官能小説『筒抜け』 第5話 (最終話)

美佳がすねてみせた。
「ごめんなさい、私が誘ったの。弘信さんのこと嫌いじゃなかったから。」
晴美が俊樹の方を見た。俊樹も面白くなさそうな顔をしている。
「今すぐどうこうって話じゃないけど、俊樹とはいずれけじめを付ける日が来るでしょ。」
「無理に付ける必要あるの。」
美佳が口を挟んだ。
「いずれの話だけどね。」
「嘘。晴美さんとパパ、違うシナリオを考えてたんじゃないの。」
「え、どう言うこと。」
「俊樹くんが久しぶりなんて言わなければ、パパが私のところに来る手筈だったんじゃないかしら。でも、昨日まで俊樹くんが留守だったことがバレちゃった。だからパパが慌てて帰って来たんでしょ。それに、パパが帰ってきた時、私素っ裸だったけど、パパ、不思議そうな顔一つしなかったじゃない。」
「白旗上げましょ。」
晴美がそう言って両手を上げた。
「降参だわ。美佳ちゃんがパパと思い通りになれば万事上手く行くと思ってたのよ。」
「それって、もしかして、私と俊樹くんをくっつけようって魂胆。」
「弘信さん、何か言ってよ。私じゃ美佳ちゃんには太刀打ちできないわ。」
「俊樹もパジャマ着なさい。私たちは帰りましょ。後はこちら次第。」
俊樹も立ち上がってパジャマのズボンを履いた。玄関を出るときに俊樹が美佳に振り返った。
「僕、美佳さんのこと嫌いじゃないよ。」
残された弘信と美佳が裸のまま向き合っていた。二人ともなかなか言葉が出て来ない。たまりかねて口を開いたのは美佳の方だった。
「パパはどうしたいの。」
「俺の口からそんなこと言えるか。」
「ってことは、私を抱きたいの。抱いてもいいって思ってるの。」
「美佳はどうなんだ。」
「パパから先に言って。」
「だから、俺の口からはそんなこと言えないって言っただろ。」
「駄目、ちゃんと言ってくれなくちゃ。」
「その前に美佳の気持ちを聞いておきたい。」
「そんなの狡い。」
仕方ないと言った顔で弘信が美佳の目を真っ直ぐに見詰めた。
「分かった。物凄く後ろめたいけど、娘を欲しがるなんてとんでも無い父親だけど、美佳が欲しい。」
「本当に、嘘言ったら許さないわよ。」
「本当だ。ついこの間まではそんなこと夢にも思わなかったけどな。」
「小便臭い小娘には興味無かった。」
「許せ。まさか娘の下着見て喜ぶ訳にも行かんだろう。」
「照れ隠しにあんなこと言ったの。」
「うん。」
「もう。あれで私、物凄く傷付いてたのよ。」
「何で。」
「パパが正直に言ったから私も言うわ。晴美さんと俊樹くんのこと聞きながら、私も本気でパパを誘惑しようと思ってたの。だからスカートも捲って見せたのに、小便臭いなんて言うんだもん。」
「最後に一つだけ聞いておきたいな。」
「何。」
「何で俺なんだ。他にもっと若い、格好いい相手が幾らでもいるだろう。」
「ふふ、それ言う前にパパに謝らなくっちゃ。」
「何を謝るんだ。」
「私、バージンじゃないよ。」
「そんなこと分かってる。一昨年くらいだろ。」
「うん。分かった。」
「急に女っぽくなったからな。」
「謝るのはそのことじゃないの。私、これまでに二十人くらい寝てるんだ。」
「はあ、二十人か。半端な数じゃないな。」
弘信が溜息をついた。
「そんだけ寝ても、この人ならって男は一人もいなかったの。パパと同じくらいの人とも寝たけど、最悪だった。」
「おいおい、まさか援交じゃないだろうな。」
「そこまで墜ちてないよ。凄いレストランでご馳走して貰ったり、シャネルのバッグとかは買って貰ったけどね。」
弘信が美佳のお気に入りらしいショルダーバッグを思い出した。どんなに安く買っても十万以下と言うことはないだろう。現金貰わなかっただけマシだと弘信が自分に言い聞かせた。
「やれやれ、そんな話聞くと、ますます元気が無くなって来ちゃうな。」
「だから、ごめんなさいって最初に謝ってるの。」
「それで、何でパパなんだ。」
「パパの、が気持ちよさそうだから。」
「パパの何が。」
「お・ち・ん・ち・ん。」
美佳が弘信の前を指差しながら言った。
「馬鹿言うな。」
「ううん、これまで見た中では中くらいだけど、形がいいから。」
「変なとこ比べるな。」
「へへ、ごめん。それと、パパなら自分勝手じゃなく、優しくしてくれるでしょ。晴美さんとの聞いてたら、絶対そうだと思った。正直、物凄く妬けちゃった。」
「しかし、恐ろしい娘を持ってしまったもんだ。」
「そうよ。こうなったらもう逃げられないから覚悟してね。」
「美佳はそれでいいのか。」
「うん。俊樹くんも私のこと嫌いじゃないって言ってるし、私も一人は年下の男がいいし。」
「で、年上がパパか。」
「うん。パパだって晴美さん、満更じゃないでしょ。美人だし。」
「まあな。それに、もう抱いちゃってる。」
「後は私とパパね。その後に俊樹くんも控えてるけど。」
「改まってそう言われてもなあ。」
弘信が眩しそうな目で娘の身体を見た。
「大丈夫。私がリードして上げるから。ところでパパ、何人知ってるの。」
「美佳より大分少ないよ。」
「でしょ、私の方がきっと上手だよ。」
美佳が立ち上がって弘信の手を取った。その手を自分の胸に導いた。風呂場に入ると美佳が弘信の身体を洗い始めた。石鹸を塗りたくった手で握られた弘信がようやく頭を持ち上げた。
「お待たせ。パパったら往生際が悪いのよ。」
美佳がダクトに向かってそう言うと晴美と俊樹の笑い声が返ってきた。
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