男たちの元を転々と渡り歩くリスカの少女

純一の住む蕎麦屋が経営するマンションの3階の部屋のドアがけたたましくノックされたのは、新聞配達のおじさんがお隣さんのポストに新聞を投げ込んで立ち去って間もなくの午前5時を少し回った頃だったように思えた。
出逢い系で知り合い、懸命になって誘ってやっと関係が持てた典子のことが頭から離れず、悶々とするうちに朝を迎え 明け方になってわずかに寝入るのが日課になっていた。
それだけに、新聞配達の元気な足音と何の屈託も手加減もないポストへの投げ込みに毎朝眠りを妨げられ、どうしたものかと思っていた矢先で、ノックがその典子ではないかと勢い良く開けたのも覚えている。
だが、そこに立っていたのは見も知らぬ少女だった。
屈託のない笑顔を寝ぼけ眼の純一に向けてきてはいるが、目の奥には それとは裏腹に悲壮感がみなぎっていた。
「誰だっけ? 部屋間違えてない?」
少女はドアを開けたこう聞いた途端、純一を押しのけるようにしながら無言で入ってきた。
玄関土間から床までの高さが10センチにも満たないから無理からぬことではあるが、
玄関は土間で床はフローリング、廊下と誰でも見間違えようのない場所に土足のまま入り込んでソファーに片足を投げ出し
- つまり片足は普通に床に垂らし、もう一方の足はソファー上に横に伸ばす開脚風な座り方 -
座り携帯をいじり始めたのだ。
次から次へと誰かの連絡先を検索しているようだったが、それも数分で諦めるとその格好のまま寝入り始めた。
純一の会社は8時出勤と比較的早いが、マンションの窓から会社が見えていて歩いても会社まで1~2分しかかからない。
いくら早起きだといっても早朝の5時である、単身赴任なればこそ朝食などと言う気の利いたものは摂らない。
まだ起きる時間には早すぎる。
ソファーで寝る少女に、純一は掛けて寝ていた毛布を持って行きそっと掛けてやり、自身は掛布団だけで再び横になった・・・。
次に目が覚めたのは7時過ぎだろうか、かけておいた目覚ましの けたたましい音でだった。
知らぬ間に熟睡していたんだろう、シーツも汗びっしょり掻いて身体の形そのままに染みついていた。
布団を座椅子の背に、乾かすつもりで掛けてから何気なくキッチン兼居間を覗くと、玄関から点々と泥がソファーまで続き・・・だが 部屋中どこを見回しても誰もいなかった。
ただ玄関の鍵だけ開いていた。
連日の過密スケジュールに加え典子のことが頭から離れず寝不足が続いて ぼんやりしていたこともあり、女の子を早朝に招き入れたことなどすっかり忘れて寝込んでしまっていた。
足跡を見て思い出したのはいいが、その玄関から ましてやソファーは典子との大切な思い出の場所、それが得体のしれない泥で汚され敷いてある絨毯まで汚れている。
もしも典子が訪ねてきたら・・・
考えた瞬間、身体が先に反応していた。
ソファーの下に敷いていた絨毯を風呂場に持ち込んで時間を気にしながら懸命に洗った。洗い終えるとベランダに引きずり出して天日で乾かそうとした。
どうせ床は泥で汚れている。
風呂場からベランダまで洗った絨毯を引きづったものだから垂れる滴がフロアーを汚したが、ぞうきん掛けするにはちょうど良いと思って懸命に拭いた。
必死で立ち働き、なんとか出勤に間に合う時間には掃除が終わってその日は普通どうりに出勤した。
会社に向かいながら、その部屋は会社借り上げの部屋だと聞いていたことを思い出した。
それなら納得がいく。
以前誰かが住んでいた時も彼女らのような人たちが頻繁に遠慮寄尺なく出入りする部屋ではなかったかと。
勤務が始まると、いつものように忙しさに忙殺され 典子以外のことはすっかり忘れて働き、帰宅時間になってようやく今朝のことが気になり始めた。
狐につままれたような気持ちでその日の勤務を終え帰宅した。
ベランダに出しておいた絨毯は案の定、生乾きの状態だったが 部屋に持ち込んでもさほど重くもなく床を濡らすこともなく、思いつくまま丸めて壁際に立てかけ エアコンの除湿機能で乾かそうとした。
乾かなければ、明日天気が良ければ再び出しておけばと気楽に考えていた。
朝は掃除で忙しく、それ以外の場所は点検する余裕もなく出勤したが 帰宅し改めていろんな場所を調べてみた。が、何か無くなっているとかはなかった。
冷蔵庫の中の食べ物は昨日と同じようにちゃんとあるし、第一机の引き出しに入れているお金も盗られていない。
唯一出勤前と違うところがあった。
