの時代多かったように思います。 そう、この時代生保に関する何らかの事故が起こると保証金は前例により勝手に振り込まれました。 正当な事由なら裁判を行い判決が出たとすれば3倍近く払われたでしょうに・・・ 一般の人にとってあまりにも高額なため金銭感覚がマヒし、その額が実は規定に沿わない少ない額だとは誰も気づきませんでした。 もしこれに異論を唱え裁判に持ち込んだとしても判決まで数年かかり、下手すれば負けることもあります。 だによって、余剰金がプールされ ♪ 日生のおばちゃん・・・♪ が自転車できて稼ぎに稼いだんです。 御殿が建つほどに。
失業給付金
久美が務めた会社で業績不振になったとか倒産しなかったのは数社しかない。
そのひとつが明治生命だった。
それまで務めていた旅館は、乱脈故に経営が立ち行かなくなり一時閉鎖になり、職安に出入りしていて拾ってもらったのが明治生命。 商業科と、殊に旅館での接客の腕(つまり男性に言い寄る商売)を乞われ生保レディーになった。
コンパニオンや旅館に勤めて、その勤務条件の悪さに辟易していた久美であったが、生保レディーはなるほど旅館で培った接客にどこか似ていた。 入る条件として家庭を守っていく必要性を提示した。
保育園児を抱えていること。
その子の送り迎えと子育てのため残業無しを約束すること。
自転車しか乗れないので、場合によっては送迎をお願いする旨の条件をだし、所長の了解を得た。
当時の生保レディーは、売れればどんな商品でも口車で売ってよいを定説としていた。
新卒者に数千万円の生保を、文字通り自転車に乗ったおばちゃんが舞い降り掛けさせるなどということを平気でやっていた。 当然払えるはずもないが持ち前のエロさとしつこさで口説き堕とす。 一度目を付けたら、まるで彼氏ができたかの如く周囲の生保レディーに言いふらし、独占権を得る。 そうやっておいてとことん迫り加入だけはさせていた。 そのあたりが個々の腕によるものが大きかった。 払いが滞ると払戻金の中から天引きで落とす手法を用いていた。
家計簿応援団
訪販業者が個別リストをタライ回しにしていることは先にも述べた。 生保レディーも同じような方式を用い顧客訪問をする。 各家庭の構成人数や年齢層を調べ上げ、例えば高校入学を控えている場合学資保険を進めるなどなどリストさえあれば金弦に事欠かなかった。 久美はそれらのリストに頼らず1軒1軒訪問した。 訪問し何をするのかと思いきや家計簿について話しを進めるのである。
話しの中でさりげなく保険の話しを織り交ぜ、すべての保険証を開示させ、その中で♪日生のおばちゃん・・・♪の あの法外な生保などを見つけると無駄であることを懇々と説明した。 保険会社は日生でも良いが生計と釣り合いがとれ、かつ、保証が充実している保険に切り替えるよう諭すのである。 学寮に住まってるとはいえエロで堕とされ高額保険に加入させられたりすれば家族はたまったもんじゃない。 久美はそれが無駄であることを訪問先でこんこんと説明し、それまでに入っていた保険を整理統合させたりした。
つまり生保レディーの敵になった。
バブルがはじけ、加入したものの払えない顧客が増え、苦情も多くなってきていたからだ。
久美のやり方は、この時代にマッチしたやり方だった。
生保レディーは通常、つてを頼って訪問する。 入社すると最初に回らされるのが近親者、次がそれらからの紹介者、つまり遠縁だ。 そうやって全てを食いつぶすと、その女性は行き場を失い業績が落ち込み退職となる。 だが、リストは残るのだ。 それを百戦錬磨のおばちゃんたちが狙う。
一軒一軒回っていても効率が悪いばかりか、生保だとかおばちゃんと察すると玄関を開けてもらえないのが常だからだ。
