和子の住むマンションの秘密

和子の住まいは市内から少し外れた場所にある眺望がすばらしいマンションで間取りは独り暮らしには不似合いな4LDK。
川で初めて出合って竜彦と暮らし始めたのが僅か2年前で、市内中心部にある中古マンションだが、今の和子の住まいと比べると古びて、その広さも家具などほとんど持ち込めないほど狭い2DK。
「本当は、竜彦さんと住むつもりで探してたのよ。一流に見られるためには住まいも一流でなくちゃね」
どこからこれだけの住まいを持てる費用を捻出したか知らないが、某企業に勤めていた時の給料ではとても足りそうになかった。

強請るネタが集まり竜彦の姿をマンションから認めると、和子は用意しておいたそのネタを、盗聴に気を配り非通知のベル番で、しかも声まで変えて知らせてくれた。
和子が流してくれた情報に基づいて竜彦は地べたを這いずり回って探索し、証拠を見つけ、強請る。それが今現在の彼の最も主だった収入になっていた。
まるで美人局のような関係にあるが、ひとつ違うのは竜彦はどんなに心の中で乞うても和子に身体に指一本触れるどころか、姿もろくろく拝めないところだろう。
共に古びたマンションで住まった想い出だけが彼の心の支えだった。それがゆえに生き延びてきた。
それ以外に、いわゆる闇金の取り立てみたいなものが自堕落な性格と思われた故か、それともスジの末端のチンコロと勘違いされた故か時折舞い込み、それが情報収集に失敗し喰いっぱぐれた時のツナギになった。
よくよく考えてみれば情報を提供する側の和子は勿論のこと、竜彦にしても限界すれすれ、将来が見通せない生活を送っている。
そんな関係をズルズル引きずっていることに、竜彦は和子を寝取られるたびに悲壮感に暮れ、尾行を上手くかいくぐられ情報収集に失敗するたびにあの頃の生活にもう戻れないような、和子を取り戻せないような気がして自分のふがいなさに焦りと怒りのようなものすら感じていた。
どう間違っても、和子のやっていることは綱渡りの上に成り立つ高級娼婦としか思えなかった。そして別れたとはいえ自分はもう和子にとって既に鼻も引っ掛けてもらえないヒモ以下の役立たずの人間に思えてならなかった。
若い頃ならいざ知らず、年齢とともに思考は混乱し体力は衰え、それにつれ収入は激減するのがこの世界の常だ。
「一見の強請を続けていたら、俺も近いうちに・・・」
情報を元に強請る相手を追っかけていると、どうしても地べたを這いずり回らなきゃならなくなり、そこに住まう下層階級のものたちの性活に、ともすれば目が行く。
この時代、一般社会の人々は得体のしれない者などに気軽に口をきいてはくれなくなったが・・・。
だから、隠れ潜み尾行を続け情報を得るためには、どうしても気軽に口をきいてくれる下層階級の、つまり旧世代の人々の世界に入り込まなければならないが、竜彦はその世界が殊更にイヤだった。生まれはどちらかと言えば下層階級、だが、彼はそこから某有名企業の戦士にまでのし上がった経歴がある。再び元の世界に逆戻りなどと考えただけで虫唾が走った。
今住む世間は確かに冷たく感じるようになったが、竜彦はそれでも下層階級と呼ばれる連中と、口は利けど同じ位置にまで堕ちたくはなかった。
仕事が仕事なら、遊びも派手な竜彦は、どんな無理難題を吹っ掛け強請って得たお金でも、使い始めると過去を忘れるために散財し、あっという間に儲けは露と消え失せた。
「おいっ、頼むぜ、和子さんよ。お前さんの情報が入らなかったら、おまんまの食い上げ、干からびちまう」
今日も粘るだけ粘って陽が暮れ、和子からの情報が得られず竜彦は仕方なく引き返そうと、それでも和子が元気に暮らしている姿を拝みたく、わざわざ和子の住むマンション前を迂回し市の中心部方向に向かって車を走らせていた。
小雨が降り始めていた。
その小雨の中、すらりとしたモデル級の女が、あるマンションから路上に飛び出してきた。
後を追って出てきたのが、過去に一度和子との関係をネタに強請ったことのあるスケベな会社のオーナーだった。
