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栄養失調の公子ちゃんに食べさせたくて大川の畔でウナギを釣る

 オリンピックがどうのと日本中が騒いでいたこの時代、入谷村ならともかく下薬研 (しもやげん) ともなると未だ肉を食べる習慣はありませんでした。
「あの子をそんな目にあわしたらただでさえ栄養が偏りがちなのに死んでしまうわよ」
阿部先生にこのように焚きつけられ見様見真似でも良いから大川で公ちゃんに食べさせるためのウナギ釣りでもやってみろと言われましたが、堤先生はウナギ釣りどころか魚釣りもろくにしたことなかったんです。

 「女将、ウナギって海から20キロも上流に当たるこんなところにホントにいるの?」
そこからして知らなかったのです。 ところが…

 「その程度ならよく知ってる爺様に頼んであげる」
この時代上手 (かんて) の源三さんじゃありませんが仕事もろくにしないくせに太公望ぶってる人は多かったのです。
薬種問屋の女将の口利きもあって夕まずめの川に入り目星をつけた岩の穴に仕掛け針を置いておき、早朝に引き上げるというやり方でウナギを狙いました。

 これまで幾度となく躰を合わせておきながら真紀母子が重篤な栄養失調に陥ってるなどと考えても見なかったのです。
「僕はただただ真紀さんの躰から精気を搾り取ってただけだったのか……」

 冷静になって考えてみれば思い至らなくもなかったんです。 
「あなたは私を殺す気?」
冗談とも取れない勢いで交尾を終えたばかりの阿部先生に食って掛かられたことがあったのです。

 薬種問屋の女将にして然りで
「こんなこと続けてたら躰がいくらあっても持たないわ」
と、こうまで言われたこともあったのです。

 (嬉しそうに受けてくれてたのは何故なんだ)
自分だけが愛おしさの押し売りしてたのかと気が付き思いっきり落ち込んでしまったのです。

 教師としても人間としても失格だと言われたようで目の前が真っ暗になりました。
「教えてください。 何でもしますから」
教育者を気取ってても文字は確かに読むことはできれども食い物となるとさっぱりだったです。 この時代悲しいかな比葡の里ではそういったものを扱う店はありませんでした。 すべからく自給自足だからです。 求めようと思えば各家々を回って必要なものを貰い受けるしかないんです。
挨拶は交わせどわざわざ敷地内に入って世間話しなどしたこともなかった先生はこの日から比葡の里一軒一軒を回り公子ちゃんのために卵をもらい受けたりしたんです。 そこで出たのが学校給食の脱脂粉乳の話しでした。
「アメリカさんはいい気になって送ってくれるけど獣の匂いがする飲み物なんてねえ~」
吐くに決まってるから、そういった時は卵に限ると言われたんです。
栄養価ばかり考えて決めつけてかかった教師側の負けでした。

 (そうか… あの子にとって給食の脱脂粉乳なぞ飲めるはずもなかったんだ…)
牛乳が飲めなくて泣く公子ちゃんを見てもただ単に好き嫌いの問題と一顧だにしなかったことを心の底から反省したのもこの時でした。

 もし本当に真紀さんとのことがご主人に感づかれていないとすれば加藤家に出向いても何ら支障ないはずだからです。
「これも賭けね。 他人様の女を手籠めにしたいんだから覚悟を決めなきゃ」
母子を前に漢同士決着つけるつもりで出かけなきゃとまで言われたんです。
女将さんに玄関先で塩を撒いてもらって釣ったばかりのウナギとこの時代貴重品であった砂糖を携え村に向かいました。
(爺様には焼き方はしっかり教わった。 公ちゃんと真紀さんの前で焼いてあげるんだ)
そう思うことで一歩一歩足を運びました。

 真紀さんに悪いと思いながらも加藤家の台所に忍び込んだ堤先生は、そこにこれから使うことになるであろう七輪さえも無いことに気づいていたんです。
「おそらく砂糖はもちろん炭や醤油さえろくに無いかもしれません」
心配そうにこう述べる先生の肩をポンッと叩いて
「ウナギ焼きの炭もこれぐらいあったら十分じゃ、炭がおこってからウナギを焼き始めるんじゃぞ」
爺様はとつとつとした口調で昔語りに苦労話を交えながらウナギのさばき方から焼き方まで全て教えてくれました。 なまじっかなやり方では美味しく焼けないこともです。 だから先生は七輪と炭俵までをも背負い峠を越えて愛する人の元に向かったんです。

