知佳の美貌録「覗き見により発覚、追放」 解雇されたボイラーマンの後を追って

久美は久しぶりに待たせておいたボイラーマンの仕事場、地下室へ向かった。
もう2ヶ月近く逢っていない。
ボイラーマンは多忙を極める支配人やフロントマンに代わって送迎をしてくれた時期があった。
一度関係を持って以降ず~っと、久美は求められるままにボイラーマンに抱かれた。
最後のお願いは確かにボイラーマンが申し出てくれたが、この頃ではもう 久美の方がどちらかというと積極的に誘うようになっていた。
身体を重ねようと互いにアプローチを繰り返す。究極の恋愛ドラマを演じているようで毎日が楽しくて仕方がなかった。
それをさりげなく避けるようになったのは職場内だけじゃなく、議員が助手席に四六時中女を乗せドライブとしゃれこんでいたことから地区でも噂が立った。
しかもその女は同じ職場の人妻。議員としての対面もあった。些細なことでも選挙に影響するのだ。
本来地下室という玄関からずっと下方に位置する場所であるボイラー室脇に止めていた彼の車。
それを久美を乗せるため、わざわざ玄関前に移動させ乗せてくれるようになっていたから余計だが・・
それもこれも、対抗意識を燃やす支配人への当てつけであることは、久美もうすうす感づいていた。
感づいていたからこそ、さりげなく裏口を抜け出し、グルッとバス停の方に向かってホテルを抜け出しバスが通る方向とは逆の方への帰り道を途中まで歩いて降りつつ、後ろから追っかけてくる彼の車を それとなく待ったりもした。
厳しい言い方をすればお客様でもない限り、玄関横づけで乗降するのは規則に反しているからだ。
だが、間オトコたらんとするボイラーマンとしては久美が地下に降りて車に乗り込む、その時間さえ待てなくて玄関に堂々と車を横付けし待つのが通例になっていった。
女だって月のお客様が来るとジッとして居れなくなる。が、男も人妻を寝取ろうなどと考えた場合、連日溜まって思考が定まらなくなる。
女と違い慎ましやかなどという生活習慣を持たない男性にとって女が欲しくて溜まって出したくて、己の力を知らしめたくて仕方が無くなれば尚更の事。
実のところ、かつて支配人が久美を見送る場合がそうで、結果的にはそれを見破ったおばちゃんがチャッカリ横取りしたものだから希望がかなわなかったが・・負けてはならじとボイラーマンも同じことをやって当てつけて見せていたのだ・・
そうやって助手席に久美を押し込んだが最後、一直線に脇道に向かってハンドルを切るボイラーマン。
何時の頃も女を初めて口説き堕とすことが出来た。それをタイミングの良さだと思い込んでいた。だから常に焦っていたのだ。
車の往来が少ない高原の道、良く知られていたボイラーマンの車の助手席に艶やかな女が乗っている。しかも帰り道ではない方向へ、時としてまた別の方向へとふたり楽し気にお互いを見つめ合いドライブしてる。付近の住民がみても明らかに妙な行動と映っただろう。
そして最終的には数あるラブホ地区のひとつに向かおうとする。
「見られてるからやめて!!」 制しても制してもやめようとしないボイラーマン。
ついに久美の方から送り迎えも、そして地下室に降りるのも避けなければならなくなった。
一度関係を持って、心の片隅から離れなくなった彼への想いは久美にとって深刻だった。
逢いたい気持ちは募るばかりで仕事が手につなかなかったが、ボイラーマンこそ男だからそれ以上だったようだ。
なにせ、女が発情しただけでおこぼれにあずかろうと男どもは隙をみては言い寄る。
直接的な言葉を発して誘ってくれないにしても、そこは男と女 欲しくて仕方なくなる時が必ずあるのだ。
禁断の恋など止めようと何度も思った。しかし周囲の 田舎の環境がそれを許さなかった。
どの道を辿って家路につくにも、必ずと言って良いほど途中にラブホがある。
親しくなったバスの運転手でさえ、もしも久美とふたりっきりの時はその場所にさしかかると妙な雰囲気になるのだ。
