長編官能小説 『クロス・ラヴ』 第31話 Shyrock作
揺れる二つの影
相手が変わればキスの味も変わる。俊介は初めて交す球とのくちづけに新緑の息吹のような新鮮さを感じとった。
そしてくちづけは次第に官能の園へといざない、俊介の下半身は早くも変化の兆しを窺わせていた。
浩一とて同様であった。
最初は怒涛のようなありさのキスの前にたじろぐばかりであったが、次第にありさの唇に応じるまでになっていた。
ありさ(チュッ・・・)
浩一「う・・・だめだよ・・・ありさ・・・ううっ・・・」
ありさ「いいの(チュッ、チュッ・・・)」
浩一「・・・・・」
浩一はありさと唇を重ねているうちに次第にその気になってきたのか、上にいるありさの背中に手を廻すとぐっと抱き寄せた。
胸と胸とが重なり合う。
男と女とは不思議なもので、よほど嫌いな相手ではない限り一旦この体勢に填まれば開き直ってしまう傾向がある。
人間は理性という鎧を身にまとった生き物であるが、時には鎧を脱ぎ捨て本能丸出しになる場合がある。
最初、男性ふたりを挑発したのはありさであり球であった。
だが俊介と浩一もその危険で甘美な香りに誘発され次第に混融しようとしていた。
一方、俊介は覆い被さる球の胸に手を伸ばした。
球「あぁ・・・」
3メートル向こうには彼氏である浩一がいる。
だけど自分は今、彼氏ではなく別の男性に乳房を弄られている。
球はかつて経験したことのない異常な興奮に包まれていた。
球「あっ・・・ああっ・・・」
暗くてはっきりとは見えないが、向うで二つの影が蠢いて揺れている。
それは紛れもなく浩一とありさなのだ。
ありさの仕掛けに浩一はどう対応しているのだろうか。
浩一も既にその気になってしまったのだろうか。
時折聞こえてくる吐息が気にはなるのだが、こちらも衣擦れの音等でうまく聞き取れない。
俊介の指がカップの中に潜り込む直前までは、球の耳はありさたちへと注がれていた。
ところがありさの場合、球とは少し様子が違っていた。
ありさの嫉妬深さも相当なものであったが、彼女の性格ははっきりいって猪突猛進型である。
1つの方向を決めたら振り返ることなくまっしぐらに突き進む傾向がある。
最初は俊介と球をかなり意識していたが、今は気持ちを切替え目前の浩一に没頭している。
ありさはキスを一旦中断すると、少し体勢を入れ替え浩一の下半身に手を伸ばした。
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