知佳の美貌録「オンナの結婚感」

好子が幸吉と別れる決心をしたのはムショからシャバに出て方々亭主と子供たち、殊に亭主の住まう先を捜し歩き、疲れ果て家に辿り着いた時だった。 真っ先に好子の姿を見つけた久美が駆け寄ってきてこう述べた。 「アッ お母さん。 お母さんがいない間、変なおばさんが訪ねてきたよ」 何処に行ってたかを聞かないで続いてこうも言った。 「その人お母さんに子供たちのことお願いと言われて来たって言ってたよ」 と。 そして 「あのおばさん、ろくに家の手伝いもしないの。 それなのに・・・食べ物なくて弟が腹を空かせて泣くのに、そのおばさん食べ物を弟にやらないで独りで食べちゃうんだ」 お父さんに言いつけて追い出してもらったと。
ひとつ屋根の下で暮らす幸吉とムショ帰りのオンナ
ムショに入るまでの好子は、悪いことと知りつつ生活の為、夫幸吉のために美人局をやった。 男どもに散々躰を弄り回され、それを夫の幸吉が見つけ出してくれ強請ってくれ、それで生活の糧を得ていた。 幸吉は楽して酒代や博打代を得られるものだから婚活詐欺のような美人局を止めようとしなかった。 確かに金は稼げたが夫は妻を、まるで汚いものを見るような目で見て、役立たないのは酒のせい疲れのせいにして触ろうとしなくなった。 そうしてるうちに捕まりムショに入れられた。 確かにムショで久美の言う女と好子は一時同房だったが、それは嫌疑が固まるまでの間で子供たちのことを頼んだ覚えはない。 それなのにシャバに出て散々亭主の居所を探し回り、住まいに帰り着いてみれば先ほどまで、一時だけ同房だった女と亭主はひとつ屋根の下で仲良く酒を酌み交わし子供を邪魔者扱いにしつつ住まってたというではないか。 ひとつ部屋で床を並べて男盛りの夫と、やっとムショからシャバに出てきた女が寝たらどんなことが起こるか、オンナ盛りになり男の良さを知ってのち美人局までやらされ男に転がされ続けた好子にとってすぐにソレとわかった。 妻という名の女であっても子供を産ませると程なく男というものは抱き飽きるらしく、おまけに他人棒を散々咥えこんでいてムショ入りまでした。 厄介払いとしてのムショ入りは、最初こそ戸惑ったが、こうなるとむしろ幸吉にとって都合がよかった。 降ってわいたように己自身手を付けていないオンナが現れ一緒に住まわせてくれというではないか。 女はムショでの窶れ(やつれ)が目立ったがオトコを見る目はギラついていた。 好子から幸吉は独り身で好子の出所を待ってると聞かされるに及び当面行き先に困ってたこともあって、これ幸いにと乗り込んできたのだろう。 幸吉もムショ帰りと知っても追い返すような野暮な真似はしなかった。 オンナ日照りは図星だった。 初物のほうが新鮮味があって抱き心地が良かったのだろう。 好子がムショを出ると聞かされた、その直前まで女を家に上げて何事もないような顔して暮らしていた。 あれほど頭がキレる男なら、オンナの言い分が支離滅裂なことぐらい見抜けない筈はない。 いよいよ食べるものに事欠き、困った挙句の久美の怒りに、何度か抵抗を試みたものの次第にオンナにも飽きがきて追い出しただけではなかったろうかと。 子供が寝静まった深夜、それとなく幸吉を問い詰めたところ暴力に及んだため子供ふたりを連れ実家に向かって夜逃げした。 自分にではなく、どこの誰ともつかない女に散々入れあげた亭主を好子は許すことができなかった。 実家近くに帰っても穴に隠れ潜んだのは追手の幸吉から逃れるためだった。 そうやって隠れ潜んでるうちに仲間が見つけてくれた。 丁度その頃ノコノコ幸吉が姿を現したので女衒に頼み とっつ構えてもらい離婚状にサインさせた。 ムショ帰りでオトコ日照りだったはずなのに好子は幸吉という男を、浮気を許せず この時一度追放している。 自分では浮気をした元亭主に離婚という二文字を突きつけ一泡吹かせたつもりだったろうが、実のところ逆に己こそよその女と旦那が絡み合う妄想で気が狂わんばかりだったのだ。 己は数々の男相手に操を捧げてきたくせに、いざ亭主を寝取られてみると正気じゃいられなくなった、身勝手な女だったのだ。
