薄明りの部屋で掛かってこない電話を、ひたすら待つ女

それと比べ幾世は、例えばこの辺りではまだ貴重だった固定電話を幾世個人の部屋に置いたほどだ。 欲しいものは、どんなに苦労してでも本土に父親が出向き、買って来たほどだ。 幾世だだから、年頃になると男達と連絡を取るのにこれを利用した。
「もしもし、幾世ちゃん? ごめんね、待った?」
「ううん……ちっとも待っとらんとよ……ごめんね、玄関は寒かろうもん……」
浜田も、部隊の玄関に据えてある赤電話が空くのを待って、幾世に連絡を取った。 浜田が当直に聞こえないよう受話器の口を押さえるようにし、床にしゃがみ込んで電話を掛ければ幾世も、部屋の戸を閉め切って小声でこれに応じた。
「平気だよ……外套着込んできたから……」
「ほんなごて……ウチが温めてあげんば良かとね……」
「何時迎えに行ったら出てきてくれる?」
シンデレラじゃあるまいし、気持ちを分かってくれたなら出て来いよと誘いかける浜田に
「来んとって! 見つかったら怒っと」
母はまだしも、告げ口されたら父が怒ると幾世。
「仕事終わって家に帰った頃を見計らってそこに行くから……」
オンボロ軽で自宅の真下に乗り付けると伝える浜田に
「いけんとよ……、あんひと来とるけん……林田さん……今夜も泊まるごたる…我慢とばい……ねっ、お願い」
義理の姉の裁量で林田がいつもの如く泊りに来て、隣の部屋で幾世が電話を終えるのを待ってて、待つ間に母とふたり、幾世の学校時代のアルバムを勝手に広げ話し込んでるから、喧嘩になるから来てくれるなと警告を発する。
浜田には分っていた。 いつぞや、幾世や林田が仕事でいない留守を狙いその母に会いに行ったことがある。 その時、泊まりき来た林田を幾世の部屋で寝かすと訊かされていた。 年頃だからどこかに良い人はいないものかと言いつつ。
崖の上の、ネズミの額ほどの敷地に建てた家では、応接間と言っても両親が寝るだけで精いっぱいの広さ。 誰か泊まるとなると一家の中で唯一優遇されている幾世の部屋しか相手なかった。
その幾世を改心させようと浜田は、ありとあらゆる言葉を駆使し口説いた。 幾世も本気になって応じてくれたので浜田同様、いや、それ以上切なく、恋に飢える。 それを薄壁一枚隔てた隣の部屋で林田は嫉妬に狂いつつ聞き耳を立て、電話がおr割るのを待つ。
おおよそ1時間に及ぶ電話を終えた頃には幾世の気持ちは平常心を欠いていた。 話し疲れた母はとうに寝入ってしまって、気を利かせた林田は途中から灯りを落としている。 幾世も、浜田との話しで心が乱れると、そうと気づかれないよう部屋の明かりを落とし、暗い中で受話器を握っている。
その夜も林田を泊めることになってるものだから、連れ込み宿に倣って布団がふたつピタリと寄せるように並べて敷かれていて、まるで夫婦のような生活を送っていた。 こうなると浜田から掛かって来た電話に幾世が出て恋を語らうというのは不貞に近い、嫉妬に狂うことになるその電話が終わるのを待って林田が部屋に入り幾世を責めるのがいつものやり方、約束事だった。
「今日もずいぶん口説かれてたじゃないか。 あいつ、なんて言ってたんだ」
真っ暗な部屋で顔を幾世の胸辺りに押し付けるようにして、林田が詰め寄る。
「わからんとよ……なんか言っとらす場って……なんでそげんこつ?……」
シラを切ろうとするが、その時にはもう林田の手は幾世の躰を夫婦然としてまさぐり始めていた。
「あかん……隣のおかあが……目覚ますよって、あかんて……ウチも躰冷えて具合悪いよって勘弁……」
「シー……声出すな……何時ものように温めたる……なっ、なっ、すぐ良くなるばって……」
剛毛で覆われた足で幾世の寝床をまさぐると、勢いそのままにその足で幾世の裾を割り、柔肌を露にすると繁みに向かい突進し、興奮し反り返ったものをパジャマの下だけ脱ぎ幾世の目の前に晒した。 顔を歪ませ彼女がソレを睨みつけると待ってましたとばかりに繁みに割入り秘肉を捕らえると娶わせに入った。
「ふふふ……幾世、酸い匂いが漂うぞ。 こうまで湿ってるのはどうしたわけだ。 えっ、あいつに惚れたのか」
