官能小説『ただいま』 第7話 恋歌様作

きた。一度出した分だけ、堪えていたのだが、今度は我慢できなかった。腰の辺りか
らの“ぐっ!”と言う感触に気力が切れ、発射の感触とそれに伴う快感が下半身に走
り――同時にまるで“欲しいものを手に入れた”かのような不思議な満足感が胸を一
杯にする。
「ひ…い、いっちゃうぅぅ…お、に、にいちゃん…感じるのぉぉ…お…にいちゃんの
熱い…」
更に痙攣さながらに悶える妹が悲鳴を上げつつ痛いばかりに兄にしがみつく事実
に、男としての――まごう事無き“実の妹へ”の愛情と独占欲に、文字通り震えるほ
どの満足感で全身がひたるのだった。
「離さないからな。夏子」
深い満足感とともに亮一は、実兄の肉棒に奥までえぐられたまま、半分失神してい
る妹に囁いた。同時に抱きしめる両手と腰の辺りに力が入ったのは、故意とも言えな
い自然な動きの故である。
「あ…」
妹が意識を完全に取り戻すまで、兄はしっかりとその熱くなった半裸身を抱きしめ
ていた。
ほんの十数分後―――
「ふ――っ。お兄ちゃん、素敵!かっこいい――っ!ごちそうさまでした!やっぱ
り、お兄ちゃんだけが夏子の“彼氏”よね“」
夏子であったが、もちろんこれで終わりではなかった。
「で、続きはご飯のあとにしよ」
「え?」
「精のつくもんを用意しているから一杯食べてね。今夜は麦とろご飯と鰻よ!金曜だ
からもちろん焼きニンニクもあるわ!」
「ちょっと待て!続きって何だ?俺は疲れているんだから…」
「大丈夫!あとナースとバニーと浴衣は準備しているから!お兄ちゃんならあと三回
は軽いでしょ!夜明けのコーヒーまでお願いね!
あ、安心して。チャイナ服とサンバとマーメイドとバーチャと喪服は間に合わな
かったけど、来週入荷予定で――」
六○三号室
「ただいま」
健一は返事を期待せずにマンションのドアを習慣的にあけ――どきりとした。
「姉さん。帰っているの?」
玄関に見慣れたハイヒールが脱ぎ捨てられている。まだ、午後三時だと言うのに
――何かあったのであろうか。
少なからずびくびくしながら健一はダイニングに顔を出す。誰もいない――しか
し、流しには使用後の皿が二枚置かれていた。
「やっぱり…姉さん。帰ってたんだね」
毎朝、この家のキッチンは健一が登校前にちゃんと片付けている。よって、これは
片付けをしない――本当は家事全般をしない――人物がすでにこの部屋内に存在する
と言う事なのだ。
「姉さん…」
リビングに“諒子”は――探していた健一の姉はいた。スーツ姿のままでソファに
ひっくり返っている。ぎろり!と弟を睨んだ目が据わり頬が赤くなっているのは、
テーブルに並んだビールの空き缶三個とこちらも空になったワインボトル一本――そ
してそれ以上にこの時間に健一が帰ってきたせいに違いなかった。
「あ、あの…」
「今まで何やってきたの?」
押さえようともしない姉の声は、弟には遠雷のように威厳――いや、恐怖をもって
聞こえた。少なくともそれだけ容赦はなく、最悪の事態の危険性も同レベル以上なの
だ。
「今日の講義は午前の、しかも一時限だけだったわよね?健一。
――で、今、何時か知っている?」
「ゼ、ゼ、ゼ、ゼ、ゼミの――そ、そう、今度、同じゼミになる連中とスタバで顔合
わせしていたんだよ!ごめん!姉さんがこんなに早く帰ってくるなんて思わなかった
から…」
弟の必死の主張は――絶対に嘘ではないにも関わらず――姉にはとどかなかった
――或いは聞いていなかった。
「ゼミ?ああ、そう」
一瞬だけ納得したふうをしたのは、姉の弟への純粋な悪意である。
「で、その中に女はいたの?」
一応、さりげない質問であったが、弟は即答できなかった。その意味することを心
の底から理解している故である。
「慌てているわりには静かね。それとも聞こえなかった?お姉さんは、今日、健一が
お茶した相手の中に“女の子”がいなかったかどうかを聞いているの」
「――――」
姉が何を言っているかが“この”弟にはよーく判っている。だから何も言えない
――そしてそのこと自体が明確な返答であった。
「やっぱりね」
諒子の宣言は健一の脊髄まで貫くばかりに悪意に満ちていた。
「姉のあたしが弟の“あんた”の為に、ほとんどの女の喜びを捨て、秘書として会社
でめっちゃ嫌なじじい共の相手に神経をやすりにかけられるような日々を送ってい
るって言うのに、その稼ぎで生きている弟のあんたはよりどりみどりのキャンパスラ
イフを堪能しているってわけね」
どれほど悪意に満ちた声であるかについては、言われた健一が顔色を変えてわなわ
なと震えだしたことからも実証できる。とにかくこの弟にはよほど、“怖い”ことで
あったらしい。
「しかも、ついにはどうにもこうにもストレスに耐えがたく何とか午後休を取り、こ
の日この時間なら家にいるはずのあんたの顔を見て、せめてもの癒しにしようと半死
半生で帰ってきたあたしの気持ちって――判る?どっかのブス共と楽しく“お茶”し
てきた健一君に?」
酒精に頬を染めた姉の糾弾に弟は沈黙で応える事しかできなかった。
そして――
「ごめなさい―――姉さん。どんな罰でも受けます。僕をお仕置きしてください」
第三者が見れば仰天したであろう。弟は――今時のいけてる学生風で、異性には事
実もてもての――彼はそのまま膝をつき、頭を床まで下げたのである。
「ふーーん」
弟が土下座して謝っているのを紅い頬の姉は意地悪に見つめていた。ややしてか
ら、次の命令をしたのは純粋な悪意からである。
「まあ、ちゃんと罪を認めるのならお仕置きしてやってもいいけど――それには準備
が整っていないようね」
弟の肩が一度だけ震えた。それは姉の発言への疑問のゆえではない。判りきってい
る内容への反応であった。
「はい……」
弟は素直に答えると、姉の指示に従った――すなわち、服を全部脱いでから再度姉
の足元に土下座したのである。満足そうな姉の哄笑だけが部屋へ響いた。
「ふん。悪いことしたと判っているのなら、玄関からその格好にしなさいよ」
勝利感に満ちてのたまう姉に弟は床につけた頭を一ミリも上げられない。
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