 訪問することは事前に須恵乃さんを通して伝えてもらいました。 それ以前に数度に分けて生活費を手渡してくれるようお願いしてはあったんです。
(うう… 本当に大丈夫かなあ、もしも伝わってなくてご主人にどやされでもしたら…)
家の周りに酒瓶がゴロゴロ転がるような状態では生活費を渡したとしても次から次へと酒代に消えているはずだからです。
如何にマムシを飲まされてるとはいえもともと気弱な性格。 荷物を担いで歩いてる分には何ともないんですが、一旦立ち止まったりすると殴られっるんじゃないかという恐ろしさに脛が震えて次の一歩が出ないんです。

 (きっと玄関先で待ち受けていてどやされるだろうなあ… よそ様の家のことまで首を突っ込んでと…)
考えれば考えるほど悪い方へ悪い方へと思考が流れていき、とうとう足は杉山家の方向に向いてしまったんです。

 「あら先生、その恰好はどうしたの? 今日は公子ちゃんに会いに来たんじゃなかったの?」
「ええ~っと、その~… そのつもりだったんですが…」
背負ってきた荷物を下ろすでもなく、さりとて元来た道を引き返すでもなく、ただただ杉山家の屋敷内をうろつく堤先生に
「ああそっか~ 教えてなかったんだっけ」
須恵乃さん、突然笑い転げたんです。

 「あれからね先生、この集落の長でもある加納家の奥さんの美澪さんが……」
加藤家に出向き、お酒を飲んでろくに焼く技術も持たないくせにいっぱしの炭焼き気取りを決め込むんじゃないと説教されたというんです。

 「ふふふ、そりゃ効いたわよ。 なんせ新太さんにとって長い間焦がれた奥様の説教だもん」
ウチの亭主と同じく出稼ぎに遠くへ出て行った。 こう告げてくれたんです。
「えっ それじゃあ」
「待ってるわよ~ 真紀さんも公ちゃんも。 こんなとこでうろついてないでサッサと行ってあげなさい」
尻ではなく須恵乃さんが愛してやまない股間をポンッと叩かれたんです。

 喜び勇んで加納家に向かうと家の中から元気よく公ちゃんが飛び出してきて足元にまとわりつきました。
「ごめんよ、遅くなって」
早速担いできた荷を下ろしテキパキと真紀さんに指示を与えウナギのたれを作らせることにしたんです。
「タレって言ってもつけ焼く時に浸すだけだから深い皿に醤油の中にたっぷり砂糖が入ってればそれで十分なんだ」
「ほかに何か用意するもの無いの? ここではろくな野菜とれないから…」
家の中を覗かれまいと懸命になって外に追い出そうとする真紀さんの手をぎゅっと握りしめたんです。 すると…

 お金を頂いてもまだ体が回復しなくてとても比葡の里の里へは向かえないと、こう告げてきたんです。
「そうか… うんわかった。 取り敢えずご飯があれば今回はそれで足りると思う」

 そこまで言うと早速庭先に七輪を出して炭をおこし金網を乗せ予め調理しておいたウナギを焼き始めました。 まず安心させようとしたんです。
「ねえねえ先生、これってドジョウ? 公ちゃんドジョウなら食べるよ」
栄養失調が進むと舌の感覚がマヒし味覚が狂うと聞いたことがありました。 公子ちゃん、何を食べても吐いてしまい体調が回復できなかったようなんです。 それに下馬見川では冬季に海に下るウナギは何故か生息しないんです。 つまり公ちゃんはウナギなるものを実際見たことなかったんです。
「そうだねえ、この魚はもともと海を泳いでいたんだよ。 この時期になると、ほら、学校の前を大きな川が流れてるだろう」
大川を美味しい魚を求めて昇ってくると教えてあげると目をまん丸にして喜んでくれたんです。

 七輪に炭を足し火を点けても黒炭はそう簡単にはおこりません。 それを公子ちゃん、めまいがするだろうに吹きだけを奥から持ち出してきて一生懸命吹いてくれるんです。
「ごめんなさいね。 ウチではろくな収入無いからうちわなんか何処の業者さんもくれないんです」
しょげてこう述べる真紀さんに
「なあに、大丈夫ですよ。 枯草でも取ってきて突っ込んでやればあっという間に燃えますから」
構えて気楽にふるまおうとしました。

