知佳の美貌録「高原から海底に向かって駆け下った男」
元々彼は とある地方の銀行員でした。
自分の性格・才覚が銀行のような貸金業者に似合わないと感じ、仕事に情熱が見いだせなくなって退職を決意しました。
時を同じくして結婚するも家庭を支えるための収入を絶たれ、考えた挙句預貯金を崩し株に手を出すんですが失敗しました。
銀行員の時代、職業柄散々株取引を行っており、絶対間違いないと踏んだ株が大暴落の憂き目を見たのです。
誘い掛けてくれたのが元同僚だったこともあり、罠にはめられた感が否めなかったのですが、すべて自分の蒔いた種と諦めたといいます。
なぜならば、後に述べますが、既にこの時奥さんから三下り半を突きつけられていたからです。
銀行員も中途退職であるだけに退職金など雀の涙、年金に至っては望むべくもなく、結局彼は退職金も貯蓄もすべて妻に差し出し、この借金を背負って家を出ました。
幸いなことに奥さんの家に婿養子で入ったこともあり、妻と子は妻方の実家に帰し単身高原ホテルに住まって職に当たったのです。
それがおおよそ久美さんと時を同じくしてでした。
つまり会計事務所は彼だけ高原ホテルに派遣しても破産の後始末が出来そうにないとみてサポートというより二枚看板に久美さんを送ってよこしたのです。
双方合意を得て初めて、過去の例をみない支配人職が決定・誕生したようでした。(過去に昼間だけ責任者はいましたが・・・)
彼の生活はつつましやかでした。 1ヵ月~3ヶ月に1度程度休みを取って子供の元を訪れるのが彼の唯一の楽しみで、それ以外は職場に詰める。 それほど職務に勤勉だったのです。
昼間はホテル内を見て回るか宣伝・顧客獲得のための営業回りや銀行・業者への支払い金の受領のためオーナー宅に出向きました。
それ以外の時間はホテルの小さな事務所に詰めるか、事務所の隣の元は資材置き場だったところを改良し当直室兼支配人室にした部屋に詰めていました。
彼の趣味と言えば以前はささやかな小遣いの中からパチンコに注ぎ込む程度だったのですが、借金がかさみそれも止めていて、稼いだお金の借金以外のほぼ全てを奥さんに送金していました。
そんな中で起こったのが「甘い罠」事件だったのです。
当時既に奥さんの浮いた噂はかつての職場仲間からのまた聞きで耳にしており、彼もまた若かったこともあって寝取られ感に苛まされており情事のお誘いを断れなかったからだろうと思います。
家に帰っても、そこは妻方が仕切る借家であり、子供に逢いに来たというからには夜の性活をお願いするわけにもいかず我慢し去ったのだと思います。
身勝手なもので奥さんは自分のことは棚に上げ激怒し、調停離婚の訴状を送り付けられるに至りそのまま離婚となったのです。
その奥さんは裕福な家に生まれ、働きに出た経験はありません。
生まれが生まれだけに生活は派手で、支配人は借金したとはいえ小遣いもないまま懸命に働いて家にそのすべてをつぎ込んだのですが、奥さんはそれでは良しとせず実家からも相当仕送りを受けていたといいます。
遊びもその分派手だったようでした。
ある時など、旦那に悪口雑言飛ばした後、己は着飾って仲間数人と遊びに出かけたといいます。
家を空け始めてからというもの浮いた噂もそれなりにあったので、むしろ彼のやらかした間違いは渡りに船であったのかもしれません。
だから彼は離婚の申し出に印を捺すことを躊躇するようなことはしなかったようです。
唯一の希望が子供に逢うことだったのですが、それも最初の1回だけ許されたものの、それから先は電話にも出てくれないようになったと言います。
その1回も、冬 高原ホテルに呼んでスキーを熱心に教えていたと言いますから良い父親と周囲も見ていたようですが、それが余計なお世話と映ったようなんです。
彼の感心すべきところは、それでも養育費として何がしかのお金は送り続けている点でしょうか。
元妻も当然のごとくこれを無言で受け取っているそうです。
言い換えれば男として役立たずとみなされ捨てられたんですが、その後も甘い汁だけは吸いあげているんです。
元奥さんも後々のことがあるからでしょう、二度と逢ってくれることはなかったのです。
捨てられたと言えばもうひとつあります。
久美さんは雇われてから退職に至るまで「ただのパート」でしたし、自身も公言していました。
支配人は雇われた当時は名目上会計事務所からの派遣社員だったのです。
ホテルの管理職としての職権を取り合上げたいんじゃなく、
何時なんどき倒産になるか分からないホテルの支配人職では心もとなかろうからとの事務所の配慮だったようです。
ところが「甘い罠」事件を皮切りに事情が一変しました。
元々高原ホテルは地方の大地主が建てたものでしたが、いつのまにやら市内の自動車屋さんが採算度外視の値で買い取っていたのです。
最も、経営が左前ではあるものの今なら手の打ちようがある風な話しを関係者の誰かが漏らしたからこそ売られてしまったんでしょうが・・・。
そのあたりはやはり支配人としての認識が甘かったと言わざるを得ません。
オーナーが代わったのと相まって支配人は会計事務所からも不祥事の責任を取らされ追い出され行き場を失ったのです。
彼の住まいは高原ホテルが続く限り、職員でさえ気の毒がる事務所脇の元倉庫だった3畳ばかりの日の当たらない部屋となってしまったのです。
あと・・・ほんの少し後に事情があって久美さんは高原ホテルを去ることになるんですが・・・。
大黒柱をなくし、間もなくして高原ホテルは銀行と渡り合うもの(久美さん)がいなくなり倒産に追い込まれました。
さりとて、不景気風吹き荒れており、あの会計事務所にお願いするわけにもいかなかったのです。
彼の夢はただひとつ、借金を返して会計事務所に勤めるか、或いは自分で会計事務所を開くのどちらか・・・そんなささやかな夢しか許されない世界に努力の限りを尽くして舞い込んだのです。
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