第1話「セーラー服の後姿」 Shyrock作

ずっと前方には、セーラー服の女の子が歩いていた。
霧島明日香……高校二年生。綺麗で、気品があって、勉強もよくできる子。
それに派手好きな今風の子じゃなくて、清楚で、お下げ髪がよく似合う子。
僕の憧れの女の子。
彼女は振り返ることもなく、まっすぐ歩いて行く。
僕は彼女の後ろ姿を見つめながら着いて行く。
彼女とはクラスは違うが、同じ学年。
僕達は家が同じ方向なので、クラブ活動の帰り道、偶然かち合うことがあった。
だから、彼女のあとを着いて行ったんじゃなくて、たまたま彼女が僕の前を歩いていただけなんだ。
遠くから見る彼女のうしろ姿、歩くたびに揺れるお下げ髪がとても愛らしかった。
彼女はクラブが文芸部ということもあって、日焼けもなく肌は透き通るように白かった。明るくて優しくて、それに賢くて何でもできる女の子。物静かで、笑顔がたまらなく素敵だった。僕はそんな彼女が大好きだった。
彼女と話したことは一度もなかった。僕は小柄だったし、顔もニキビだらけだったし、成績も目立たなかった。サッカー部に入っていたけど、レギュラーにもなれず、何一つ秀でた所がなく、とても彼女に話し掛けられるような人間じゃなかった。
彼女はいつも、近道をするために丘の上にある公園を通る。僕も着いていく。公園への道は傾斜がきつく階段があった。公園内は樹木の手入れがあまり行き届いていなくて、いつも鬱蒼と木々が繁っており暗くて視界が悪いので、一般の道よりずっと彼女に接近することができた。僕にとってはそれが密かな楽しみだった。
この日も、彼女は公園の階段をのぼった。僕は彼女が階段をのぼり切るのを待っていた。早く進み過ぎると、足音に僕の存在を気づかれる可能性があるからだ。彼女の姿が消えたところで足音を立てないようにそっと、しかし素早く階段を上がる。公園内には外灯はあったが、暗闇を照らすほどの明るさはなかった。階段は幅が狭いうえに、両側から生い茂る草でさらに狭くなっていた。
僕は音を立てないよう心を配りながら歩いた。微かな物音でも彼女が振り返るかも知れないからだ。彼女が振り返るかも知れないと言う恐怖感もあったが、反面、それを期待する気持ちもなくはなかった。
僕が階段をのぼり切っても、彼女はついに一度も振り返らなかった。込み上げてくる安堵感とかすかな落胆。それでも僕にとってはこの公園の中を通り過ぎるわずかな時間が至福のひとときだった。

一体何が起きたと言うのか。僕は激しい胸騒ぎに襲われた。心臓が大きく波打った。何が起きのか分からず、狼狽してしまった。何か悪い予感がして、僕は恐る恐る足を踏み出した。
押し殺した嗚咽のようなものが聞こえて来た。僕はもはや疑いようのない事態をやっと認識し始めた。繁みに連れ込まれた彼女は、暗がりでよくは見えなかったが、誰かに乱暴を受けているのだった。
組み敷く黒い背中。バタつかせる華奢な足。息が止まるのではないかと思うほどに密着した二つの影。そして、届かない悲痛な声……
僕はとっさに、彼女を助けなければならないと考えた。
しかし僕には、腕力もなく、勇気もなかった。
僕は足がすくんでしまって飛び出せなかった。
しかし、恐れをなして立ち去る事もできなかった。
僕は彼女が犯されるのを、ただ黙って見ていることしかできなかったのだ。
しかも、あろう事か信じられないような好奇心に支配されてしまった。
それは、彼女がどんな目に遭っているのか知りたいという好奇心だった。
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Shyrock様からの投稿を読んでつくづく思います。
官能小説は様々あれどほぼほぼ現実にそう文体であり感心させられます。
流れが良いんですよ。 目をつむっていても情景が浮かんでくるような気がするんです。
知佳のブログの中で「美貌録」だけアクセスが伸びず対策にブロ友をと探し回りましたが現実の世界とはまるでそぐわない文章の羅列、あれを見る限りこのような文を愛読する人たちって余程世の中に対し不平不満を抱いてると思えて仕方がありません。
しかもその手の小説の方が圧倒的に人気を博している当たり書く方としても考えさせられます。 一般小説を読む人と官能小説とでは計り知れないほど隔たりがあるんですね。
探す方面と探す手法を考え直します。