寝返ったようにみえた他人の嫁
本家筋の中でも紙屋 (かみや) は人様に指図されるのが嫌で殊の外意固地になって外に出ていくことを拒み続けましたので服装はともかく食事やなんやかやに至っては辛酸を極めていました。
田んぼはともかく、畑も連作に気を使ってみたものの今までと少しでも違う肥やしをやらない限り良い野菜は出来ません。 ほんの少しで良いんですが石灰とか魚粉などを加えないとそれらの栄養素が足りず土地が瘦せすぎていて、しかもそこに精の付く野菜を植えるものですからまるで鶏ガラのような野菜が出来るんです。
わかっているのにそれを捻出する費用が何処にもないし、ましてや人様に頭を下げもらい受けるに至っては寒気がするほど嫌いなんです。
植物をよく理解している下谷 (しもんたん) の英雄さんなど畑の隣の他人の山を気づかれない程度耕すたびに切り出し真砂を客土しまがりなりにも畑を蘇らせていました。 山を切り開いて畑を作れと言われたから出来たんでしょうが紙屋 (かみや) はそんな土地を持たなかったんです。
残るは蔵に眠るお宝を密かに手放す以外方法はなかったんですが、さすがにこれには原釜 (はらがま) も中 (なか) も感づきました。
一挙に相手にする者がいなくなったんです。
寛治さんにとって亡き母に逆らい父から離れて行こうとする子らを思うとき原釜 (はらがま) の将来などこの際どうでもよく、あるのは己を日夜悩ます女の存在だけとなったのです。 その女を屈服させる、後ろ指を指されたとしても運よく寝取ることが出来れば家屋敷どころか家名などもうどうなっても良かったんです。 だから焦っているのは紙屋 (かみや) が彼女の魅力に気づかないうちに奪うことで雅子さんとの合意の上での締め込みを行い惚れさせる、ただそれだけだったんです。 卑怯な手ではありますが雅子さんに対しこの時とばかりに紙屋 (かみや) の置かれている立場を、それも雅子さんの実家に一体なにをやらかしたかをコト細やかに吹き込みました。 雅子さんも元はといえば聡明な女性、自分なりに内情を調べ上げ納得に至ったのです。
それはそうでしょう。 紙屋 (かみや) の倉庫にこの辺りではとれるはずもない米が入った俵が山と積まれていたからでした。
「定男のヤツ、あんたの実家の米蔵からこれを勝手に持ち出したんだ。 そうに違いない」
寛治さんがそう言うと
「解ってます。 このうちの蔵に実家に置いてあった品物が入ってたの。 でも数日後来た客が帰った後行ってみたらその品物が消えて・・・」
悔し涙が流れ落ちました。
こうまで簡単に紙屋 (かみや) の左前が露見したのはひとえに定男さんの、あまりにおごり高ぶった、周囲の者をこばかにしたような所作が子や孫にまで影響を及ぼしたからではないでしょうか。 何故に蔵に鍵が掛かっていなかったかと言うと真一さん、その蔵を食ら風の展示場に改装しようとしてたからです。 定男さんの影に隠れてはいますが自慢したがりの直己さんと真一さんは誰が見てもわかるような派手なことを定男さん、往年の勢いに陰りが出るとこれまで我慢し続けたっ贅沢を競うように始めてしまったからです。
例えばの話し思い付きで始めた牛飼いにしても 紙屋 (かみや) は親戚筋に当たる隠居 (えんきょ) の長嶋時雄さんが直己さんの息子の真一さんに入れ知恵し世話役を父親から彼に譲らせていて時さんの指導の元一旦止めたかに思えた牛飼いを継続させていましたが、同じ牛飼いでも原釜 (はらがま) に至っては採算が取れずこの時にはもうスッパリと手を切っていたのです。
経済云々を深く考えてのことではありません。 要するに雅子さんに関わる時間を牛飼いのために減らすなどということが出来なかっただけなんですが・・・
これも運命の分かれ道でした。 昔ながらの飼い方では牛の肉が皺硬く、まるで猪か鹿のような野生味が残り時代とマッチせず売れなく値下げするしかないので手間賃どころか胤付けに必要な費用さえ捻出できなくなっていたんです。 つまり愛玩用として飼う程度が関の山だったんです。 田んぼの畦道に生える草ではなく小麦やトウモロコシなどが入った飼料を与える必要がありこれに対応するサイロも作らねばならずそれにも増して過去のやり方を現代風に根本から変えようと・・・実際には殆ど知識のない時さんの指導で試みています。 資本となる優秀な子牛を買うにしても今の荒ら屋 (あばらや) 左官屋 池之原家が一軒建つほどのお金を子牛一頭につき現金で払う必要があり、しかもこの時何頭も目利きの悪さでは評判の時さんにお願いし購入してるんです。