「あああ……そんなこと……惚れとらんし濡れとらん……嘘じゃない……たっちゃん、ちゃんと見とらす?……」
裏切ってない、ちゃんと見たらわかるでしょと、逆に居直った幾世は林田の眼前にソコを広げて魅せた。 薄明りの中で濡れてピンク色に輝き、自然のままに開き始めている。 林田の心に火が付いた。 このような状態にしたのは浜田だからだ。
高橋らと関係を持ったことのある幾世は、浜田の申し出をどこか人のいない場所に出かけ躰を重ねると受け取っていて、長時間にわたって口説かれたものだから、つい空想してしまい林田がもう既に脇に来て聞き耳を立てているというのに不覚にもそんな状態の中で濡らしてしまったのだ。
「そうじゃ……、こうなったんはこれが良かったからじゃ……じゃな?幾世」
黒々とした繁みを掻き分けクレバスに沿って反り返りを幾度も上下させる林田。 クレバスを反り返りが這いずり回る、その様子を魅せ付け興奮を誘う、否応なく反応し始める幾世の躰、こうすることで硬くなり始めた胸を吸い波打ち始めた腹部を絞り上げた。 そうこうするうちに小さかった豆が肥大し、触られるとヒクつくようになっていった。 林田は同じ質問をしつこく繰り返す。
「…あんっ……いい…いい…決まっとらす……たっちゃん……あああ……どうしたん……・今夜は……」
幾世は耐えきれなくなりウソ交じりの誉め言葉を投げかけるが、林田の嬲りは一向に収まりを見せなかった。 小さな言葉尻をとらえ、詰問する。 幾世が正直に応えないとみるや、半分入れかけた反り返りをプイっと横に逸らし尻タブを打つ。 林田に言われるまでもなく、こうまでされると女が目を覚ます。 こうなってしまうと幾世のそこは溢れんばかりに濡れ、愛液が林田の反り返りにまとわりつき、一部は太股を伝って流れ落ちる。
「堪忍……あああっ……こんなこと、お姉ちゃんにやったの……」
非難めいた言葉とは裏腹に、幾世は大きく仰け反り林田の腕にしがみつき始めた。 今がチャンスと林田がその太い腰で太股を割ろうとするが、幾世は林田の体毛や体臭に顔を背け開き始めた太股を閉じようとする。 そうさせてはならじと林田は幾世に反り返りを握らせ、秘弁に指を這わせた。
中指二本を九の字に曲げ、入り口付近のコリコリした部分を掻き毟った。
「わん!」
幾世を熾りが襲った。 腹部を波打たせ、固く閉ざしていた太股が徐々に開き、具がうねうねとうねりながら挿し込まれた指に絡みつき締め上げる。
林田は首をがっくりと垂れながらも意識をソコに集中させている幾世に向かって漲る男根を晒してやった。 敢えて視線を合わさないようにしながら幾世の興奮が脳天を貫くのを待った。 いやいやをするように腰をくねらす幾世のアソコ目掛け、林田はこの夜初めて顔を埋めた。 舌先を使い、クレバスをなぞると躰を幾世の腹部の下にねじ込んで豆を舌先で転がし、それでも折れないとみるや強く啜った。
ついに幾世の方から折れた。 林田の反り返りを誘うように太股を開き切り上下左右に腰を振り、すっかり形を変えた彼女自身を魅せ始めた。 硬いものを咥え込み、それをへし折るような恰好までやって魅せ、せがみ始めた。
幾世は誰に言われるともなくいつものように林田に背を向け四つん這いになった。 恥ずかしそうに顔を覆い隠しながら尻を高々と掲げた。 林田の意に応え受話器を耳に浜田の声を聴き、そのやり取りが如何なるものか報告する。 許しを請うから娶わせに使われた反り返りをさっきのようにと要求し始めた。
林田は己の前に屈服の姿勢をとった幾世に背後から挑んだ。 豊かな尻を掴みながら腰を使い十分に娶わせ繰り返しつつどういった内容の会話が交わされたか白状させた。 正直に応えると彼女が望む通りに潤ませてやり、隠すと尻をぴしゃりと叩くなどし調教を繰り返しい、己の限界が近づいたところで床に横臥する。 すると幾世はノロノロと起き上がり林田を跨いだ。
待ちきれなくなった林田のそれを自身の手でつまみ上げ、繁みの中に導いた。 義理の姉でさえ夢中にさせた雄々しいものは幾世の中で暴れまわった。
浜田への情熱を使い切ったとみるや、今度は組み伏せ屈曲位で耐えに耐えた想いを残さず中に注ぐのがいつものやり方だった。 その夜の幾世は林田がこれほど情熱を注いでくれるなら、義理の姉とのことは忘れてやっても良いと思うようになっていったのだ。
