逃避行の女 第三話 相当のお人よしだった美紀さん

そこは近隣の過疎地から市内の某有名校に通う学生のためJRが臨時の駅をこしらえた、それでないときは人通りもあまりない場所で、早朝のクラブ活動に参加すべく早出の学生が列車を使う時間帯で通り派ごった返していました。ただでさえ踏切は車2台がやっとすれ違える狭さなのに、すぐ近くに信号機があり長い車の行列ができるその踏切を会社とはまるで逆方向に向かい通りかかったのです。
すると、踏切近くの 車でいえば待避所みたいなところ (踏切を渡って信号機までの間、安全を考慮に入れ路側帯が設けられていて幅が広かった) に止めた車の脇で懸命に何か作業をする人影を見つけたんです。
相手が男で、しかもタイプ (年下) のようにみえたそうです。
男はどうやら車の後輪にトラブルが発生しオロオロしている風だったそうです。

この時彼女は彼の困惑した様子を横目で見ながら一旦踏切を向こう側に渡り、目的の場所に直行したんですが運悪く目的を果たせないまま数分後に引き返してきて、そしてまたその後輪トラブルの彼を踏切を渡る直前に逆方向から見つけ、先ほどのこともあり胸をときめかせました。
踏切を渡るとすかさず反対車線の待避所みたいに広くなったところに車を止め一散に彼の元に駆け付けました。
卑怯なことに何人もの男連中が通りかかっただろうに誰ひとり手伝ってあげようとしなかったようなのです。
美紀さん曰く、彼はただただ車の周りをこの時間の間中うろついていたと言います。
美紀さんはある場所へ行きがけと帰りがけにこの状況を目にしたからには道義上放ってもおけず。彼に 「どうしたんですか?」 と問いかけ、それとなく様子を窺ったそうです。
助手席側の後輪のタイヤがぺしゃんこにへこみ、しかもそれと知らず延々ここまで走って来ていたようでタイヤのサイドがズタズタに裂け、一部は中のワイヤーなどがはみ出していました。
それなのに 「タイヤの空気が無いみたいで...」 と、こんな風に述べるしかない男性。
女の美紀さんが見ても明らかにパンクだったんですがその人にはこんな当たり前のことすら判断が出来ないようで、しかもその人はそれから先この車をどうしてよいやらわからず、というより状況すら理解できない様子でただただ 「会社に遅れる。どうしよう・・・」 と女の美紀さんを前にして泣き言をいうばかりだった。
「手伝いましょうか?」
こう声を掛けずにおれなかった美紀さん。すると・・・
「女の人には無理じゃないかなぁ~」
女を見下したような、いや、そうでなくても いかにも間延びした返事が返って来た。
かと言ってその変形したタイヤをどうにかしようとするわけでもなければ、修理屋さんに電話を入れようともしないんです。
ただただ親切ごかしに駆け寄って来た女を物珍しそうに眺めるだけでした。
それもそのはず・・・
その時の美紀さんは利用者さん宅に介護に向かったはずなのに、如何にもこれからデートです!と思えるような一見夜のオンナ風な派手な服を着ていたからです。
そう、こんな時間帯にこの道をあてどもなく女が運転する車が突き進めば、そこは街の外れゆえ河川敷の行きどまりの木立に入ってしまうか、それとも田の脇の木々が生い茂る行きどまりの道に迷い込むかしかないのです。
ここに住む人々が何かにつけて煙たがる ヒトトキ者同士の屋外ナマ〇●かカーセッ◎スをやらかしに来たとしか思えなかったのです。
その中でもこの場所は上手くいけば車の中でコトが済むはずと考えての輩が多いそうで、その手の服装なのだろうと彼は感じた様なのです。軽装でしかも冷え込んでると言うのに短いスカートで応援に駆けつけてくれてるのですからそうみられても仕方のないことだったようですが・・・
その格好でしゃがまれでもしたら下着が丸見えになりかねないし、脇に立つ自分こそ覗き趣味ともとられかねない。
見下したのはそのせいだったのかもしれないが・・・ 美紀さんは否とも応とも答えない男に業を煮やし、勝手にテキパキと僅か10分足らずでパンクしたタイヤの脱着を行ってしまったんです。
後部座席を後ろに倒し、傷んでしまったタイヤを放り込みました。 「あっ そんなことしたら・・・」 あとは口をあんぐり開けるだけだったようなのです。
「パンクしたタイヤは使い物にならないと思うけど、一応仕事帰りに車屋さんで見てもらった方がいいよ。今付けたのはスペアタイヤだから」 このように教えてやったそうです。