夏休みが始まる7月初旬から学生雇い入れ、それに加え経営の悪化、表面上はその対応に追われていたからだと周囲に思わせ、あの時だけは凌いだ。
出入りする業者、特に食品と土産物の納入業者への対応は久美にしかできなくなっていたことも幸いした。
支配人がホテル内で右往左往していると、即現金を要求された。
「お願いですから昼間は顔を隠していていただけませんか?」
フロントマンからこう言われるにつけ、逃げ隠れするしかなかった支配人。
逃げ隠れするのは良いとして、唯一心に残るのは久美のこと。
ホテル内には久美を付け狙う男たちの存在がある。素直にホテルから離れられなくなっていた。
付近の木立の中に従業員にまで内緒で潜んだり、地下の客室の隅に潜んだりしながら久美の動向を見張り続けた。
その、支配人に代わって久美が電話の受け答えから業者との約束の取り付けまで行った。
肝心な時になると久美は「ただのアルバイト」で通した。
支配人は実のところ、この頃になると金策に追われていたといっても言い過ぎではないが思考は別のところにあるものだから、時として応対を失敗した。
経営者が入れ替わる、郡部の豪農以上に市内の会社経営者というのは苦労知らずで、しかも傲慢で、一段と赤字経営への理解が得られなくなっていたからだった。
「お前たちふたりして会社の金を横領している」
会計事務所にこんなことを言うだけでなく、深夜に支配人室にこもって仕事しているとこの経営者は「そこで何やっとるか~!」突然怒鳴り込んだりもした。
いづれにしてもホテルの従業員全員、経営陣に信用されていなかった。
運営をつかさどる全ての者からの信頼が失われていた。それを辛うじて繋ぎ止めていたのは久美の存在だった。
だからこそ、久美は重要だった。
ホテル中、誰がみても支配人の代理は、いや経営者にふさわしいものは久美しかいなかった。
その久美が、こともあろうに臨時雇いのボイラーマンに熱を上げているという噂を支配人は耳にする。
「裏切りやがって!!」
支配人はホテルから出たふりをして事あるごとに久美の動向を見張っていたし、久美もそのことに感づいていてボイラーマンとのことは警戒して忍び右近でいるつもりだった。
だが、幾度も幾度も支配的立場が変わり、実質運営を久美が担うようになると、不貞な関係を職場内で行うなどということは避けねばならないという意識が熟し始めた女であるがゆえに薄らいでいった。
誰が送迎をしてくれるわけでもない日が続いた。久美を巡る対立が表面化したからだ。
通勤は再びバスになっていたが、ホテル脇の停留所(バスのUターン場所)から皮肉なことに地下のボイラー室が良く見えた。
よせばいいのに・・ 遠間ながら、彼がうつうつとして働く姿様子を毎日うかがうことが出来たのだ。
逆に募る気持ちを抑え切れなくなっていった。
幾日も幾日も見張りを止めてくれようとせず、久美が事務所を抜け出そうものなら後をこっそりつけるまでした支配人。
側から見ても一時期とはいえ久美と支配人の立場は再び逆転していた。
己を中心にした男と女の関係、そのことが久美女として有頂天にさせ油断させた。
何処に向かうにも支配人に後をつけられている。 知ってはいたが集金に出てくるとホテルを後にしたはずの支配人が早々に舞い戻り後をつけている。そんなこととは知らない久美。
地下へ通じる階段をボイラーマンの彼にため、自身の抑えきれなくなった気持ちを彼によってどうにかして欲しくてたまらなくなったためノコノコ降りる久美。
いつもの席で、どんなに忙しくても彼は待っていてくれると信じていたし、たまたまと言おうかこの日に限って事実そうだった。
かつては階段の下で待つボイラーマンのために、下着を着けずに降りていた久美はこの日も同じことをやった。
ホテル内では警戒心を怠らず、どんなに魅せられても指や舌で、しかも短時間でかわし続けたボイラーマン。
逆ナンを平然といなし続けることが常だった冷静というより冷徹なボイラーマン。
だがこの日は長い間逢えなかったことでボイラーマンこそ余裕を失っていた。
