とびっこエレベーター
漢はポケットから手のひらに収まるほど小さなリモコンを取り出して見せた。
「こいつで強弱も操作できる。 こうすると---」
「いっ、いやっ! やめてっ! お願い…… んんっ!」
彼女は大きく口を開き荒々しい息を吐きながら大きく胸を喘がせた。
快感というより苦痛に満ちた彼女の顔はぞっとするほど艶やかだ。
「今のが最大限の振動だ。 小さい振動で長時間弄ぶのも面白い。 もちろんしたことはないだろう?」
最初の階でエレベーターは止まりドアが開いた。
止まって動き出すまでにやけに長く感じた。
彼女の顔は瞬く間に汗ばんでる。
「誰かが乗ってきたら…… 止めてあげて……」
なお美は息苦しかった。
「誰かが乗ってくるほうがおもしろいんだ。 そうだろう? いつかなお美のアソコにこいつを入れて外を歩かせてみたい」
我が意を得たりとほほ笑む漢を前に、なお美の動悸が激しくなった。
「朝からなお美とだけいいことをしたんじゃ、あいつに悪いからな。 だから、なお美がいる間に逝かせてやろうと思ったんだ。 儂って優しい漢だろう?」
そう言いつつもまたポケットに手を入れゴソゴソやりだした。
「んんっ! 強くしないで!」
「今日はしぶといな。 まだ逝かないか」
「あああっ!」
漢の愛人がエレベーターのボタン付近に手をかけ硬直し、直後に激しく打ち震えた。 法悦を極めたのが分かった。
「よし、許してやるか。 ここで悲鳴を上げられたんじゃまずいからな。 このまま切らないで何度も逝かせると面白いんだが……」
漢は面白がるが、当の愛人はぐったりとし汗まみれになっていた。
一階のドアが開いた。
なお美は唖然とし、エレベーターから下りるのさえ忘れていた。 漢に手首を掴まれ外に引きずり出されて初めてそこが一階だと気づいた。
「面白いことは山ほどある。 今度出会ったらひとつずつ教えてやろう」
漢はぐったりしている愛人をエレベーター脇のソファーで待たせ、なお美をエントランス・ホールの外まで送った。
タクシーが待っていた。
漢はこれから部屋に戻って愛人を抱くかもしれない。 そう思うと嫉妬と羨望と疼きでなお美の躰は熱くなった。
「今夜でも明日でも、来たい時にまた来ていいんだぞ。 たまたま儂がいなくてもあいつが相手をしてくれる」
漢は意味ありげに笑った。
話したいことは山ほどあった。 だが、多すぎてかえって言葉にならない。 なお美は漢に軽く会釈してタクシーに乗り込んだ。
半日足らずの間になお美は漢の虜になってしまっていた。 これから訪れるであろう淫靡な未来の時間を思い、なお美は切ないほど昂ぶっていた。
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