それを時さんや幸次さんがやいのやいのと囃し立て投資させたんです。 真一さん、家計のことなど何も知らないものですから納屋から改造し始め、やがて堆肥場に至り更に家の隣の田んぼをひとつ潰し放牧場まで作ってしまいました。
その大事に育てた牛を時さん、これまた二束三文で競りに出し勝手に売って、またそれを元手に買い付けてしまうんです。
同じことが親戚筋の、あの下組 (しもぐん) の前田 (まえだ) 家や中 (なか) 家にも降りかかってきました。 中 (なか) 家など古いやり方しか知らないのにいきなり自宅前の入谷道脇に田んぼを潰して放牧場を作ってしまったんです。 その周囲に高圧線を張り巡らし。 しかし入谷村の誰も高圧線なるものを知りません。 子牛可愛さに寄って来て子供が触り卒倒してしまったんです。
この時中 (なか) の徹さんはどうしたかと言うと、その子供を叩きはしなかったもののこっぴどく叱ったんです。 これに反発した子供たちは手に手に棒を持ってきて高圧線が張り巡らせてある支柱をなぎ倒してしまいました。 文句を言おうにも次は中 (なか) なんぞなんとも思わなくなった親が出てきたんです。 親は、特に上薬研 (かんやげん) の金兵衛さんは斜めになった支柱を蹴倒しました。 そうしておいて牛を片っ端から鉞で叩き切って肉にしてやると憤ったんです。 お金を掛けたものすべてを廃止せざるをえなくなりました。
紙屋 (かみや) は幸いにも和牛でしたので被害は軽くて済みましたが、前田 (まえだ) 家に至って場所が元々和紙の漉き場でしたので牛舎に、しかも乳牛用に何から改良せねばならず甚大な損害に至りました。
紙屋 (かみや) はそれを嫁の里から仕送りさせて凌いでいました。 原釜 (はらがま) と同じく義理の祖父母はもちろん夫もふたりの子供も雅子さんにそっぽを向き始めており雅子さんも冷めた目でこれを見ることが出来たんです。
親子そろって根っからの長者の息子でしたので他人のお金で牛飼いを拡張させ、せっかく牛を飼っているというのに耕運機や脱穀機、精米機に貯蔵施設までほぼ他人様といえる人から掠め取ったお金でそろえ始めたんです。
普通なら対抗意識を燃やし拡張に余念が無い筈の寛治さんは雅子さんに、他人妻に溺れその分身は女欲しさに狂っていました。 池之原幸次さんじゃないですが、この情報を伝えることでひたすら雅子さんの本心による寝返りに賭けていたんです。
人とは不思議なもので玩具を与えられると目がくらみます。 もうそれしか目が行かなくなります。 寛治さんに連れられ、寝たきりの筈の雅子さんがたびたび部屋を抜け出していることなんか長嶋直己・真一親子にとって心の片隅にもなかったんです。 あるのは見栄とカネ金・・・です。
実家からも、もちろん紙屋 (かみや) の家人も夫までも見放してくれた雅子さんはしかし、この頃では入谷村自体好きになれず最初は何処かへ向かって密かに出て行こうとしました。 実際に縁遠谷 (えんどだん) を越え下組 (しもぐん) とは反対方向の真一さんたちが学校に通ったその道を辿ってみました。 でも途中で断念したんです。 家人に内緒とはいえ狂信的な寛治さんの介護によって再び外を歩けるようになったからです。
重大決心をしてみても入谷村に近い里では到底暮らし向きは立ちません。 それなりの資金がなければ都会に出ることなど夢のまた夢なんです。 何度も何度も思案し、結局寛治さんにすがることにしました。 もし捨てられるようなことになれば、その時はその時で考えればよいと安気に構えることにしたんです。 とはいっても寛治さんとの逢瀬は紙屋 (かみや) の敷地から誰にも見つからず抜け出さねばなりません。 現役の農婦でさえ首を横に振るような山越えを強いられるんです。