どうやら、あれだけ派手に強請ってやったのに、相変わらず女癖が悪く、今度も歳から言えば自分の子供みたいな女の尻を追って路上に飛び出して来ていた。
仕事柄、助手席にはいつでも撮影できるようカメラを乗せ、シャッターをいつでも切れる状態にしている。
「和子様はやっぱり福の神だぜ」
竜彦は路上で戯れる男女に向かて雨が降りしきる中ピントを合わせ夢中でシャッターを切っていた。
しばらく乳繰り合うふたりに気づかれないようカメラを抱え車を路側帯に車を乗り捨てて徒歩で追跡を続けた。
ふたりが別れたと言おうか、離れ離れになったのは、あるビルの前だった。
そこには小さいながら芸能事務所がある。
モデル級の女は、どうやらスジのものが運営するそこの事務所の所属らしく、これに気付き怖気づいたのか会社のオーナーは諦めてどこへやら引き返していく。
竜彦は最初は強引に説き伏せれば抱けるかもしれない女を追いかけようとした。
和子恋しさに下半身が言うことを効かなくなっていて、せめてもこのモデル級の女なら溜まりきった濁流を吐き出せるかとも思ったからだ。
だが、財布の中身が底をつきはじめていることが気になって、女と別れた後の行き先がなんとなく気になって男を追った。
その、引き返した先が、あれほど脅され強請られたにもかかわらず懲りないことに情報を流してくれた和子の住むマンションだった。
「・・・ということは、和子はあの後もつかず離れず助兵衛爺と・・・」 そう思ったがまさか同じマンションに入っていったというだけで証拠もないまま部屋に乗り込むわけにもいかず、その日は深夜まで例の場所まで引き返し粘って手を引いた。
翌日もその場所に出かけ、情報が入るのを待ったが和子は男を部屋に泊めたはずなのに一向に連絡を寄こさない。
竜彦は痔れた。女へのやるせない気持ちだけが募った。
数日後竜彦は、今度は車を芸能プロダクションのあるマンションの駐車場に乗り入れ、芸能事務所からあの女が出てくるのを待ってみた。
「すみません、ちょっとお尋ねしたいんですが・・」 丁度出てきた女に問うた。
言葉尻は丁寧だが、目は相手を睨みつけ、
「こちらの方を、ご存知ですか?」
引き延ばした写真を女に見せつけ尋ねた。
「あんた、だれ?」
女が怯んだ。
「立ち話もなんだから、ちょっと場所を変えて話そうか」 目顔で表へ出ろと脅した。
芸能事務所は目の前にある。
逃げ出そうと思えば、いつでも逃げだせる。
それなのに、女はすごすごと竜彦の後に従って付いてきた。
ひとつには竜彦が芸能事務所に対抗する業界が差し向けたヒットマンとでも思ったのかもしれない。或いは彼女自身芸能界に好ましくない思いがあったのかもしれないが大人しく後をついてきた。
芸能プロダクションは、竜彦の睨んだ通り、一方で表業界のモデル斡旋をしていたが、裏に回れば個人に向かってオンナの派遣もし行っていた。
モデルだけでは食っていけない、いや、当初目指していたアイドルになる夢がかなわない、だから彼女たちは呼び出される用事がそれと知りながらマンションに出向いたという。
「ということはだな、事務所ではしょっちゅう入れ代わり立ち代わり、女をそれなりの人物に向かって派遣してるていうことだな?」
「そこはよくは知らないけど、少なくともウチは・・・知ってる女の子も何人かシャチョーさん宅に行ってたみたい」
マンション内ですごんでみせた時と違い優しく問われ安心したのか、先ほどから後部座席でリラックスした座り方になっている。
竜彦がプロダクションの商売敵の裏業界の人間じゃないことがわかると、女は饒舌になった。
「あのオーナー、相当な歳の癖に、来る女来る女すべてとやってたのか?」
「そりゃあ、やってるでしょう。なんてったって凄いんだから、 確かにスタミナでは若い男に勝てないわ。でも、舌戯は抜群・・・ どんな女だってカネが絡んでる以上開くしかないし、舐め始められたらなんかこう・・・逃れることなんて不可能よ」