 一度目は軽く素焼きにし、真紀さんが作ってくれたタレを絡め再び焼き、焼き色が付いたらまたタレに漬けを繰り返してるうちに辺りに香ばしい香りが立ち始めました。
「うわあ~ 美味しそう。 凄いねえ公子。 ねえ先生、醤油とお砂糖だけだったタレがウナギの脂が加わりこんな風に変わるんだ」
サラサラだった醤油に粘りが出てきたんです。
「うん、そうだよ。 どう? ウナギはいっぱい持って来たから適当なのひと口食べてみてごらんよ」
堤先生はしっぽに近い部分、一番身が少なくてそろそろ焼き上がったウナギを別の皿に移しふたりに進めました。

 「どう? 気に入ってくれた?」
「うん、美味しい。 うわあ、こんな柔らかい魚食べたことない」
「そうか… 公ちゃん、今日はお母さんが炊いてくれてるご飯にこれを添えておなか一杯食べるんだよ」
美味しい美味しいと喜びを体全体で表し飛び回る公子ちゃん
「ねえ先生、こんなにあるんだから他の人呼んできていい?」
真紀さん、目をキラキラさせながらこう言ったんです。

 堤先生がコクリと頷くと病んで動きの悪い体を九の字に曲げ、ともすれば斜めに進んでしまいそうになるのを進んでは止まって方向を変えながら懸命に走り去っていったんです。
「公ちゃん、お母さんあんなんで大丈夫かなあ… 先生も一緒について行けばよかったかなあ」
阿部先生の言葉が蘇り思わず涙目になりましたが、
「大丈夫なんじゃない? 先生、ほら!焦げてる焦げてる」
公子ちゃんにとって今はもうウナギがどうなるか心配で心配でたまらない様子なのです。

 「おおそうか、くわばらくわばら」
つきっきりでせっつかれ懸命にウナギをひっくり返し焼く堤先生の隣で焼き上がったウナギの一番小さなやつをこっそり盗み食いする公子ちゃん
「あっ ネズミにお魚盗られた!!」
「ウチはネズミじゃないよ~だ。 公子だよ~」
ふくれっ面の公子ちゃん

 そうこうするうちに真紀さんが須恵乃さんと美澪さん、それに莞爾さんを引きつれ帰ってきたんです。
「あっ お母ちゃんだ」
本当のところ心配でたまらなかったんでしょう。 思わず飛びついて行ったんです。
「部落中凄い臭いがすると思ったらこうなっとったんだ」
噂には聞いたことがあっても莞爾さん、ウナギ焼きを見るのは初めてだったようで目をまん丸にしてその様子を眺めておられるんです。
「真紀さん、もう相当数焼き上がったんだ。 来られた方にも食べてもらってください。 貴女も食べて」
焦げ付くのを見張ればよいのか真紀さんの世話を焼けばよいのかわからくなってオロオロする先生を見て
「ふ~ん、あなたが噂の先生ね。 こりゃあ真紀さんもコロッといっちゃうわけだわ」
おお焼けた焼けたと踊ってみせたんです。
流石に長の奥様、美澪さんはふたりが恋仲ということをサラリと言ってのけたんです。

 その言葉を聞いてやっと真紀さん、素直に先生の指示に従いウナギを口に運びました。
「愛情たっぷりのウナギは、もうたまらんのう」
莞爾さんまで冷やかし始めたんです。

 あとはもう宴会騒ぎでした。
「おいおい公ちゃん、調子に乗って食べ過ぎたんじゃないの」
莞爾さんがこういうのも当然で、筵の上であおむけに寝っ転がりうんうん唸る公子ちゃんのお腹を堤先生に一生懸命さすってもらってるんです。
「先生すみません」
「うううん、これぐらい元気じゃないと回復しませんから。 それに久しぶりに公ちゃんのお腹に触れられて先生もうれしいんです」
「ついでに真紀さんもさすってもらったら? センセ上手そうだし」
美澪さんが冷やかすと
「そうだねえ、躰を九の字に曲げて歩いてるようじゃこれから先思いやられるからねえ」
須恵乃さんまでもがさすってもらえとせかすんです。

 「公子ちゃんだってさすってもらってるんだから遠慮することないよ」
「そうよ、こちらはこちらでその間に頑張って平らげとくわ」
加納夫婦は元々中 (なか) の史帆さんを交え同じようなことを散々やってただけに慣れきってます。 そんなことより堤先生が食べないとなればその分ウナギをより多く食べることができるんです。 加納家とて日頃は豊かな食事とはいかなかったらしく我を忘れて食べまくっていました。