もちろん最初の頃は寛治さんが肩を貸し、それに掴まって恐る恐る足を踏み出していたんですが、何時の頃からか自分の足で歩けるようになり山にも登ることが出来るようになりました。 そう、彼女なりに行く道中何か面白いものを見つけそこまで登るのを目的としたからです。
原釜 (はらがま) の墓の脇の空き地まで辿り着くことが出来た雅子さんは心待ちしてくれていた寛治さんに胸のボタンを外し乳房を魅せたというより与えました。
「雅子さん・・・」
「なに?」
そこから先はもう言葉は必要ありませんでした。 雅子さん、寛治さんが乳房を掌で包んでくれたのを確認すると自らは手を差し伸べ彼の股間の膨らみをしなやかな手でそっと触れ意思を伝えました。 そうしなければこの先寛治さんを引き留められないと感じたからです。
寛治さんは雅子さんのこの動きに合わせ上着をまず脱ぎました。 それを見た雅子さんも上着を完全に脱ぎ上半身を露わにし寛治さんの欲情を煽りました。
ここまでの工程でお互いある程度今日こそはと思っていたからでしょう。 終始無言で準備を始めたというのに寛治さん、今度こそこの場で締め込みに入ろうと雅子さんの下半身を包んでいる衣服の剥ぎ取りにかかったんです。 以前の彼ならこうなる前に多少の声掛けなり唇を求めるなりをしたはずなのにこの日は切羽詰まっているようなやり方をしたんです。
雅子さんの両足を大きく開かせ睨みつけたかと思う間もなく全体を押し包むように舌を這わせ始めたんです。
「あああ・・・久しぶり、こんな気持ち。 入れて!」
悲痛な声を発する雅子さんを前にして長い間ここに彼女を伴って締め込みをと願い続けた寛治さんはズボンを脱ぐのももどかしく下帯一枚になると紐も解かず脇から棹を取り出し、まず今一度花弁を舐め娶わせに入りました。
相手は病み上がりというのに寛治さん、挿し込むと情け容赦なく腰を振りました。 寛治さんにとって待ちに待った憧れの雅子さんの胎内に恋焦がれ暴れまわる分身を収めた瞬間でした。 壊れ物のように扱わなければならない女体の筈なのに寛治さん、すっかり理性がぶっ飛んでしまっていたんです。 それはもうただただ射出したいがため粘膜と粘膜を擦り合わせました。 いつもの寛治さんならこういた時乳房や首筋などを味わうんですが、この時はもう棹が皺袋が狂ってしまっていたんです。
それもそのはずで大の男が我慢に我慢を重ね、やらやっと人妻を脱がせその肢体を目に収め、あまつさえ柔肌にナマで挿し込ませる約束を取り付けたからです。 熟れた女がもたらす男根への影響が如何に凄まじいものか我が娘の裸身で我慢させられ身をもって知り得たからでした。 入れた瞬間の狂おしいそぶりを目にしついに堰が切れてしまったんです。
雅子さんも女として扱われたのは久しぶりでしたので一気に昇りつめました。 寛治さんの両腕にしがみつき精一杯顔を近づけ媚びを売りました。 生きていることの、大人の男と女として秘め事を行うことの気持ち良さを躰全体で寛治さんに伝えたんです。 この先生き延び自分の世界を築くことを第一に考えていた筈なのに、いつの間にか肌の温もりの心地よさが先に立ったようでした。
ただ寛治さんが凄かったのは最終的に雅子さんの胎内に向かって射出しなかったところかもしれません。 なぜなら体調不良の彼女の中に注ぎ、万が一孕んだりすれば命取りになるからです。 それであっても脳天が痺れるほどの射出感を味わえたんです。 終わってみればただただバツの悪さが残りました。
その為寛治さん、限界ギリギリで引き抜き腹部に向かってぶっかけました。 次に逢うときも、またその次に逢うときも雅子さんとこうしていたかったからです。 こうなってしまったことを照れ、寛治さんは素早く衣服を身に付けましたが雅子さん、そんな寛治さんにすり寄って次の約束を取り付けました。 自分の守護神になることを、次もまた抱かせてあげる代わりに約束させました。
雅子さんは寛治さんに口づけを迫り寛治さんの意識が再び雅子さんの女淫に集中し始めたのを確認すると彼に背を向け家への道を辿りました。
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