再婚
女衒亭で暮らすうちにシャバに出た時の、あの窶れ(やつれ)は次第に癒えた。 癒えてくるとまたぞろ好子の中のオンナが芽生え始めた。 表向きは、昼間は平気でも夕刻となると妙に各家々の様子が気になった。 明かりが消されると夫婦生活が始まる。 そんなことばかり考えるようになっていった。 無一文で大阪に追放された幸吉も、いよいよ食い扶持に困り時折実家に身を寄せるようになって、離婚状にサインさせられたことが余程悔しかったのだろう、好子の前に姿を現すようになっていた。 好子が、それこそとってつけたように借家を探し始めたのはふたりの子供たちのためだけではなかった。 この幸吉という男との閨が急ぎ欲しくなったからだった。 ほんの少し顔を知ってるだけのムショ上がりのオンナに亭主を寝取られた。 その悔しさを好子は忘れていなかった。 オトコもオンナもネトラレを覗き見などということをやらかし、性欲を高めようとする性癖を持つものまでいるが、好子の奥に渦巻くものが正にソレだった。 亭主とムショ帰りのオンナの肌が重なり欲情に縺れ合う、思い出すたび躰の奥底に火がついた。 月のモノが始まったわけではないのに躰が火照ってイラついて眠れない、そうこうしているうちに見つけてきた、あの学生の下宿に使った借家の部屋で好子は、未だ子供たちを女衒亭に置いたままだというのに自分から誘うようにして襟を開けて魅せ、腕が回されるとその幸吉の手を核心に触れさせるように仕向け、その先に進むようにと急かさせるなど逢瀬を重ねるようになる。 子まで生した男の肌が好子にとってこの歳になると心地良いところに響くのか夢中になってすがっていた。 「子供たちにとって、将来父親の存在は大切だから」 幸吉の押しに負け、ズルズルと関係を深めていき、子供の為などとのたまい、女衒の反対を押し切って好子自ら婚姻届けにサインして幸吉と再び夫婦になっている。
女の結婚感
女が結婚したくなる十代のころは見栄えをも大切だが心の清らかさを最も大切にする。 それが歳を重ねると清らかさという部分は見た目だけになり中身は身分と金銭の欲に変わる。 将来どれだけ安泰でいられるかに重点が置かれる。 恋から愛に変わり肉体関係を持つのが当たり前になると欲だけ追及するようになる。 中身が透けて見えるからだ。 恋心などとの賜っていた時のような清らかさを追い求める気持ちなど、もうそこには無い。 多少不細工でも将来性さえ見込めれば簡単に躰を預け、それを担保に結婚しようとする。 売れ時に売っておかないとと焦りも芽生えるからだろう。 そうして熟女と呼ばれる頃になると好子のごとくそこに単なる肉欲が加わってくる。 一時我を忘れ微熱を注ぐなどし、極上の快楽を味わわせてくれた男に、生涯かけて付き従おうとする。 つまりそれは、己の中身を計り知られてしまうと美麗などという自信をほぼ喪失させてしまい、もしもここで蹴落とされでもしたらと思い込んでしまうからであろうか。 ともかく女の恐ろしさ それは少女から女性へ、そしてオンナになるころには生まれ持った清らかさなどどこにも残らないということかもしれない。 腐れ縁というのは、つまり好子は発情したソコに入れてもらいさえすれば誰でも良いほどに飢えが始まっていた。 そう思えるのは店賃を工面する算段ができていなかったにもかかわらず幸吉を胎内に誘ったからである。 狂おしいほどに燃えてしまったオンナを相手に、孕ませたときのように後先考えず早く、完膚なきまでにヤッてくれたのが性癖を知り尽くしていた幸吉だったのである。
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