病的性欲亢進 ~素麺に怒る母~

こうなるとある瞬間、誰かが代わってこの責任を足らざるをえなくなる。 その日運悪く閉店作業に当たってしまったのが彼女だったのだ。
目から鼻に抜けるような物言いをする関西系女性が果たしてこういったことに気付かなかっただろうかと言えば…残念ながらこの日に限って気付かなかったのだ。
しかも気付かなかったことがもう一件あった。 それが食事当番。
残務が終わって気が付けばもうとっくに各家庭では食事を終え寝ようかという時間。 仕方なく彼女は最も素早くできる調理、素麺をこの日のメニューに選んだ。 遅れを取り戻そうと、失敗をどうにかして埋め合わそうと彼女は給料前にもかかわらず播州素麺の、しかもかなり高級品を購入し持ち帰って調理して供した。
ところがこれを見た母が激怒した。 一生懸命働いて帰ってみれば食事は素麺ただ一品。 こんな時間に帰って来てこれが食事かと我が娘に理由も聞かず怒鳴り上げた。
そこにはもはや母の慈愛などというものはなかった。
怒る母にしてみれば確かに言い分はあっただろう。 ふたり暮らしの家計の大半がこの寝る時間近くまで働いて帰る母の収入によって賄われていたからだ。
しかしここに至るまでには伏線があった。
尾崎と名乗る彼女はこの日、本来なら自分の足で立って歩くことさえできないほどに体調不良だったのだ。
残業をこなせたのもそうなら仕事からの帰りに思い立って播州素麺をわざわざ遠回りし求めたのも要は尽きかけた気力を振り絞ってのものだったのだ。
母が怒ったのはそうなるまでこの母は黙って黙々と自分の食事当番の時はちゃんとした食品を買い求め、どんなに遅くなろうと食事を作って出していた。
その食事を食事時間になっても帰ってこようとさえしなかった娘なのである。
帰れない理由と言おうか、遊び相手が誰なのか母は知っている。 その漢が娘に対しどんな仕打ちをしてきたか母はちゃんと知っている。
知ってはいただろうが
--- ここから先は想像だがこの母も同じような人生を送ってきてはいまいかと思われるのだ ---
敢えて何も言わなかった。 云ってみたところで今更治るものでもないと思ったのではなかろうか。
結局ふたりともこの日は何も食べず寝た。 素麺は哀れ生ごみとなったのだ。
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