それは鍵である。会社借り上げの部屋に間に合わせの家具・・・泥棒が入るにはまことに気の毒な何も無い部屋の事、玄関わきの郵便受けに常時スペアー・キーを入れておいた。
典子が来てくれた時、自由に出入りできるように、彼女のお気に入りの部屋になりますようにと ちゃんと帰り際に教え、その日からそれを続けていた。
期待に反し、ヒトトキを過ごしてくれた典子は二度と訪問してはくれなかったが・・・
この日帰ってみると玄関ドアが開いたままになっていて郵便受けのスペアー・キーは無くなっていた。
わくわくドキドキしながら部屋に入ってみたが典子どころか誰もいなかった。
だが、誰かが入った証拠に かすかに煙草のい臭いがした。典子は煙草は吸わない。
仕方なく、翌日の仕事帰りに近所でスペアのキーを作って郵便受けに入れておいたが、これはもうなくなることはなかった。
それでも部屋は相変わらず誰かが使った形跡があった。
殊に布団はほんのわずかだが温もりが残り微香がした。
こんなことが1週間から10日ぐらい続いた。
出勤後、誰かが部屋に入り用事を済ませて出て行ったらしい
スペアー・キーが無くなって3日目ぐらいから浴室を使った形跡と、使い終わった後のタオルが洗濯機の中に放り込んであるようになった。
1週間目ぐらいになって、洗濯物の中に女性の下着や服が混じるようになってその形状から初めて典子ではなく、あの得体のしれない女の子が留守中に来ていることが分かった。
彼女と二度目に顔を合わせたのは勤務の都合で急遽泊りがけの出張となり、大急ぎで荷物を取りに部屋に帰ったときのこと。
いつものように玄関が開けっ放しになっており、その日だけは部屋に人の気配がした。
入ってみて驚いた。
女の子は入浴を終え、ソファーに座ってまるで自宅でくつろぐように買ってきた食事をとりながらテレビを見ていた。
普通と違うところと言えば風呂上がりだというのに手首には包帯が巻かれていたこと。バスタオルを身体に巻いているが、服は着ておらず無防備状態だった。
綺麗な素肌の太腿の内側に何か描かれていたこと。
よく見るとずいぶん肌や殊に髪がまるで鋭利な刃物で削ぎ落したかの如く傷んでいたこと。
結局女の子が何が目的でこの部屋に出入りしたかという点について自分からは聞かずじまいだったが、全体的な雰囲気から体調不良を癒すためこの場所に出入りしていることを自分から語り始めてくれ知った。
今は大丈夫かという問いに
応えてくれたのが知り合いの男の家に泊まりに行ってる。
今日も間もなくそちらに出かけるから迷惑かけないといった。
その行先を聞いて驚いた。
それは純一がこれから出張で出かける場所、車でもゆうに2時間半以上かかる その更にずっと先だった。
そこにいる男から呼び出されたからこれから向かうんだといった。
太腿の内側に入れていたのは文字とかきれいな絵柄ではなく、虐待された折にできる傷跡をわざわざ彫って描きこんでいて、これが今回呼び出してくれる男の趣味だといった。
これ(虐待の傷に興奮の意)を見たとき、初めて男として役に立つんだと聴いて 自分から名乗り出て誰もが敬遠する痣(ある意味タトー)を入れたんだとこの子は言った。
男が身体から離れた後、淋しくなって手首を切るんだと。
なるほど包帯をほどいて見せてくれた手首には幾筋もの剃刀の痕が残っていた。
それ(自傷行為と虐待の傷)がどうしても必要だからやってくれる女の子のお前を呼び出すんだと彼が言ったらしい。
最初この部屋に入ろうと思ったのは典子を連れ込んだ日にこの部屋に泊まりたくて近くまで来ていたが、お呼びじゃないとわかって野宿したといった。
早朝、この部屋のドアをノックしたのは男(タトー男とは別の)に遊ばれ放置された場所が近かったし、寝かしてくれないほど犯され続けたから疲れ切っていて次の男を探しきれなくて来てしまったと謝ってきた。
疲れていて気が付かなかったけど土禁だったんだと、翌日気が付いたとも口にし謝って来た。
どう歳を誤魔化しても15歳に満たない娘に謝られてしまってバツの悪さに慌てた。
家に居れなく男たちの部屋を利用し為されるがままの代償に寝泊まりさせてもらうを繰り返す風にみえる。
「遠慮なくここで寝泊まりすればいいよ」と言ってみたが、それらの謝罪を言いおいて、その子は目の前で着替えを済ますと虐待男と出逢うため部屋を後にした。
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