掘割の畔に棲む女 ~地獄の結末~

もっと悪かったのは千秋さんの啖呵にビビりあがった筈の漢どもが咽喉元過ぎればなんとやらで農園に再び牝を求め舞い戻っていたことです。 彼女にとって漢どもが至る所で放出しつつ見せびらかす股間であっても十分刺激になり得たのです。
自我を捨て懸命に働く女という生き物はその方向性をほんのちょっといじってやるだけで・・例えば生殖行為に目を向けてやるだけで目の色を変えて今度はそちらの方向に突っ走ります。
農作業だの見張りだのと言う役割さえ忘れ躍起になって不法侵入者を追いかけまわし格闘を繰り返す。 その間に連れの漢どもは農園から豊穣をごっそり持ち去ったのです。
責任を感じた千秋さんは噂に聞く蘭子さんの元に走ってしまいました。 窃盗については被害届を提出しましたが罰金刑で済まされるようなことになれば全額取り戻せそうにないからで、そうなると千里さんの治療費だって払えなくなるんです。
千里さんにも、もちろん千秋さんにも暗い過去があったようなのです。
恐らくでしょうが自分たちを産み育ててくれた母は貧しさゆえ時に家から誰にも知らせることなく姿をくらましました。 何処に何をしに出掛けたかというと蘭子さんの如く歓楽街に出かけ飯盛り女として務めさせてもらいつつ普通の給金と夜伽で得たお金を懸命に貯め持ち帰って一家の食費や借金の支払いに充てた。 そのための家出だったのです。
ご主人はもちろん家長もこういった折のお金の出処はうすうす気はついてます。 知っていてそれを追求すれば相手はいたたまれなくなり実家に逃げ帰るか今度こそ本当に姿をくらますだろうし当然離縁になるだろうから、そうなれば嫁の来手が歳食ってるだけに今度こそなくなる可能性のある。 ここは黙ってこらえれば良しとしていたんです。
今も昔も労働者が懸命に働いたとしても得られるお金など微々たるものだからです。
ある人などそのこらえた分を今度は仲間内の嫁を狙うことで気散じていたんです。
田舎の嫁とはだから貞操観念があって無いが如しでした。 だからこそその分自分の子供たちには貞操観念についてはきつく当たったんです。
その反発でしょうか。 千里さんや千秋さんらと齢が一回り以上違う子たちはわざわざ置屋と呼ばれる旅籠などに出向かず気が向いたときに自分流のウリを自分流で宣伝し、そうやって見つけた客と自分が楽しめる方法でヤルんです。
買う方にすれば敷居は思いっきり低くなります。 高値の華と諦める必要などどこにも無いからです。 しかしその反面中間に置屋という存在がないだけでサービス内容を客の方から要望してみたって無駄で、場合によっては魅せてもらうだけで高額要求になるなど買う側にとって捨て銭となりうることだってあります。 その結果漢からみれば結合の対象とみなされなくなっていったんです。 当然価格は崩落し女の子も見た目が綺麗でなければ売れなくなります。
その点変に厳格に育てられた千秋さんはそれが出来ずお金を稼ぎだすため、いや、盗られたものの対価を返すため不自由極まりない置屋に躰を売ってしまったんです。 蘭子さんの場合年齢からくる躰の都合というものがあり結合は要求されなかったのですが千秋さんは違いました。 若い子が手あたり次第に顧客獲得するのもですから置屋への客足が遠のき始め置屋もホンバンをウリにしなければならなくなったのです。
官憲の目を気にし目立たないよう客を呼んでいた置屋も、こうなっては背に腹は代えられずこっそりホンバンを取り始めたため若い千秋さんは結合客のみ回されそれが借金の対価の対象となったのです。
千秋さんにかつてひどい仕打ちをした蘭子さんはすっかり反省しせめてもと温泉街の元旅館 (旅籠) の経営者 小椋孝義さんに頼み込んで千秋さんに孕まない・病気予防のためピルを服用させました。 まさかただでさえ少ない客に若い子と差別化を図るためゴムを要求するわけにはいかないからです。
それでもより多くの客を呼び込むため千秋さんに無理と分かっていながら一度に複数の漢をあてがい輪姦・乱交に持ち込ませ時間単価を引き上げこれも回収に充てたんです。
千秋さんのそれはムショを出て後の躰重ねは隆宏さんへの愛に満ちたモノでした。 しかし農園に現れた漢たちによってほんの少し荒みが生じ、そして置屋に移ってからはいよいよ実の母がそうであったように怒りとも欲情とも取れるまぐわいに変わっていったのです。
最初は初顔合わせの如く恥じらいを込めた結合から始まるのですが漢ふたりが競うように羞恥を強要し始めたころから豹変し獣同士が威嚇するような交わりに代わるのです。
若い女の子に諂った場合運が良ければヌイてもらえていたものが千秋さんに交わると平伏どころか凌辱こそ漢の鏡のよな気分にさせられ精管に痛みが生じるほど生中でヌイかせてもらえたのです。 いよいよ負け犬になり切っていた客が、皆が皆肩を怒らせて帰るほどに代わるのです。 千秋さんじゃありませんがこの客たちは借金してまで通い詰めるようになりました。 それでも場末の置屋の女にとって借金返済は苦難の道でした。
元々の仕事が農業ですので現金収入はなくとも食べるだけなら何とかなります。 しかし収入源の少ない農民が身売りの借金 (置屋の主張する立て替え払い) 返済などできようもありません。
自分の責任で借金を背負った以上無理を承知で漢たちの面倒を見る千秋さん。
千里さんはお金が払えない以上退院するしかなく、せっかく掘割近くに居られたのにまた独り山奥へ逆戻りし農場で働かざるを得なくなりました。
ただひとつ以前と違うのは千里さん、農作業の暇を見つけては千秋さんに着替えなどを届けるため会いに行かねばならず、そのため温泉街に向かう途中にある掘割にも頻繁に立ち寄らねばならなかったのです。 気の利いた買い物をしようとすると店はそこしかなかったからです。
千里さんが掘割に顔を出し始めたことでこの地区に長い間棲んでいる人たちは千里さんが再び掘割に帰って来たんだと勘違いするものまで現れ始めたんです。
宮内司もまた面倒を見ている千里さんの子供 美月ちゃんが自我に芽生え始めたので改めて千里さんの行方を追うべく掘割に出向くべく資金を貯め始めていました。
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