幾世がしつこく浜田と話し込んだのも、林田が諦めることなく幾世の布団に潜り込み関係を迫ったのも、それなりの事情があった。
幾世の家は高台にあるが、下を走ってる道路わきがそこだけ少し膨らんでいて、そこが言ってみれば幾世宅に訪問する人の無断駐車スペースになっていた。 その場所は幹線道路から見通せないものだから林田はそこに車を止め泊まり込みに、いや、幾世を抱くために上がってくる。
もし浜田が幾世を訪ねて行こうとしたならこの場所に車を止めるほかない。 だから林田と浜田の車が鉢合わせにならないよう幾世はいつも浜田には気を使ってくれていた。
その駐車スペースに、林田が泊りに来た夜は必ず義理の姉夫婦の車が、周囲にそれと悟られないよう後方に着く。 妻の、林田との溥儀・密通を疑った夫が、妻の説明にあるように果たして義理の妹と睦会うべく部屋に入り込んでいるのか、それを家の外で気配を伺いコトが始まるのを見張るからだ。
安普請の悲しさか、ふたりの交接、或いは幾世の淫声はぐっすり寝入った母に聞こえなくとも窓ガラス一枚隔てた外に向かっては、林田の責めに屈し欲情が始まった幾世の痴態まで想像できるほどよく聞こえてくるのだ。 柔道で鍛えた林田が幾世に向かって腰を打ち付ける、リズミカルな振動までもがそのまま外で見張る義理の姉夫婦の耳に伝わる。
ふたりが果てたことを確認すると義理の姉夫婦はこっそりとその場から抜け出し、鰐浦めざし深夜の道を帰っていく。 外の気配が消えたところで林田は幾世の躰から離れ、鰐浦にある隊の車庫に急ぎ帰っていく。 こうなって初めて、幾世は疲れ切った躰を起こし、一通りシーツの汚れを確認し、冷え切った離れにある五右衛門風呂に汚れたところを洗い流しに行く。
泊というからには同棲と違わないと思うのだが、幾世にとっても林田にとっても、幾世の母にとっても未だ足入れでしかなかったようなのだ。 冷え切った湯は、だから幾世にとっては誠に好都合だった。 冷えた湯で冷静な思考を取り戻し、浜田との末を夢見ながら眠れるからだ。
林田は規則では禁止されている当直勤務を抜け出し、幾世の元に馳せ参じ、彼女の胎内に濁流を注いだ。 翌朝、あの青色のバスを運転せねばならず、見つからないうちに急いで引き上げた。 島に急病人でも出れば、すなわち即、不在がバレる。 車庫に戻ると、林田は何事もなかったかのようにベッドにもぐりこみ、やがて鼾をかき始めた。
義理の姉が夫に従って素直に帰って来たのには理由がある。 夜勤を下番できるのは幾世の義理の兄が海栗島に渡り、その船が引き返し、次の便がまた島に渡る。 その時になって勤務から解放される。 つまり、ほんのわずかの時間、林田は幾世の義理の姉に会いに行き覗き見の興奮を抑えてあげることが出来るし、彼女もそれを待ちわびてくれている。 林田は林田で、夫を裏切る彼女の性に幾世の性を重ね合わせ興奮材料にしていた。 拒否の言葉を口にしながらも、幾世同様、いや、それ以上に燃えてくれるのだ。 そうすることで林田も一種冷静さを取り戻す。 誰もが呆れ返るほど彼は絶倫、夜勤明けなんのそのなのだ。
義理の妹の幾世に林田を寝取られるのは確かに辛い、しかし願ったからと言って彼と結婚できそうにない、どんなに願っても再婚できない産めない躰なら、いっそこの際楽しもうと夜勤明けの彼に、幾世との婚儀の話しを持ち出すなどし、ちょっかいを出し続けていたからだ。
世の中の誰もが思うように、この島にあっても恋に狂う女には男女関係なく興味を惹かれる。 ましてやそれが姉と妹が独りの絶倫漢を奪い合うとなると尚更だ。
幾世や女教師をはじめ、周囲の誰もが林田のこういった規則やぶりを知っていて黙認するのは、幾世への足入れを見て見ぬふりするのは僻地ゆえ娯楽に乏しかったに相違ない。
海栗島に渡って来た幾世を、陸橋の上で待ってた浜田が見つけ目顔でうなづき、彼女もまた何事もなかったかのように、愁いを込めた目で浜田を見返しおはようと明るく声をかけつつ媚びた。
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