逢えなかった、すなわち支配人によって久美の権利を奪われてしまっている。つまり久美の男を支配人がボイラーマンに代わって演じていると勝手に思い込んできたボイラーマン。
男はこのような時、自身の持ち物とテクで女を再び自分の元へ奪い取ろうとする。
しかもそれを許してくれる気になったかのようないでたちで久美は階段を降りて来てくれていて待ち望んだアソコが丸見えのような気がしたのだ。
千載一遇のチャンスを見逃すほど余裕がなかった。
よくよく見れば事務所から忍んで降りてきてくれていた久美は、この日は用心のため下着を身に着けたままだったことも支配人からの忠告でも伝えに来たのかと思われ一層妬ましく思えた。
魅せたくて気が変になっていた久美は実は彼へのサービスさえ忘れるほど焦っていたのだが・・
それはボイラーマンも同じだった。
長椅子に座るや否やボイラーマンの久美への口撃が始まった。
「俺といるより支配人といるほうが良かったか!」
肝心なところを調べずにはおれなかった。
「魅せてみろ!」
長椅子に返事も聞かず、いきなり押し倒された。
荒々しく、油まみれの作業服のままのしかかってくる。
ばたつかせる両足を担ぐようにしながら太腿の間にこれまで経験したことないほど強引に割り入ろうとしてきた。
唇を奪われる間もなく、アソコも奪われそうになった。
着衣が災いしたかもしれない。
嬲らせるだけ嬲らせ、気が治まったころ、
「待って!脱ぐから・・・」
自ら脱ごうと立ち上がった久美の下着を最初こそ脇にどかしコトを進め始めたボイラーマンであったが・・
いつものようにすがるようにしつつボイラーマンに身体を預ける久美。
その久美の右太腿を軽々と片腕で支えながらボイラーマンは自身のアレをベルトを緩めジッパーを下げて抜き出し密着させてきた。
挿入準備を整えるべく、己を奮い立たせるため口汚く口撃するまでもなかった。
事務所を抜け出そうと心に決めた時から久美は、受け入れ準備が整い過ぎて困っていた。
その処理は長椅子でチョンの間に終わっている。
そこから先はもう、お互い欲しいと想い始めていたんだとの確信に至る。
察したボイラーマンはOKを得ずして初めてホテル内でパンティーの脇から、あれほど警戒し避けていた挿し込みにかかってくれていた
抱き寄せられ「立ちかなえ」で責められた。
ラブホや車内エッチで散々久美に深く挿し込んだ経験のあるボイラーマン。
が、今は状況が違ってきている。
自身のオンナだと思っていたものが支配人に再び奪い返されそうになっている。
その中が、どうなってしまってるのか知りたくて余裕を失っていた。
立ちかなえでは思ったように深く挿し込めない。
久美からOkが「凄い!」とか「ああああああああ!」とかの声が出ない焦りにからか、とうとう久美から下着だけ剥ぎ取り、己も全裸になって絡みなおした。
着衣のままだった久美、が、時間とともにスカートも捲り上げられるものだから絡み合う部分が階段室から見えるほど露出してしまっていた。
スカートが完全にめくれ上がり真っ白い尻が露わになって、その場所に野太いボイラーマンの腰が小刻みにノックを繰り返すように押し付けられていた。
片足を持ち上げられながら絡み合わせたことで、互いのアソコがボイラー室の姿見に映し出されるほど露わになってしまっていた。
〈 あの野郎がココを!〉
一段と高まる久美の切なげな声がボイラー室のシューッ、ゴーッという蒸気音でかき消される。
興奮が頂点に達しかかっていた。
ボイラー本体や圧力容器、雑多な配管が入り乱れる狭い空間でシューッ シューッという音に混じって喘ぎ声を聞きながら確かめ合いっていたことで議員も安心しきっていた。
互いを貪り合うことに夢中になっていた時、
地下室に通じる階段の中ほどから素っ頓狂な声がこだました。
いつの間にか支配人が地下室に降りて来ようとして、ふたりの様子を盗み見し、肝心な状態になってしまっていることに酷く嫉妬を覚え大声を張り上げてしまっていたのだった。