ところが久美は、この効率が悪い方法をあえてやった。 近親者には一切手を付けなかった。
他の会社の外交員が出入りしている家に、何度も粘って訪問し入り込んで保険証を全てチャックさせてもらう。
その上で無駄な保険を整理し、目的・効率の良い掛け方に変えるよう提案してみた。
その保険会社が他社であっても、保険金額に対する補償が良ければその会社の保険を整理しかけ替えを勧めた。
苦労して家に入れてもらって、一銭にもならない相談や計算を何時間もかけて行う。
そうやって信頼を得た。
久美に、家のことを何でも相談してくれるようになっていった。
支所長のお墨付き
新規の顧客は増えないものの、相談に来てほしいという依頼は徐々に増えた。
それらを順次、どんなに遠くても、基本 自転車とバスで回った。
どうしようもない時だけ、所長に頼み込んで車で送ってもらった。
先輩が契約を取ってきた顧客の金額を無駄だと下げ、他社の保険に乗り換えさせる。
送迎を所長にさせるなどということが会社内での悪評を買った。
生保レディーがこぞって焦がれる所長を何処に行くにも独り占め。
例えば、
客宅を訪問中、子供の保育園のお迎え時間になると所長に電話を入れて車を久美の元に回させ、園児を迎えたその足で自宅に送らせるなどということが常態化したからである。
聞こえよがしに班長に向かって言いつけるものがいたが、久美は採用条件が自転車しか乗れないから園児の送迎と客宅への送迎を頼むと最初に言ってあると公言してやまなかった。
喫茶に行くにも所長同伴で支払いもむろん所長持ち。 これを僻み嫌味を言うものまで現れたが「自腹だから」飲みたきゃ自分で勝手にいけばいいと所長はいうだけで、何を言われても一切誘おうとしなかった。
この、生保レディー期間中に2番目の子供を宿してる。 親族に望まれなかった子を宿してる。
所長に乞われ産前産後は各1ヶ月休んだだけで職場復帰した。
ふたりの子供の保育園への送迎から子守りまで所長の役目となった。
久美を出先に迎えに行き、ふたつの園を回って子供たちを連れて会社に戻り、所長が子供たちをあやしている間に再び久美は外交に回る日々が続いた。
2番目に生まれた子供は所長の顔にそっくりだと、会社で陰口をたたくものが現れた。
机の上になぜか所長の写真を飾っている女がいて、それが噂の発信源だったようだ。
浮気してできた子供ではないかと疑ったのだ。
久美は思い出した。
旅館に勤めていたころ、出張できていた男性に告白されたこと。
同じく出入りの業者の男性に気に入られ、事あるごとに奢ってもらったこと。 だが彼らと狭い空間で共に過ごしたことなど無いが所長は違った。
自分では気が付かないうちに、職場内で変な噂が立ったり男性から言い寄られたりし始めていて、所長がその最たる人物だったのである。
働きづめに働き、車で送ってもらうときなど睡魔に襲われつい、ウトウトし何故か所長に抱かれ眠りこけているような気がしたことも一度や二度ではなかった。
疑われても仕方ない状況下での妊娠だった。
- 関連記事
-
-
知佳の美貌録「なけなしの5千円を握りしめ」 2021/11/03
-
知佳の美貌録「生保外交員」 2021/11/02
-
知佳の美貌録「子供会の副会長」 2021/11/01
-
テーマ : 女衒の家に生まれ・・・ 高原ホテル
ジャンル : アダルト
その他連絡事項
- 官能小説『知佳の美貌録「お泊まりデート」 彼のマンションから朝帰りする久美の次女瑠美』
- 小説『残照 序章』
- 小説『残照』
- 官能小説『ひそかに心を寄せる茶店の女店主』
- 官能小説『父親の面影を追い求め』
- 掘割の畔に棲む女

- 残照
- 老いらくの恋
- ヒトツバタゴの咲く島で