ふふっと笑うと、女は挑発するように、シャチョーさんに舐められたという白い太腿をわざと聞き役の意竜彦に見せる格好で脚を組んで座り直している。
「あんちくしょうが・・・」
そのシャチョーさんとやらが今は和子のマンションにいる。
だが、そのどちらかが相手に愛想つかせ離れてくれない限り情報は入らない。
竜彦の脳裏に、シャチョーさんとやらの舌戯に苦悶の色を浮かべる和子の姿が浮かんだ。
「だれか知り合いの女の人が、あのマンションに出入りしてるのね」
竜彦の思惑を知った女は組んでいた脚をグッと広げ、その奥に潜むピンクのラビアが見えるようにして聞いてきた。
立場が逆転した瞬間だった。
竜彦は抑えきれぬ嫉妬から、後部座席に移り女のソコにむしゃぶりついていた。
恫喝しつつ車の中に連れ込んだ女に、和子とシャチョーさんとやらの情事について嫉妬する方がどうかしているかもしれない。
だが、寝取られてしまったという負け犬のと言おうか劣等感情は抑えきれず、竜彦はまるで強 姦でもするかのような勢いで女を組み敷くと、花唇にいきなりシャチョーさんの得意技のひとつである唇を押し付けというのをやらかした。
「あっ、あン、乱暴しないで・・・」
恋人か愛人がスケベなシャチョーさんに寝取られつつあることを連想でもしたのか、女の身体に不貞への好奇心と快感がないまぜになり感情を高ぶらせた。
鼻にかかった声を発しながらも、その先どうしたいのか見たくて・知りたくて抵抗はしない。
むしろ、待ってましたとでもいう風に、腰を浮かし脚を広げてくれている。
ラビアに舌を這わせている竜彦の鼻腔に、甘い香りが漂ってきた。
どこかに派遣される途中、竜彦に呼び止められたのかもしれないこの女は、元々このような痴態に対し劣悪感は持ち合わせていないらしく、むしろ人様の不幸を楽しんでる風にも見えた。
シャチョーさんのような男に出逢った瞬間クンニされることを計算に入れ、下のヘアにも入念にその男の嗜好を考慮し吟味した香水が振りかけられていた。
〈ちくしょう! あの男と出逢う女は、みんなこうやって盛ったのか・・・〉
遙彼方のビルの屋上からでは察しえなかった和子のシャチョーさんへの心遣い、ラビアへお誘いのひとふり・・・
愛情と欲情とでは所詮次元が違うと思い知らされ、抑えようにも抑えきれない嫉妬が、竜彦を揺り動かしていた。
湧き上がる嫉妬に、股間ははち切れんばかりになってテントを張っていた。
車の後部座席で、今捉えてきた女に向かって、その花唇の上の敏感な膨らみを、思いっきり吸うと、舌の先で突くようにしつつ舐めはじめた。
この行為自体、和子が今シャチョーさんとやらとやらかしている行為とシンクロしている。和子を覗き見状態で女を味わえると思えたからだった。
最初に出逢ったときに見せてくれた和子の姿の中に竜彦は、自分と同じ匂いがするのを感じた。
美しく、それでいて頭脳明晰だが、純真などという言葉を大事に仕舞っていてはこの世は渡っていけないことを互い感じ取っていた。
だがそれでも、竜彦は川で水浴びせねば身体を清める方法が無くなった和子を護ってやりたかったから自宅に呼び寄せ住まわせた。
その、我が身に替えてもよいとさえ思えた女が今、シャチョーさんとやらの毒牙に犯され身悶えている。
それに引き換え今、自分の腹の下にいてまぐわいを楽しもうとしているのは己の裕福さに気付かず、アイドルにうつつを抜かし派遣の何たるかを知らぬバカ女。
シャチョーさんと違い、いきり勃つ若い怒張で汚してやることで、和子が今追いやられている男と離れられなくなる苦しさを思い知らしめてやらねば気がすまなくなっていた。
「ンンン・・・あうううっ・・・」
女は、恋人への嫉妬に狂う竜彦の頭をソレとは知らず両手で包むと、もっと男の嫉妬心を引き出し男心を嬲ってやろうと大きくのけぞって魅せ、更なる勃起を誘っていた。
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