それまでの久美の状態なら、恥を忍んでお願いすれば、或いは指や舌で奉仕してもらえただろうが絡み合ってもらえることはなかったろう。
だから支配人は覗き見による妄想で、自己処理し抑えてきていた。
何時頃からなのか、覗き見のため忍び込んできていた支配人は、
騒ぎ立てようにも、自身も弱みを握られていることもあり、噂を聞きつけてもどうすることもできなかったものが、
この日はついに寝盗らてしまっていることを直に見て慌てふためき声が漏れ、我に返り自分こそ上司だとばかりに淫行の現場を見つけたと大騒ぎしてしまっていた。
地下室の たとえ階段付近であっても、ボイラーが発するシューッという蒸気音と轟々と燃焼する焔の音の中ではどんな大きな声を発しようが分厚い断熱壁を挟んだ別の階に声など届かない。
だがそのことを、嫉妬に狂った支配人は考えようともしなかった。
「私が懇願し来てもらっていた久美をよくもよくも!!」
云わいでもよいものを、覗き見の興奮が冷めやらず勢い余ってフロントマンに つい口を滑らせた。
喜んだのは支配人とかつて深い関係を持っていた、あの下働きのおばちゃんだった。
「辞めさせてしまいなさいよ、そんな不潔なオンナ」
嫌も応もない、勝ち誇ったようなおばちゃんの叫び声がフロント脇にあるレストラン中に響き渡った。
丁度休憩時間だったこともあり、従業員のほぼすべてがレストラン内にいた。
即刻ふたり揃って支配人室に呼び出され、
ボイラーマンには不祥事を犯したことの代償としてその場で支配人の口から解雇が言い渡された。
半面、気のある久美には叱責だけで済まそうとした。
嫉妬という怒りに任せ、目の前の事実しか追えない支配人。会計事務所に報告さえ上げればホテルは助かるとこの時ですら思い込んでいた。
ボイラーマンの町議を解雇すれば、計画が進行中のホテルの新築工事は行えないことになるなど知る由もない。
借金10億円を背負ったまま倒産することになる。
売り言葉に買い言葉、ボイラーマンは潔く解雇に応じ即刻ホテルを立ち去った。久美より議員としての対面をとったのだ。
叫ばれた瞬間、緊張が解け中に放出していた。失望しかなかった。
ボイラーマンの後を追うように、久美もホテルを飛び出していた。
いつもと違い、下りのバスに乗る久美。
「とうとう辞めたんか」
バスの運転手がもう既に知ってたかのように独り言を言った。
こんなボロホテル、早く辞めるべきだったんだよ。
返す言葉がなかった。
何処をどう修理しようにも、手の打ちようがなくなったホテル。
借金まみれという現実を受け止められないくせに、
夢のような妄言が治まらない地区の富裕層や有力者たち。
この事件が発生する、ほんの数か月前、
ホテルの経営者が変わっていた。
郡部の豪農から市内に別の事業を展開する男に、内情を隠して売り渡されたのだった。
新しい経営者は町がテコ入れし、ホテルを建て替えるなどということは知らない。
あぶく銭にあかし、リゾート地を安く買いたたいたつもりでいた。
実質はとっくの昔、町に権利を奪われていた。
ホテルの中でそれを知っていたのは町議のボイラーマンと久美だけだった。
円形状に建て替えられるはずの図面をボイラーマンは久美に見せてくれた。
鉄筋コンクリート製の現ホテルと違い、木造建ての、いかにも風雅な建物だった。
外観を円形状にすることで市内と湾が余すことなく眺望る。
現行のジンギスカン一点張りの料理ではなく、ありとあらゆる料理をワインを添えて出そうとまで計画されていた。
将来に夢をはせた。
それが、何も知らされていなかった支配人の、この一言によって吹っ飛んだ。
ボイラーマンと久美に、明日から暮らしていける余裕などあろうはずもなかった。
それでもいいと久美は思った。
今はもう理解してくれるものなどいない、ボイラーマンのいないホテルに残る意味など見いだせないでいた。
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