 「う~ん… そうだ! こうしよう」
真紀さんを寝かせると堤先生は上着を脱いで真紀さんの腹部にかけさすり始めました。 殊に下腹部への施術では衣服で厳重に隠し撫で擦りしました。 腹部から下腹部にかけての施術が終わると俯かせ背筋に沿って指圧をしていったのです。
「ありがとう、なんだか気持ちよすぎて眠くなっちゃった」
眠くなったどころか緊張が解けたからでしょう、短時間ではあるけれど軽い寝息を立てて寝入ってしまってたんです。

 宴が終わると全員で協力し合って片付けし、解散となりました。
「さっきお風呂を沸かしておいてあげたわ、風に当たって疲れたでしょうからお風呂に入って今日は寝た方がいいと思う」
美澪さんにこう言われ真紀さん、恐縮がっていたものの公子ちゃんのこともあり素直にそれに従ってくれました。
堤先生は入浴介助に当たり、公子ちゃんと母である愛しい真紀さんの背中を流すとふたりを湯船に残し、また近く来ると告げて加藤家を後にしました。

 家の中のことはおいおい真紀さんから教えてもらえばよいことで、見られたくないと彼女が思う以上今はそっとしてあげたかったのです。

 「センセ、疲れたでしょ? ウチに来てお茶でもしてからお帰りになったら?」
こう言われて初めて中山道を背負ってきた荷の重さが相当体にこたえていたことに気が付きました。
「あんだけ気を張ってたら誰だって疲れるわよ、ここはウチに任せて気を楽にして頂戴」
抑肝散にやや近いような効能のある漢方を煎じて飲ませ、真紀さんに触れ耐えなければならなかった気持ちを汲んでいつものように足元に回りチ〇ポを口に含んでくれたのです。

 「無理に我慢することないわ、出したかったら気を楽にして今日の分は今日出してしまえばいいのよ」
言いおいて体制を入れ替え須恵乃さん、先生を跨ぐようにして鼻先に元気を出してくれるようオ〇ンコを突きつけました。
「今日は危険日だけど… 先生なら中に出してもいいわよ」
良いも何も須恵乃さん、自分もさすってもらいたかったのかもうそこは堤先生のチ〇ポが欲しとばかりにびしょ濡れなんです。
舐めあげるとなるほど、いつもに比べ匂いがキツイんです。 それに始まったばかりというのにもうグネグネと中が蠢いているんです。

 座卓に背を預けながら須恵乃さんを引き寄せ座位でコトが始まりました。
やがて薬効が効いてきたのか先生のチ〇ポは須恵乃さんのオ〇ンコが悲鳴を上げるほど腫れ上がってきました。

 「あああ・・渡してなるもんですか、これはウチの・・」
せっかく食べさせてもらったウナギの効力などどこ吹く風というほど責められたのです。 須恵乃さん、もう誰にも渡すまいと必死になって搾り上げたものですから棹を引き抜くたびに白濁液がまとわりついて溢れ出し白くそこいらに飛び散るんです。 須恵乃さん、忍であるからには相当の手練れであろうはずなのに手もなく組み伏されいいようにあしらわれてるんです。

 「呆れた! これじゃ介護してるんだかされてるんだかわかったものじゃないわ、それにあの金玉ときたら…」
あまりの疲れ様に気になって様子を観に来た美澪さん、覗き見るその激しさにあっけにとられ帰っていきました。

 俗にいう疲れマ〇とでも言いましょうか、この日は格別太くなりすぎてしまい適当に相手に合わせるつもりが介護に当たってくれている須恵乃さんを甚振ってしまったっていたのです。
「お世話になりました。 お陰様で随分躰が軽くなりました」
堕としてもらったお礼にと須恵乃さん、立つのさえ億劫なはずなのに健気にも堤先生の背中を踵で丁寧に踏みつけてくれたんです。

 「気を付けてね。 阿部先生や女将さん、求めてきても今日は疲れたからと言って適当にあしらうのよ」
中山ヶ原を過ぎた辺りまで見送り、須恵乃さんはいうことだけ言って引き返していきました。
「さあ、帰ったらまた大川につけ針だ」
おもいはもう次のウナギ漁に、真紀さん母子との将来に飛んでいました。

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