男にすれば散々コケにされつつも悔しいかなこの車のスペアタイヤの格納箇所さえ知らなかったようなのです。
そればかりか美紀さんがタイヤ交換を行ってくれてる間中、彼は彼女が時折しゃがんだりして魅せてくれる下腹の小さな布キレのその奥がどうなってるのか気になって気になって仕方がなかったんです。
久しぶりの逢瀬、ぜひともお願いしたく、勝負下着を身に付けてきた美紀さん。肝心な部分はスケルトンになっていました。
しかも彼女はナチュラル派、黒とやや暗い肌色にシミまでもが透けて見えるんです。
恐らくタイヤを脱着するときに重いものを支えようと踏ん張った折に見える太股などなまめかしくて立って立って困ったと思います。
美紀さんは美紀さんで懸命になってボンネットの床板を上に持ち上げると底の方にタイヤが収納してあると説明するのだが・・・
ともあれ修理は終わりました。
次の予定まで30分程度余裕があったので直行すれば少し早すぎるのではないかと手伝い始め、気が付けば刻限ギリギリになっていたんです。
呆れたことにこの男、美紀さんに礼を述べるどころか、己の素性も教えないままその場から立ち去っています。
だが、好みの男のお手伝いが出来たことで美紀さんはルンルンで介護に入って来ました。
何時もなら今朝のように出逢い系を使ったが希望に沿った相手に巡り合えなかった日など訪問者さん宅に着いても自己嫌悪ゆえかいくらなだめすかしても落ち着けなく、冷蔵庫にあった有り合わせの食材を使い献立を考え、その日の食事を僅か1時間足らずで作り、介護日誌を書いて帰らなければならないものを、その程度の思考すら追いつかず利用者さんに献立から日誌の文面まで知恵を出してもらうことさえあったのだ。 いや、それならまだ良い方で恋愛指導で終わることも一度や二度ではなかったのです。
だから利用者さんも喜びました。
喜びついでに前回訪問日から今朝までの間に、一体何があったか告らせました。 大方色事だろうと分っていたからです。
女性とはかほどにスケベ。
美紀さんはここぞとばかりにパンク修理の件を話し始めましたが、「終わってからどうしたの!!」 と言われ 「会社に遅れ、急いでたみたいだから・・・」 と説明し、「あとは何もなかったよ」 と自慢げに告り終えたんです。
案の定 「いくら急いでたからって素性ぐらい伝え、お礼を何処に持っていけばよいか聞き出そうとするのが普通じゃない?」 と問われてしまってはたと困ってしまいました。
今更どこの誰だかわかろうはずもないし、調べようもないと思われたからです。
だがここで、「行きがけに何故止まって修理してあげなかったの? 行きがけに直してたら遅刻しなくて済んだんじゃない。 あんた今朝何してここに来たの?」 そのナニに力がこもったことに・・・
とうとうメールを通じ知り合った誰か知らない男とあそこらへんで落ち合って確かめ合う約束してたことを白状したんです。 それも特定の場所にまで自分の車にその彼を乗せ案内させてである。
「じゃ帰り道にパンク修理したのは慈善事業じゃなくヤリ損ね、ヤリ友欲しくてだったんだ!タイプだった?」
あけすけに性処理について問われ
「うん、純な人みたい。名前も名乗らないような人だから・・・」 と応えてしまって ”しまった!” と思った。
次に入る介護士にこんな話しはこの利用者さんの場合特に筒抜けになるからだ。心配でたまらなくなったところで・・・
「明日の朝イチで仕事入ってる?」 とこう聞かれ 「別に・・・明日は空いてます」 と応えると。
「それじゃ簡単よ。その人通勤と言ったじゃない。明日待ち伏せしたらきっと彼の方から貴女を見つけて寄って来てくれるわよ」 こういわれた。
正にその通りだったと言いたいところだが、実際には彼女の車をチラリと横眼で見て素通りされたものだから、執念で会社まで追っかけて行き、入り口付近で見つけた関係者に 「私こういうものです。連絡くださいと・・・」 とそう言って名刺を手渡し、ついでに彼について問い合わせ情報を得て帰ってきたという。
彼にしてみれば彼女は益々危険な女と感じたのだろう。余計寄り付かなくなったそうです。
美紀さんはそれでも待ち伏せを繰り返し、ついにある日、全く別の場所で彼の車を見つけ押しかけ、自分の電話番号を手渡しました。
こうして幾日も、ひょっとしたらお礼に彼がヒトトキでも付き合ってくれるんじゃないかと彼から連絡が来る日を待ったようなのです。
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