弱い立場の自衛官に付け入る新任女教師

もうひとつの趣味がアマチュア無線。
「CQCQ CQ2メーターバンド」
暇さえあれば遠方にいる同じ趣味を持つ仲間に呼びかけていた。 ピカピカの新車にアマチュア無線、それにどちらかというと可愛らしい顔立ち。 学校内に無断駐車を繰り返す常習犯。 楽しいことのひとつとしてないこの島へ赴任してきた新米教師にとって若松は格好の餌食となった。
教師という職業は早出残業が当たり前と言われる職業のはずなのに、若松が休みで下宿に帰って来ると、どこからともなく現れ彼の部屋に入り浸る。 相部屋の田所を邪魔者扱いし部屋から追い出すなんてことは日常茶飯事だった。
しかもふたり組で現れるものだから若松もたじたじになる。 彼女らの気が向けば対馬の南端にある厳原へケーキを買いに行きたいなどと当たり前のように要求してくる。
比田勝~厳原間は当時、片道100キロある。 それも相当の上り下りと急カーブが続く。 これを独りで運転しようとすると、相当疲れる。
その分一旦比田勝を離れると車などほとんど通らない山中。
「疲れたら途中で休憩を入れましょう」
人通りがないのに道に脇に広場があるとか、万関海峡などに差し掛かると決まって止めさせ、誰も通りかからないことを良いことに間一髪のキワド過ぎるデートと言おうか雰囲気を楽しんだ。
それというのも若い自衛官が各村々の女の子を巻き込んだ大人の関係風な話題でここら一帯は一種異様な雰囲気が漂っていて、女教師さんも授業どころじゃなかった。 同じ女としての意地にかけ、負けまいと、彼女らなりのナンパに励んだ結果がこれだ。
ふたりとも授業中と言わず普段も常にジャージで過ごしていたし、当初若松の部屋に押しかけて来た時もジャージだったが、何時の頃からか若松に会いに来た時だけミニを穿いて来るようになった。 その格好のまま助手席を半分倒しドライブ中の会話を楽しむようなことをやる。
面白いことに若松と田所は何故か女に興味を示さなかった。 示さなかったというより、彼らが生まれ育った環境が馴れ合いで深い関係に陥ることを忌み嫌ったのではなかろうか。 相手の罠にはまらず、とにかく平静を保つのだ。
ひょっとするとだが、若松と田所は高卒で入隊し3年、つまり21歳。 方や大卒だから少なくとも1歳以上年上。 姉さんに興味を示さなかったのかもしれない。
女性が一旦こうと決めると恐ろしいもので、ふたりの新任女教師のうち本土から派遣されてきた女性は学校が探してきた賄付きの下宿を断り、あの、加奈子が比田勝に上陸し、最初に目にした小川、その畔の掘っ立て小屋を借りてしまった。 若松に会いに来て、出来たら泊って行ってほしいからだ。
部屋を借りた当初は若松らをわざわざ呼び寄せ鍋パーティーを頻繁にやらかした。 呑ませたら運転して帰れないと踏んだからだろうが、若松が口にするのはせいぜいコップ1杯のビール程度、しかも夜勤に慣れ切ってる若松らは夜を徹して騒ぎ、翌日昼前になると部隊へと平気の平左で帰っていった。 もちろん目的など果たすゆとりなく、若い女教師はただ散財させられただけだった。
焦って二度三度と同じようなパーティーに誘うのだが、なにせ自衛官たるや食べることも職業のうち、普段から脂っこいもので攻めまくられてる。 食い物パーティーをそう喜ぶわけもない。 パーティーの内容を大人びたものに変え誘う。
こうなると取り残された島内出身の、どちらかというと背が低くきれいじゃない彼女は居ても立っても居られない。 部屋を借りた女教師がかたくなに自分の部屋で若松が来てくれるのを待てば、一方の女教師はいつもと変わらず若松たちの部屋に押しかける。
とうとうふたりは相手と反りが合わないと一緒に行動しなくなり、やがて精神を病んだと休暇願を出し、その期間が満了すると今度は言い訳できないものだから教師の道をあきらめ、それぞれ郷里へ帰ってしまった。
このふたりに対し、漢日照りであろうとわかってはいても身分が違い過ぎて、誰もおいそれと手を出さなかった。 それが益々彼女らを辞職に追い込んだようなのだ。 これからすると彼女らは、大人の女としてやることだけはきっちりやったように思える。
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