逃避行の女 第二話 子育てに奔走する

今回お話しに登場するのは息子さんの方で、美紀さんと知り合った当時 彼はまだ確か高校生でした。
娘さんは成人かそれに近い年齢だとお聞きしましたが、父親からの暴力を頻繁に受けた影響からでしょうか、しばらくすると引きこもりとなり今に至っているそうで、どうやら学校も中退なら自宅に引きこもったままのぷーのようなのです。
女性とは不思議なもので、こういった状態になった我が娘を事情は分かっているはずなのに母の美紀さんは何時しか怠けものだの汚いのとなじるようになり、あからさまに放置するようになったようです。
その分息子さんは溺愛していたようです。
愛した息子さんの後押しをしたのがクラリネットの世界でした。

学校内の連中にああだこうだと言われるのが嫌いだからだそうです。
それでも楽器に興味を抱いてくれたからには、どうしてもモノにしてやりたいと美紀さんは考え、派手好きだったこともあって音楽教室に通わせました。
従って介護職で得た薄給の中からヤマハ音楽教室の受講料を工面したんです。
ヤマハ音楽教室と言えば田舎で習うのは (講師の専門職は) ほぼピアノです。
ですが、県住に住み、しかも学校のクラブ活動はイヤだという彼にピアノの練習を独学でしなさいとはどうしても言えません。
そこで吹けば曲がりなりにも音が出て、しかも中古なら比較的安くて手に入るクラリネットを先生は薦めました。
かくして息子さんのクラリネット練習が始まりました。
ヤマハ音楽教室では近隣の同好会を集めて発表会があります。
熱心さが認められたからでしょう、小さなオーケストラのメンバーに息子さんが選ばれました。
美紀さんにとって春が来たように思えたに違いありません。
このチケットを美紀さんは懸命に配りました。
そしてその発表会の日、知佳の知り合いは会場に出向き、演奏を前にした息子さんに頑張ってしい旨声を掛けようとしますが・・・
なんとしたことでしょう。息子さんは逃げ回るんです。
お姉ちゃんは男性恐怖症、息子さんは女性恐怖症なのにお母さんはアプリを使いヒトトキの男探しを暇背あれば・・・ この親あってこの子でした。
これは余談ですが、この時代すでに出逢い系を使って割り切り相手を探すことに熱心なのは隠れ潜んで行えることも手伝って女性が主でした。
しかも実部とは似ても似つかない顔写真を登録したりすればひっきりなしにアプローチの申し込みが来て出逢える確率が非常に高かったこともあって彼女たちは目の色を変え次から次へと登録・男漁りをしました。
ですのでこの時期、知佳もそうでしたから美紀さんほどの人はかなり多くのアレ目的の男性とヒトトキを過ごした?かに思われます。
男どもはやがて疲弊し金銭ひっ迫となりひとりふたりと去っていきますが、気持ち良さや優越感が忘れられなくなった彼女らは今日でもまだアプリに夢をかけ必死でお誘いを繰り返しています。巧妙に かつ強かに。
その10人足らずで演奏する演奏会で息子さんは確かに小さなオーケストラのクラリネット部分を担当していました。
ですが、演奏が始まってしばらくすると吹いた真似はすれど指が動かなくなっていったんです。
一見真面目そうな雰囲気には見えましたが、育ちがそうなのか母親である美紀さんが言うように周囲と比べ著しく秀逸ではなく どちらかと言うと教室の指導にはついていけない 歩調を合わせられないようでした。
こうなると浮いた存在になってしまってる筈なのに感心なことに彼はその教室に休まず通い、ついに卒業と同時にヤマハに非正規雇用として雇ってもらうことになりました。
楽器演奏がほぼできず、スラスラと楽譜が読めない彼に与えられた職、それは素人さん相手の楽器やレコード・CDの販売です。
体裁を保つため楽器店は閉じませんでしたが彼曰く全く売れなかったそうです。
そんなある日ある事件をきっかけに美紀さんは会社を追われます。ですが元々我関せずの息子さんはヤマハの店が閉店となるまで諦めず通い続けました。
閉店となったのち、職探しの中で何故か母と同じ介護職を選び比較的大きな施設の介護に就き、彼は臨時の施設内介護員として働き始めました。
クラリネットはと言うと 音楽教室の受講料が払えず、しかも中古ながら楽器の値がもともと高く、高額で売れる話しが舞い込んできたことから生活費に変えるべく手放したようでした。
母が無給となりお姉ちゃんの面倒も見なければならなくなり、とうとう一家の大黒柱になったのです。
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