知佳の美貌録「闇の支配者」 陰の実力者あっての高原ホテル

うらぶれた片田舎でなければとっくに倒産に至ってる接客サービスの何たるかも知らない経営者が建てたお化け屋敷のようなホテル。
そんなホテルをつかさどる表の顔とは代々庄屋にありがちな如何にも温厚そうな顔で周囲を睥睨、頭を低くすれば身をもって助けてやらんとする顔だ。褒められれば褒められただけ納入業者や借り入れた銀行に本来支払う筈のカネも手下と共に遊興費として右から左に垂れ流し、客としてきた身内に近い者にはロハ大盤振る舞いするのだ。
彼らに開設当初借り受けた金銭がすべて借金という意識はない。口八丁手八丁で得た金は全て純利益として豪遊したのだ。
陰の顔とは一見穏やかな顔をし銀行・会計事務所らが組んで実態を暴き彼らの資産を残らず没収しようとするものだ。

例えばホテルの老朽化、それはもう文字通りお化け屋敷だった。
支配人や経営者は経営者が派手に金銭をばら撒いてくれるものだから、いつか自分にもお宝が舞い降りてくるものと目論んでか見て見ぬふりをした。
浄水管が破裂し、廊下に滝のように水道水が降ってくるようなホテルであっても室内を平然と傘をさして移動していた。
壁は至る所に亀裂が入り赤錆が浮いていて修理箇所を限定しようにも、間に合わせの業者を呼んでもどこから手を付けていいやら見当もつかないような有り様だった。
このおんぼろホテルを良く知ってる業者に頼もうにも過去にさかのぼって相当の修理費が未払いになっている。
だから誰にも頼みようがなかった。
修理費など一切納めようとしないホテルに、喜んで修理に来る業者などバブル期のこの時代にいない。
それを、久美は手練手管で、
おまけに手土産まで持参させ「修理をさせていただいた」と業者に言わしめさせたのである。
フロアー脇に並べた土産物品も、倒産前のホテルならでは踏み倒しを警戒してか 原則このホテルだけは買取が条件だった。
それを久美は「置かせてあげる」立場に変えた。
「会いたかったら、相談に乗ってほしかったら持ってらっしゃい」と言って釣った。
お客様のおもてなしにつけてもそうだった。
格安の給料で雇った百姓家の農婦は言葉ひとつにしてもつっけんどんで掃除程度しか任せられず接客のほとんどを学生のバイトに頼っていたホテル。それも先輩から後輩に役を廻す方式で行われていた。
どんな態度で働いても、頑張ろうが怠けようが日給は決まりきっていた。
久美はそれを実力主義に変えた。
ある年の夏、アルバイトに来ていた学生たちを見て、
「今後の給金は働き次第で変更します」と言い切った。
給金のことに口を出せるのは、
勿論経営者と支配人と表向きは決まっていた。
それを、当然の如く久美が口出しし差配した。
そうでもしなければ、たとえ学生バイトであってもいよいよ傾いたホテルからむしり取るだけむしり取ってサッサと逃げられてしまうからだった。
自己保身に走る支配人では、もうこういったことに口出しする実力はなかったし、真の経営の何たるかを知らない支配人ではお飾り人形であっても経営の立て直し・・いや今の今ホテルを動かすことすら無理だったからである。
下手な差配をすれば、それだけで既存の従業員たちですら事情を知ってクモの子を散らすように逃げてしまっていただろう。
それをなんとか繫ぎ止めていたのが久美だと誰もが認めていた。
アルバイト学生の中で、●〇高校のマドンナと呼ばれる女学生がいた。
久美の目から見ても特段に頭のキレが良かった秀麗な少女。
その、頭脳明晰な女学生を捕まえ「特別給を払います」と全員の前で言い切った。
「仕事ぶりをずっとみさせていただいた」
それによれば、他に先立って働いていたのは彼女、
「働いたものにはそれなりの報酬、働かなかったものには昇給の必要ないでしょう?」
日給750円均一だったものを、彼女は一気に1,000円に上げ、それを全員の前で公表した。
「給料を上げてもらいたかったら、彼女を見習いなさい!」
逆らうものなどなかった。
古参の従業員も含め、久美が指摘した通りだったからだ。
頭脳明晰だけじゃなく、礼儀作法も申し分なかった。
「そうでしょうね。マドンナと1ヶ月一緒に働けるだけでもうれしいはずだもんね」
久美が認めるだけのことはあった。
一旦久美が女学生に命じると、周囲の男子学生は女学生に引きずられるかの如く後ろに従った。
どの席の、どの客の席が空きそうか、
女学生は素早く判断し対応に当たってくれた。
面白いように客が流れた。
しかも、評判は上々だった。
久美の采配にフロントマンはもちろんのこと、フロアーで喫茶を開く老婦人も甚く気に入ってくれた。
「もし良かったら、来年も来てくれない?」
久美の願いもむなしく、受験勉強と進学のため、その後一切女学生は来てくれなかった。
「ご期待に沿えなくて...」待つ久美に、こう返答が来た。
出るのはため息だけだった。
疲れ果て、事務所に落ち着くや否やコーヒーの無料サービスを行ってくれる喫茶の経営者の老婦人。
「気を使ってくれなくてもいいのに...」
「何を言うんだい!あの支配人ったら、肝心な時になるとどこに隠れたやら顔も出しやしないんだから!」
売り上げが伸びない喫茶を、いつやめようか、いつやめようかと思いながら、ここまで頑張ってこれたのは久美ちゃんのお蔭だと 二言目にはほめてくれた。
「あんたが来なかったら、このホテルはとうにバンザイしてたよ」
役員報酬を銀行に手を廻し税務監査という言葉をちらつかせ諦めさせ、ないモノは無いんだと言い張り頑として配当しなかったこと。
業者への支払いを元々半年であったものを一年に、既に銀行との合意が成り立っていると引き伸ばさせ、その分当面の運用に回した。
それら一切を「たかがアルバイト」の久美が経営者や支配人、銀行や町の経理課に代わってやってのけた。
久美が在籍していた間だけ、ホテルは何事も無かったかのように運営し続けたのである。
「陰の実力者・闇の支配者」は喫茶の老婦人の偽らざる言葉だったのだ。
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No title
秋(aki)
Re: No title
コロナについては世間体で怖い風に言われてますけど、持病が無い方にとってインフルエンザのようなもの。
気にしないほうが良いかと。